事業セグメントを複数展開する会社 ソニー

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 日本の上場企業の中で事業を複数持つ企業としてソニーがある。2021年4月28日に発表されたソニーの2020年度の売上高は8兆9994億円であった。純利益は前年比でおよそ倍の1.1兆円。2020年度連結業績は、過去最高益という好業績で着地している。事業セグメント別に見ると、利益に大きく貢献し2019年度と比較して、圧倒的に大きく伸びたのは「ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)」と「金融」であった。純利益が1兆円を超えた。どのような事業群を持ち、どのような経営方針で1兆円もの利益を上げているのか。その企業戦略について理解を深める。

ソニーの事業セグメントについて

下記にソニーの事業セグメントを示した。ソニーのセグメントは大きく分けるとゲーム&ネットワークサービス(G&NS)、音楽、映画、エレクトロニクス・プロダクツ& ソリューション(EP&S)、イメージング& センシング・ソリューション(I&SS)、金融の6つから構成される。下記にソニーグループの概要図を示した。

ソニーグループ概要図

https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/Data/organization.html

   ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)事業

ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)はプレイステーションなどのPS5を代表するゲーム事業である。新型コロナウィルスにおける巣ごもり需要と季節要因によるものと説明している。コロナ禍がスタートした第1四半期と第4四半期で、ソフト販売数量のうち、ネットワークからのダウンロード販売比率は70%を超えている。ゲームソフトウェアやネットワークサービスの増収があり、この分野で過去最高益を達成した[1]。ネットワークサービス化したことは、従来のプラットフォームのユーザーも引き継ぐことができ、PS4からPS5の移行も受け入れられた結果であると言える。

   音楽事業

音楽事業ではコロナ禍で制作やライブ収益やストリーミングサービス、アニメ・モバイルゲームなどがある。アニメ・モバイルゲームは、具体的に言えば日本のIP(版権または知的財産)事業、大ヒットした『鬼滅の刃』を扱うアニプレックスなどのアニメ部門や、『Fate/Grand Order』、『UNCHARTED:Fortune Hunter』、PC版の『ホライゾン ゼロドーン』などのスマホゲームを多く抱える。これらはPlayStation Mobileより販売されている。

   映画事業

映画事業は劇場公開、配信などのホームエンタテインメントから成る。映画の売上高は前年比25%減の7588億円、営業利益は123億円増の805億円。新型コロナの影響による劇場公開作品の大幅減や、テレビ番組の制作、納入の遅れなどが影響した。だが、映画製作におけるマーケティング費用の大幅減や映画作品のホームエンターテインメントやテレビ配信向けの売上げが好調であり、増益になっている。

2021年度通期での見通しは売上高は50%増の1兆1400億円、営業利益は25億円増の830億円。劇場公開の再開に加えて、テレビ番組制作やメディアネットワークの回復などから、増収増益を見込むという。米国の大都市での劇場公開はすでに再開しており、ヒット作の続編の公開がプラスになると考えている。作品の販路を柔軟に選択し、作品ごとの長期的な価値を最大化したいと述べている。また、コンテンツ需要の高まりを背景に、映画やテレビ番組作品のライセンス取得は好調で、NetFlixとDisneyとも、2022年以降の配信に関して長期ライセンスを結んだと報告した。また、Sony Pictures Entertainment(SPE)は、2020年12月9日、アメリカのAT&Tより、アニメ配信サービス「クランチロール」(Crunchyroll)を運営するEllation Holdingsの完全子会社化に合意したと発表している。買収の主体となるのはソニー・ピクチャーズ傘下の米法人・Funimation Global Groupで、買収金額は11億7500万ドル(約1222億円)となる。クランチロールはアニメを中心とした映像配信事業者である。創業は2006年アメリカ・ヨーロッパを中心に200以上の国と地域で、広告ベースの無料配信と月額課金制の有料サービスの両方を展開している。ソニーのプレスリリースによると300万人以上であり、登録ユーザーは9000万人を超える[2]。現在は自社での配信だけでなく、ワーナーメディア傘下の月額課金制映像配信サービス「HBO Max」にもコンテンツを提供している。

   エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション事業

エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)はテレビなどの家電、デジタルカメラ、放送用・業務用機器、オーディオビデオ、スマートフォンなどのコンシューマ事業に当たる。こちらは創業当時からのソニーをイメージする事業群である。売上高は2019年度比4%減の2兆0665億円、営業利益は519億円増の1341億円となっている。

デジタルカメラの販売台数減や為替の影響により減収となったが、モバイルコミュニケーションを中心としたオペレーション費用の削減や、テレビなどでの製品ミックスの改善により、大幅な増益になった。一定の基準で同質的なものをまとめたものを製品ラインといい、そのラインへの新製品の追加や削除、あるいは拡大や縮小によって、最適な製品ミックスは行われる。この製品ミックスは価格設定においても考慮される。たとえばプライスライニングという価格設定では低価格から高価格まで種類が豊富な価格帯を形成する。2020年度は、部品供給などに制限がかかり、大きな影響を受けたが、変化に機敏に対応することで、高い収益性を確保できた。また、モバイルコミュニケーションも当初計画を上回る大幅な黒字を達成したと言う。

