高分子(ポリマー)の色々

ポリエチレン・ポリプロピレンについて

ポリエチレンには低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度(HDPE)、そして直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)があり、耐熱温度、比重、耐薬品性、分子構造などがそれぞれ異なる。その重合方法はLDPEでは高圧下でラジカル重合にて得られる。LLDPEは中圧下でラジカル重合にて分岐を持たせた構造の素材が得られる。HDPEはチーグラー・ナッタ触媒を用いたチーグラー法にて得られる。

側鎖分岐が長いLLDPEは強度が高く、また、分子量が大きいものほど引張衝撃強さは大きくなる。LLDPEはLDPEに比べて同一MFRでの引張衝撃強さが大きい。重合法の違いにより軟化点や比重などが異なる理由としては、LDPEでは分岐が多く、分岐部分は密度が低いため比重が小さくなる。一方、HDPEは分岐をほとんど持たない長鎖で構成され、密度が高い。3つの内、HDPEは密度が高く、熱を加えられても分子運動が抑えられるため、比較的軟化点が高い。LDPEとLLDPEは比重が同じであるが、軟化点と耐薬品性に違いがある。これは分子同士で架橋を作り、立体の網目構造の超高分子を成すためである。下の表『ポリエチレンの種類と物性』にまとめた。

 ポリプロピレンはポリエチレンより耐熱温度が高く100~140℃で、プラスチックの中では最も比重が小さく、0.9~0.91となっている。機械的強度にも優れた素材である。また表面に艶があり、光沢がある素材である。生産量も多い高分子材料で、ポリエチレンに次ぐ量が生産されていると言われている。

ガラス転移点について

ガラス転移点Tgと融点Tmの違いについて述べる。まず融点は固体と液体間で相転移が起こる。対してガラス転移点は高分子自体が過冷却状態の液体であり、相は液体で変わらない。融点では固体から液体に変わるため、そこで大きく弾性率が変化する。一方、ガラス転移点ではその分子鎖自身の重心が変わらないため、弾性率は徐々に変化が起こる。また、高分子では非晶性と結晶性で違いがあり、非晶性ポリマーは明確な融点を持たない。温度を上げTgを超え、さらに上げていくと徐々に溶融粘度の低下が進む。結晶性のポリマーではガラス転移点Tgと融点Tmの2つが存在する。

ガラス転移点の測定方法には示差走査熱量計DSC、動的粘弾性測定DMA (Dynamic Mechanical Analysis) と熱機械分析TMA(Thermal Mechanical Analysis)などがある。示差走査熱量計DSCの中でも熱流束DSCでは、温度制御されたヒートシンクを持ち、試料、基準物質と、ヒートシンクの間に熱抵抗体を設け、この熱抵抗体の定まった場所で温度差を検知する。 熱流のフィードバックは熱抵抗体を介してヒートシンクとの熱交換で行われる。基準試料としてアルミナなどが用いられ、温度差を温度-電圧変換素子(熱電対等)で検知することにより、DSC信号として出力する。熱流束DSCではヒートシンクにより試料部周辺全体が温度制御されるため、ベースラインの安定性が良いとされる1)

示差走査熱量計DSCの模式図

動的粘弾性測定DMAは試料に時間によって変化(振動)する歪みまたは応力を与え、発生する値を測定することによって、試料の力学的な性質を測定する方法である。温度分散測定によるガラス転移点や弾性率の温度依存性の分析のみならず、温度分散・周波数分散同時測定を行うことにより、ガラス転移を含む各種の緩和現象を観測でき、高分子の分子構造や分子運動に関する情報も得ることができる。試料は、測定ヘッドに取り付けられ、ヒーターにより加熱されるとともに、荷重発生部からプローブを介して試料に応力が与えられる。試料に与えた応力と検出した歪から温度または時間の関数として出力される。ヒーター内に試料用、基準物質用それぞれの天秤ビームを対称に配置し、サンプル、リファレンス独立に感度調整された駆動コイルにて重量を計測し、その差がTG信号として出力される2)

動的粘弾性測定DMAの模式図

 熱機械分析TMAは資料の温度を一定のプログラムによって変化させながら、圧縮、引っ張り、曲げなどの一定の荷重を加えてその物質の変形を温度または時間の関数として測定する方法。温度変化に対応して試料の熱膨張や軟化等、試料の変形が起こると、変形に伴う変位量がプローブの位置変化量として、変位検出部で計測される。熱膨張、熱収縮、軟化点などが主な測定対象となる3)

3.Gauss鎖の関係

3-1一本鎖が末端間で引き伸ばされたときに生じる力―変位距離の関係 

3-2力―絶対温度の関係

 f = (kBT/Na2)・A

 S = kB・ln(W)S
  = kB・ln{W(r・N)}P(r)
  =―3/2・exp(-)S
  = kB ln {A×()―3/2×exp(-)}   
  = 定数(A’)+kB ln{exp(-)}    = 定数- =  – SdV = 0=-T S 

