タグ: 政治

  • 日本の政治で『世襲政治家』は必要なのか?

    日本の政治で『世襲政治家』は必要なのか?

    <script async src=”https://pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js?client=ca-pub-8984570867040715″
    crossorigin=”anonymous”></script>

    政治に関する様々な問題点があるが、従来から指摘されているいわゆる「世襲」の問題がある。いわゆる二世、三世という言葉が目に付くようになっているが、政治家、特に国会議員の職が一種の家業となり、代々選挙区を引き継ぐという世襲議員の台頭は様々な方面から批判を受けている。政治の世界でよく用いられる言葉に三バンがある。これは、選挙で当選するためにはジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)の三つが必要であるということを示している。一般的には地盤は後援会組織、看板は知名度、鞄は選挙資金を意味している。特に世襲議員の場合、親から受け継いだ後援会組織、親の議員としての知名度、場合によっては親の資産といった具合に二バン、三バンを自ら汗水流さずとも継承することが出来るため、厳しい批判を受けることも多い。

     まず衆議院における世襲議員の増減を概観する。昨今の世襲議員に関する議論は、世襲議員が増えているということを前提にしているように思われる。しかし、実際には増えているのではなく、単に重要な役職に世襲議員が就くようになるなどしてその存在が顕著になっている。あるいは国民の政治規範が変化することによって世襲議員が問題視されるようになっただけか もしれない。この問題に対して Ishibashi and Reed (1992) は1950年代の終わりから1990年にかけて世襲議員が増加してきたとのデータを示している。また Taniguchi (2008) も1950年代の 終わりから2000年までのデータを使って世襲議員の増加を確認している。

    小選挙区制が導入されて以降(1996年~)の内閣総理大臣12名のうち、世襲でないのは3名(菅義偉氏、野田佳彦氏、菅直人氏)で、自民党に限れば1名(菅氏)、他は全員世襲ということになる。そして、現在(2022年10月24日時点)の第二次岸田内閣における閣僚20名のうち、12名が世襲である。歴代総理や閣僚に占める世襲議員の割合は、全議員の中に占める世襲の割合より、格段に多いということになる。選挙に強い、人脈が豊富、資金力があるといったことはもちろんだが、世襲議員は、若い時期(2~40代)に、地盤を引き継いで国会議員になる。親が永田町や地元で“力”を持っているうちに子どもに譲ることで、周りのいろいろな危険をけん制し、アドバイスをしながら、一人前に育つのを見守ることができる。

    There are various problems related to politics, but there is the so-called “hereditary” problem, which has been pointed out in the past. The so-called second and third generation have become more prominent, but the rise of hereditary members of parliament, in which the positions of politicians, especially members of the Diet, have become a kind of family business, and they take over constituencies from generation to generation, has been criticized from various quarters. A phrase that is often used in the world of politics is “three bangs.” This means that in order to win an election, you need three things: jiban (ground), kanban (signboard), and bag (bag). In general, the ground means the sponsorship organization, the sign means name recognition, and the bag means election funds. In particular, hereditary members of parliament are often severely criticized because they can inherit two or three bans without sweating themselves, such as the patronage association organization inherited from their parents, their parent’s name recognition as a member of parliament, and in some cases, their parents’ assets.

    First, we will review the increase and decrease in the number of hereditary members in the House of Representatives. The recent debate on hereditary members seems to be based on the fact that the number of hereditary members is increasing. However, in reality, it is not increasing, but simply becoming more prominent as hereditary members of parliament are taking up important positions. Or it may simply be that the political norms of the people have changed and hereditary members have become problematic. In response to this problem, Ishibashi and Reed (1992) show that the number of hereditary members of parliament increased from the end of the 1950s to the 1990s. Taniguchi (2008) also used data from the late 1950s to 2000 to confirm the increase in hereditary members.

    Of the 12 prime ministers since the single-member constituency system was introduced (1996~), three are not hereditary (Yoshihide Suga, Yoshihiko Noda, Naoto Kan), one (Suga) is limited to the LDP, and all the others are hereditary. And of the 20 ministers in the current (as of October 24, 2022) second Kishida cabinet, 12 are hereditary. This means that the proportion of hereditary members among successive prime ministers and cabinet ministers is much higher than the proportion of hereditary members among all members. It goes without saying that they are strong in elections, have a wealth of personal connections, and have financial power, but hereditary members of parliament take over the ground and become members of the Diet at a young age (2~40s). By handing over the power to the child while the parents have the “power” in Nagatacho or the local area, they can watch over the child grow up to be a full-fledged person while controlling the various dangers around him and giving advice.