   イメージング& センシング・ソリューション(I&SS)

ハイエンドスマホ向けのイメージセンサーがメインの事業である。売上高は2019年度比5%減の1兆0125億円、営業利益は897億円減の1459億円。モバイル機器向けイメージセンサーの販売減が影響したという。これは2020年度には米中貿易摩擦の影響で、ファーウェイ向けのモバイルイメージセンサーの出荷が一時的に停止したこと影響しているという。通期見通しは、売上高が2019年度比12%増の1兆1300億円、営業利益は59億円減の1400億円。これまで進めてきたモバイルセンサー事業の顧客基盤の拡大により、数量ベースでの市場シェアを、2019年度並みに戻すことを予定している。2021年度の数量回復は見込めており、2022年度に向けた商品タイプ数の拡大や、高付加価値モデルへの再シフトを進めるため、研究費は250億円程度増加させる。また、設備投資には2850億円を予定しており、積層技術を生かした高付加価値モデルへのシフトを進め、それに必要な生産設備の能力拡張に投資を振り向けるとしている。

   金融事業

金融の売上高は前年比28%増の1兆6689億円、営業利益は350億円増の1646億円。通期見通しは、売上高は16%減の1兆4000億円、営業利益は54億円増の1700億円とした。一方、新たに開始する2023年度までの第4次中期経営計画経営の数値目標として、3年間累計の調整後EBITDAで4兆3000億円をあげた。(※EBITDAは、財務分析上の概念の一つ。税引前利益に、特別損益、支払利息、および減価償却費を加算した値である。)

 各事業の収益性の改善と強化を優先してきたが、売上げと利益のバランスが取れた成長を目指すという。EBITDAは、完全子会社化した金融事業を含むグループ全体で、投資とそのリターンの循環による中長期での事業拡大を確認でき、企業価値評価との親和性が高い指標と考えている。

ソニーとパナソニック企業比較

日本を代表する家電メーカーのソニーとパナソニックはよく比較される2019年度でソニーグループとパナソニックの時価総額を比較すると、2015年以前はほぼ同規模だったにもかかわらず、その後は徐々にソニーがパナソニックを引き離し、今や4倍以上の開き金額として10兆円もの開きがある。ソニーは過去最高益を出しているが、パナソニックは売り上げが30年前と変わっていない[3]。まず事業別売上高をみるとソニーはゲーム分野のほか音楽と映画などコンテンツ面が半分近く、利益では過半を占める。ソニーが事業の柱をそだて、結果として利益を出せる事業となった結果と言える。

総括

ソニーのセグメントは大きく分けるとゲーム&ネットワークサービス(G&NS)、音楽、映画、エレクトロニクス・プロダクツ& ソリューション(EP&S)、イメージング& センシング・ソリューション(I&SS)、金融の6つから構成される。ゲーム事業はPlayStation5は供給不足が直ちに解消される状態にないという。まだまだ市場が伸びる案件であるといえる。エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)では製品ミックスの文字が多く、利益が最大限出るようにソニーが持つ製品群を工夫している。注目はスマートフォン事業である。長年赤字に苦しめられ、2019年度も営業赤字だったが、営業利益が227億円と黒字になった。下記、ソニーの国内携帯電話市場シェアのグラフを見ると日本国内のシェアは決して高くない。1位はAPPLEであり、シャープ、SAMSUNGと続きソニーは4番手である。

そのシェアの中でなおかつ、狭い日本の市場だけで黒字化に成功したのは非常に興味深い出来事である。その理由について1つは販売数を絞り込んだこと。現状、ターゲット市場は日本としており、営業経費を抑制できた。2つ目は高付加価値で単価の高いモデルに集約したことで、利益率が向上した。3つ目にコスト削減と設計最適化の結果、大幅な収益改善につながったという[4]。そのモバイルでも海外ゲーム情報サイト『Eurogamer』は、モバイル部門責任者を募集する求人広告にノーティードッグスUnchartedやグランツーリスモなどを持つSIEがPlayStation Studiosの今後3年から5年をかけて「PlayStationの人気フランチャイズをモバイル分野で成功させることに注力する」との計画も明かされている[5]。ソニーの事業は一見それぞれが独自に動いているように見えるかもしれない。しかし、創業時からの家電から事業の柱を増やして、それぞれが相互に機能していることが過去最高の営業利益を達成した結果であると考えられる。コロナ禍にて多くの企業が減収減益の中堅調な伸びを見せているのは強固な柱を育てることがこのソニーのような企業をつくる戦略となると考えられる。

参考文献

[1]SONY決算短信・業績説明会資料2020年度

https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/presen/er/archive.html

[2]クランチロールとは~ https://www.businessinsider.jp/post-225974

[3]東洋経済 パナソニックとソニー、10年で大差ついた稼ぎ方

https://toyokeizai.net/articles/amp/438937?display=b&amp_event=read-body

[4]国内携帯電話市場動向について 株式会社MM総研

https://www.soumu.go.jp/main_content/000692932.pdf

[5] Sony working on 25 games for PlayStation 5, half of which are new IP

https://www.eurogamer.net/articles/2021-05-13-sony-working-on-25-games-for-playstation-5-half-of-which-are-new-ip

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