上記式より力は一本鎖が末端間で引き伸ばされたときに生じる力は変位距離rに比例し、力は絶対温度Tに比例する。

4.熱硬化性ポリマーについて

熱硬化性ポリマーの例としてフェノール樹脂(ベークライト)を挙げる。フェノール樹脂はフェノールとホルムアルデヒドをモノマーとして縮合重合される。フェノール樹脂は正式名称ポリオキシベンジルメチレングリコールアンハイドライドである。中間生成物の違いから酸触媒下ではノボラック式、塩基触媒下でのレゾール式が存在する。硬化剤としてヘキサミンを加え、さらに充填剤や強化材を添加して加熱すると架橋が起こり、優れた物性を持つ硬化物となる。このノボラックを用いた樹脂製造法を二段法あるいは乾式法と呼ぶ。一方、塩基性触媒下では縮合反応より付加反応の方が速いので、ホルムアルデヒド過剰の条件で反応させるとフェノール核にメチロール基の多く付いたポリメチロールフェノール混合物ができる4)。これをレゾールと呼ぶ。下記にフェノール樹脂の化学構造式を示した。

フェノール樹脂の化学反応5

5.金属などの剛体粘性の内部摩擦測定方法

内部摩擦とは固体に外から力を加えたときに,弾性変形が伝わる過程で各部分間の運動摩擦によって,外から加えた力学的エネルギーの一部が熱エネルギーに変化する現象である。固体による音波の吸収と関係がある6)。したがって超音波により結晶が歪むと,結晶内に圧電分極を発生し,これを打ち消すようにキャリアが移動する。キャリアの移動によりジュール熱が発生するのでこれが内部摩擦となって現われる。外力を加え発生するジュール熱により内部摩擦を測定できる。下記にMaxwell (マクスウェル)模型、Voigt(フォークト)模型、粘弾性体で拘束した質量片の強制振動の模式図とそれを表す式を示した。

Maxwell模型は、材料が弾む性質と粘る性質の両方を合わせて示す物性である粘弾性を説明するためにバネとダッシュポット(ピストン)を組み合わせたモデルである。物質が受ける応力と歪の関係を示している。Maxwell模型での物質が受ける応力と歪の関係は下記のような式となる。弾性率 (バネ定数) を E、バネのひずみを γ1、ダッシュポットの粘度を η、歪をγ2とする。

γは歪でσは応力である。時間で微分すると

Maxwell模型での物質が受ける応力と歪の関係は以上のような関係となる7)

Voigt模型は粘弾性を説明するためにバネとダッシュポット(ピストン)を並列に繋いだモデルである。フォークト模型の場合には, バネとピストンの歪が等しい。このひずみをγとする。バネの応力をσ1, ピストンの応力をσ2とする。バネの応力がひずみに比例すると、

7)

粘弾性体で拘束した質量片の強制振動の模式図を示した。これは、質量Mの鉄片を粘弾性体で挟み込み、加速度と歪速度、歪量との和が最大荷重と振動数と位相を示すものである。

6.複合材料の5つの弾性率 含める語:テンソル

複合材料の弾性率はヤング率E 、ポアソン比ν、体積弾性率K 、剛性率G 、ラメの第一定数λの5つである。弾性率Dは4階のテンソル量で表すことができる。下記一軸直交性体のテンソルから独立な弾性率は5個となる。

σ = D ϵ , {\displaystyle {\boldsymbol {\sigma }}={\boldsymbol {D}}{\boldsymbol {\epsilon }},} σ i j = D i j k l ϵ k l ( i , j , k , l = 1 ∼ 3 ) {\displaystyle \sigma _{ij}=D_{ijkl}\epsilon _{kl}\quad (i,j,k,l=1\sim 3)}弾性率テンソルは81(= 34)個の成分を持つが、応力テンソルσとひずみテンソルεは対称性、すなわちσ i j = σ j i , ϵ i j = ϵ j i {\displaystyle \sigma _{ij}=\sigma _{ji},\quad \epsilon _{ij}=\epsilon _{ji}} よりそれぞれ独立な6成分を持つので、弾性率テンソルDもD i j k l = D j i l k {\displaystyle D_{ijkl}=D_{jilk}} の性質を持ち、独立な成分は36(= 62)個となる。

 さらに単位体積あたりの弾性ひずみエネルギーd W ≡ σ i j d ϵ i j {\displaystyle dW\equiv \sigma _{ij}\,d\epsilon _{ij}} を用いて弾性率D i j k l = ∂ 2 W ∂ ϵ i j ∂ ϵ k l {\displaystyle D_{ijkl}={\frac {\partial ^{2}W}{\partial \epsilon _{ij}\partial \epsilon _{kl}}}} が表せるため、最終的に弾性率テンソルDの独立な成分は21(= 6×(6+1)/2)個となる。その中でも独立な弾性率は5個となる。

参考文献

  • 株式会社日立ハイテクサイエンスweb ページ https://www.hitachi-hightech.com/hhs/products/tech/ana/thermal/descriptions/dsc.html
  • 株式会社日立ハイテクサイエンスweb ページ https://www.hitachi-hightech.com/hhs/products/tech/ana/thermal/descriptions/dma.html
  • 株式会社日立ハイテクサイエンスweb ページ https://www.hitachi-hightech.com/hhs/products/tech/ana/thermal/descriptions/tma.html
  • 波華合成株式会社 用語辞典http://www.naniwagousei.com/dictionary/フェノール樹脂/
  • 合成樹脂 https://pigboat-don-guri131.ssl-lolipop.jp/732%20Synthetic%20resin.html
  • ブリタニカ国際大百科事典 https://kotobank.jp/word/内部摩擦-107428
  • マクスウェル(Maxwell)模型とフォークト(Voigt)模型 http://cisweb.yz.yamagata-u.ac.jp/~escargot/index.php?plugin=attach&refer=%B9%E2%CA%AC%BB%D2%B9%A9%B3%D8&openfile=VEModel.pdf

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