    参考文献

    [1]世襲政治の研究(田村)

    [2]選挙研究 26巻2号 2010年世襲議員の実証分析 飯田 ・上田・松林

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaes/26/2/26_139/_pdf

  • 「強い首相」と「弱い首相」

    「強い首相」と「弱い首相」

    <script async src=”https://pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js?client=ca-pub-8984570867040715″
    crossorigin=”anonymous”></script>

     「強い首相」の例として、日本の憲政史上最も任期の長い安倍元首相について挙げる。2020年9月16日に辞任した安倍晋三前首相の通算在任日数は3188日、第2次政権発足以降の連続在任日数は2822日で、いずれも憲政史上最長を記録。自民党は2012年衆院選から2019年参院選と国政選挙で6連勝している。安倍内閣第2次政権以降、大胆な金融緩和と財政出動、成長戦略を打ち出した「アベノミクス」が自民支持層の結束を固めていると分析する識者もいる1。安倍政権が誕生した2012年12月26日時点で、1万円を少しだけ上回っていた日経平均株価は、その後の急上昇により、2013年5月23日には1万6千円付近をつけた。2015年6月24日の東京株式市場で、日経平均株価は一時2万0952円71銭まで上昇し、2000年4月12日終値で付けたITバブル期の高値2万0833円21銭を超えた2。2016年7月のアベノミクスについての調査で「期待する」と答えた人は46%だったが、自民支持層では76%と高かった。

     一方、「弱い首相」の象徴となってしまった菅義偉元首相は2021年10月9日、首相官邸での記者会見にて自民党総裁選に立候補しないことを表明した。任期は約1年であった。「新型コロナウイルス対策と多くの公務を抱えながら、総裁選を戦うことはとてつもないエネルギーが必要だ。12 日の緊急事態宣言解除は難しいと覚悟するにつれて、コロナ対策に専念すべきだと思い、出馬しない判断をした」と説明した。首相はワクチン接種の加速や東京オリンピック・パラリンピックの成功で政権浮揚を図り、総裁選を無風で乗り切る戦略を描いてきた。しかし、感染拡大に歯止めはかからず、与党は4月の衆参3選挙で不戦敗を含む全敗を喫し、8月の横浜市長選でも首相が支援した候補が大敗。自民党内で交代論が高まった。首相周辺は「最後に解散権を封じられて政局を主導できなくなり、首相の気力が一気に萎えてしまった」と振り返った3

     日本は「官僚内閣制」であり、大きな舵を切って違う方向に向けるときには違う方向に向けるという決定を一度行い、それに従って機敏に小さな決定をしていくことが難しいと言える。内閣総理大臣が方針を決めたら、それを関係各省庁で落とし込んで各大臣がやっていくという協力関係を作る。そのためには、きちんとした政党政治があってマニフェストにて有権者の信任を得るという手順を踏まえないといけない。これでは非常に時間がかかる。

     もう1つの例として以前の小泉元総理は改革を進めるに際して、改革という言葉がひとり歩きして、いつまで経っても改革の中味が明確にならないという問題点があった。細目について詰めることはなく、ただただインパクトで改革と言う。みんなで細目を詰めろというのだけれども、下の人たちは目的を共有していないので非常に混乱が生じている。だから、改革という言葉だけを出しているが、改革という政策が構造になっているというイメージが湧かない。「構造改革」という言葉は出てきたが、その中味が伝わっていない。それに大きな決定ができないから、改革しなければいけないという意識だけは高まっていって、言葉だけは非常に過激化していく。それが、ますます実態と遠くなるので、実現不可能な政策が唱えられるという病気をもたらしてしまった。

     日本における与党のあり方に関連する「官僚内閣制」だから、政治家は何もしていないのかというとそうではない。政治家と官僚はどちらが優位かというと、政治家だと答える人が多いのは自由民主党が中心となって、与党政治家がさまざまな活動をしているためである。議院内閣制の建前からいうと与党が内閣をコントロールするため、内閣と政権をとった政党は一体になっているはずである。ところが、日本では内閣に入った人はまた与党のことには口出しをせず、与党は内閣と別に政策を扱うことになり違う動きをするようになる。そうすると法律を決めるのでも何でも官庁間の官僚が調整する仕組み、官僚が政治家に説明する仕組みが二重になり、両方整わないと法律はできない仕組みになっている。目的がはっきりしないのだけれども、小さな決定はどんどんやるということを与党でもしている。そうなると、政治家が大きな方針を決めて官僚がそれに従うという関係ではなくて、政治家も積み上げするため、政治家も細かなことに関心があるという状態になる。そうすると、政治家たちも非常に細かな利益をたくさん持つようになってきて、全体的に改革を進めるというときに意見の一致が難しくなると言える4

    参考文献

    1.安倍前首相は通算在任日数3188日 : トップ4は“長州閥”が独占 nippon.com

    https://www.nippon.com/ja/features/h00296(2022.01.20閲覧)

    2.Stock Guide http://stockguide.biz/abenomikusu-315.html(2022.01.20閲覧)

    3.政治学原論2021(第15回授業)

    4.独立行政法人経済産業研究所 https://www.rieti.go.jp/jp/special/af/s08.html(2022.01.20閲覧)