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「強い首相」の例として、日本の憲政史上最も任期の長い安倍元首相について挙げる。2020年9月16日に辞任した安倍晋三前首相の通算在任日数は3188日、第2次政権発足以降の連続在任日数は2822日で、いずれも憲政史上最長を記録。自民党は2012年衆院選から2019年参院選と国政選挙で6連勝している。安倍内閣第2次政権以降、大胆な金融緩和と財政出動、成長戦略を打ち出した「アベノミクス」が自民支持層の結束を固めていると分析する識者もいる1。安倍政権が誕生した2012年12月26日時点で、1万円を少しだけ上回っていた日経平均株価は、その後の急上昇により、2013年5月23日には1万6千円付近をつけた。2015年6月24日の東京株式市場で、日経平均株価は一時2万0952円71銭まで上昇し、2000年4月12日終値で付けたITバブル期の高値2万0833円21銭を超えた2。2016年7月のアベノミクスについての調査で「期待する」と答えた人は46%だったが、自民支持層では76%と高かった。
一方、「弱い首相」の象徴となってしまった菅義偉元首相は2021年10月9日、首相官邸での記者会見にて自民党総裁選に立候補しないことを表明した。任期は約1年であった。「新型コロナウイルス対策と多くの公務を抱えながら、総裁選を戦うことはとてつもないエネルギーが必要だ。12 日の緊急事態宣言解除は難しいと覚悟するにつれて、コロナ対策に専念すべきだと思い、出馬しない判断をした」と説明した。首相はワクチン接種の加速や東京オリンピック・パラリンピックの成功で政権浮揚を図り、総裁選を無風で乗り切る戦略を描いてきた。しかし、感染拡大に歯止めはかからず、与党は4月の衆参3選挙で不戦敗を含む全敗を喫し、8月の横浜市長選でも首相が支援した候補が大敗。自民党内で交代論が高まった。首相周辺は「最後に解散権を封じられて政局を主導できなくなり、首相の気力が一気に萎えてしまった」と振り返った3。
日本は「官僚内閣制」であり、大きな舵を切って違う方向に向けるときには違う方向に向けるという決定を一度行い、それに従って機敏に小さな決定をしていくことが難しいと言える。内閣総理大臣が方針を決めたら、それを関係各省庁で落とし込んで各大臣がやっていくという協力関係を作る。そのためには、きちんとした政党政治があってマニフェストにて有権者の信任を得るという手順を踏まえないといけない。これでは非常に時間がかかる。
もう1つの例として以前の小泉元総理は改革を進めるに際して、改革という言葉がひとり歩きして、いつまで経っても改革の中味が明確にならないという問題点があった。細目について詰めることはなく、ただただインパクトで改革と言う。みんなで細目を詰めろというのだけれども、下の人たちは目的を共有していないので非常に混乱が生じている。だから、改革という言葉だけを出しているが、改革という政策が構造になっているというイメージが湧かない。「構造改革」という言葉は出てきたが、その中味が伝わっていない。それに大きな決定ができないから、改革しなければいけないという意識だけは高まっていって、言葉だけは非常に過激化していく。それが、ますます実態と遠くなるので、実現不可能な政策が唱えられるという病気をもたらしてしまった。
日本における与党のあり方に関連する「官僚内閣制」だから、政治家は何もしていないのかというとそうではない。政治家と官僚はどちらが優位かというと、政治家だと答える人が多いのは自由民主党が中心となって、与党政治家がさまざまな活動をしているためである。議院内閣制の建前からいうと与党が内閣をコントロールするため、内閣と政権をとった政党は一体になっているはずである。ところが、日本では内閣に入った人はまた与党のことには口出しをせず、与党は内閣と別に政策を扱うことになり違う動きをするようになる。そうすると法律を決めるのでも何でも官庁間の官僚が調整する仕組み、官僚が政治家に説明する仕組みが二重になり、両方整わないと法律はできない仕組みになっている。目的がはっきりしないのだけれども、小さな決定はどんどんやるということを与党でもしている。そうなると、政治家が大きな方針を決めて官僚がそれに従うという関係ではなくて、政治家も積み上げするため、政治家も細かなことに関心があるという状態になる。そうすると、政治家たちも非常に細かな利益をたくさん持つようになってきて、全体的に改革を進めるというときに意見の一致が難しくなると言える4。
参考文献
1.安倍前首相は通算在任日数3188日 : トップ4は“長州閥”が独占 nippon.com
https://www.nippon.com/ja/features/h00296(2022.01.20閲覧)
2.Stock Guide http://stockguide.biz/abenomikusu-315.html(2022.01.20閲覧)
3.政治学原論2021(第15回授業)
4.独立行政法人経済産業研究所 https://www.rieti.go.jp/jp/special/af/s08.html(2022.01.20閲覧)
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