宗教はなぜ存在するのか?

宗教の起源

 宗教は自然災害など人には理解できない状況が起きたとき、それを説明するため生まれたものとも言える。豪雨、火山の噴火、干ばつによる農作物の不作など何故起こるのか理解できない古代の人間にはこれらが起こっている原因が分からない。これは、きっと神が人々の行いに怒っているのだろうと考える。また、ペストなど流行性の病気で次々に人が倒れる奇妙な現象や飢饉による例年にない作物の不作が起こると、神の怒りではないかと言い出す人が出てくる。理由が説明出来ないため、みんなきっとそうだと信じ込む。そのため、儀式を行い、神への捧げ物をして豊作を願ったり、病気治しを祈ったり願ったりする。これが宗教の元になっている。

 人は何か大いなる力に祈り、自分ではどうにもならない欲望を満たして欲しいと考える。他にも、なぜ地球があるのかとか、人間はどうやって生まれたのか、などの疑問も神が創ったということで、明確な理由がないためなんとなくみんな納得する。現代では科学が発展し、神が行ったことであった事象の多くが解明されてきているにも関わらず宗教は未だに存在する。

宗教信仰の入り口

 まず、宗教信仰の初めは生まれながらに決められる人も多い。両親が特定の宗教を信じていて、小さい頃から宗教の催しなどにも自然と参加していたような人達はその宗教を生活の一部として捉える。例えば、無宗教だという1人の日本人の人生を振り返ってみた場合、高校入試の合格祈願だと神道の考えを持つ神社で参拝を行い、キリスト教様式の教会で結婚式を挙げ、葬式は仏教で数珠を付け南無阿弥陀仏と念仏を唱える。むしろ、それが普段の生活であるため宗教的な活動と気づかず、その生まれた家や地域で宗教が精神に根付いているという場合がある。そのような生活をしていながら、中には人生を終えるまで宗教を信じていないという人もいるだろう。

宗教を信仰する人

 宗教を信仰する人はどのような人なのか。なぜ人々は宗教を信仰するのか?その一つの答えにすべての人が直面する人生最大の問題に死がある。死は、どんな人も避けることのできない事象である。ところが、不治の病にかかって余命を宣告されるなど、死に直面すると、普段死を忘れて生きている時と、人生観が変わってしまう。今までの悩みの種であったどうしたらお金が儲かるだろうかとか、人から褒められるか、ばかにされないか、愛情に包まれるかということ一切が光を失いもはやそのようなものは関係なくなる。

 お金や財産、地位、名誉、妻子、才能といったものは、死ぬと意味はない。線香花火のような儚い幸せだったことが知らされる。そんなものを必死でかき集めてきた自分の人生は一体何だったのだろうと疑問が起きて、目前に迫る死があり死んだらどうなるかが大問題となる。しかし、科学や医学で、死ぬことを止めるとこはできず、死の問題に対しては何の力にもならないと言える。これは、誰も死んだ後どうなるかは死んだ人しかわからず証明ができないため不安を覚え、何かにすがる。これが宗教である。

宗教信仰の目的

 また、人は皆自らの意志で生まれてきたわけではない。夢を持って生きている人も多くいるが、ただ漠然と生きている人も中にはいる。そうすると何故私は生きているのか。生きている意味は何か。なんのために生きなければいけないのかと疑問が湧いてくる。これも明確な答えがないため、人は不安を覚える。例えば、キリスト教ではイエスに弟子として従い、彼から彼の言葉(聖書)と読み、祈りによって彼と交わり、彼の命令に従う時に本当の人生の意味を見出すとある1)。キリスト教はイエスと共に生き、その中で生きる目的を見つけることにある。仏教においては、仏教の教えを聞いて、人間に生まれた目的を解決し、未来永劫の幸せを手に入れることにある。今生に人間に生まれることは大変難しいことであり、戒律を守らなければ来生に生まれたときに幸せはやってこないとされる。

 これらの「幸せ」「人生の目的」「死」の3つの問題は、科学や医学では解決が難しく、宗教に頼ることになる。いずれの宗教でもこの3つの問題についての解釈があり、見えない不安を取り除き人生を幸せに生きたい。なぜ生きているのかと考える人がいる限り、宗教が必要とされる。また、その信仰レベルには①地域社会の無意識的な習慣となっているレベルのものと②神仏について自覚的に問う、教理を勉強したり修行したり教団に入会したり、とにかく意識的に振舞うようなレベルのもの2)がある。事実、人の多くはなんらかの宗教を信仰している。

参考文献

1)‘GotQuestion人生の意味は何ですか?’. https://www.gotquestions.org/Japanese/Japanese-meaning-life.html

2021-05-08

2) 岡田、小澤ら はじめて学ぶ宗教~自分で考えない人のために~ 2011.p8

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