東日本大震災の今

はじめに

2011年3月、日本に岩手県沖から茨城県沖までの本州太平洋側広域に発生したマグニチュードMw9.0、最大震度7の巨大地震や津波による重大な災害をもたらした東日本大震災が起こった。死者と行方不明者の合計は2万5,949人。また、津波により冠水した面積は宮城県、福島県など6県で561km2(山手線の内側面積の約9倍)におよぶ。多くの尊い命とともに家屋や産業に大きな傷跡を残した東日本大震災の被害規模は、16兆~25兆円にのぼると政府は試算している[1]

地震と津波によって福島第一原子力発電所が外部電源、自家発電ともに消失、停電し、核燃料に冷却水を供給できなくなった。その結果、原子力発電に使用されていた核燃料が炉心溶融(メルトダウン)を起こした。それによって、大量に発生した水素が爆発して建屋は大破し、放射性物質が空気中に放出された。特に福島第一原子力発電所が位置する福島県双葉町、大熊町、浪江町など周辺町民は8年たった今でも避難を強いられている。2019年(平成31年)3月11日現在、避難者は全国47都道府県1001の市区町村にわたり、いまだ約5万1千人存在する[2]。その震災における避難者を助けるために震災の発生直後「大学東日本大震災復興支援法務プロジェクト」が立ち上がり、被災地に対する法的支援がなされているという。そして、震災の1年後である2012年3月から現在に至るまで東京電力福島第一原子力発電所の至近距離にある福島県浪江町に対して法的支援を継続している。その法的支援とは予防原則の研究を通じ、原発事故によって生じた放射能汚染災害への行政の対応のあり方、原発再稼動に関しての問題などの検討支援とされている。被災者の生活再建を支える基本的な法律として、被災者生活再建支援法がある。しかし、支給金額が生活の再建には十分とはいえず、生業を継続できなくなった者が存在する。また、非居住の住宅所有者などは支援の対象とはならず、家族が分散して避難生活を送っている場合などでは支援金が行き渡らないことがあるという問題点もある[3]

他に原発事故によって生じた種々の損害賠償問題の支援。法律相談支援NPOなどとの連携を通じた被災地が抱えている法律問題の調査支援などを行っているという。以下、東日本大震災後に行われた法による支援の例を挙げ、復興がより進むための方法を考察する。

地域の復興とは何を指すか

震災後の地域の復興としては地元の人間特に労働人口に含まれる若者の定着、地方への新たな人の流れの創出、地域産業の振興の3点が必須であると考える。まず、地元の人がそこへ帰還・定着し、生活をし、労働により税収がなければ、市や町のサービスもままならない。そして、観光客や働きに来る新たな人の流れがなければ地域が潤わない。原発事故によって1度止まってしまった人の動きに手を差し伸べ被災地支援を行い、地域復興を促進する必要があると言える。地域の特色ともいえる産業がなければ経済が回らず人も定着しない。人が定着し、経済を回すことがその地域発展に重要である。そのため、震災後の地域の復興とは人が戻り、これまでの生活を取り戻すことにあると考える。

原発被災地復興のための政策はどうあるべきか

原発事故によって生じた放射能汚染災害への被災地支援を行わなければ、地域復興はやってこない。支援のために、例えば、被災者の生活再建を支える基本的な法律として被災者生活再建支援法がある。しかし、同法に基づく生活再建支援制度は住宅被害を基礎に世帯ごとに最大300万円の金銭給付を行う制度となっている。支給金額が生活の再建には十分とはいえず、生業を継続できなくなった者が存在する。また、非居住の住宅所有者などは支援の対象とはならず、家族が分散して避難生活を送っている場合などでは支援金が行き渡らないことがあるという問題点もある[3]。そのため、この法律だけでは被災地復興支援としては十分とは言えない。

福島第一原発事故によって、いまだ約5万1千人に及ぶ住民が避難を余儀なくされている。また、放射性物質に対する不安や風評被害も解消されず、精神的にも経済的にも多大な苦しみを負い続けている。長期にわたる避難生活や生業に回復できる見通しを得られないことから新たな問題も生まれ、将来の展望を抱けていない住民も少なくなく、自ら命を落とす者の数はなお減少を見ていないという。

東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針が避難指示区域からの避難を慰謝料算定の基礎としているところ、当該中間指針の画一的・形式的運用によって住民間に分断や軋轢が生じた。さらに、除染が完了したとはいえない中避難指示の解除がなされ、避難指示の解除時期にかかわらず賠償期限を2018年3月とする方針が打ち出されたところである。こうした中で、既に帰還した者、今後、帰還しようとしている者、そして帰還を選択しない者も、様々な生活の困難や不安を抱えている。

そのような状況の中で日本におけるエネルギー政策・原発に対する法規制は大きく見直される。平成29年4月14日に公布された原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の一部を改正する法律第3条では、主に以下の事項に関する規定を整備し、公布の日より3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行することとされている。

また、東京電力福島第一原子力発電所における規制は以下のように他の原子力発電所とは別枠にて見直しされる方向であるとの案が示されている。福島第一原子力発電所では施設全体のリスク低減に必要な措置が求められる。発電所全体に対し実施計画を中心とした一体的な規制を実施する。施設の内包するリスク及び使用期間に応じて重点的に規制。リスクを早期に除去するための設備には、画一的な規制要件は適用せず、合理的・効率的な規制を実施する。通常の原子力施設と同等の保安水準を網羅的には求めないとの方針が示されている[4]

まとめ

東日本大震災は巨大地震や津波により日本にこれまでにない重大な災害をもたらした。その被害規模は大きく、9年が経とうとしているが、いまだ被害者は仮設住宅に住んでいる人が多く存在する。その被災者を救うための法律である被災者生活再建支援法があるが、住宅被害を基礎に世帯ごとの金銭給付のみであり、これだけでは不十分であると考えられる。追加の法的支援が行われ、福島原発周辺の除染が完了し、元々住んでいた人が戻って定着するまでを保証する制度を期待する。

また、福島の原発事故のようなことが二度と起こらないようにするため、日本におけるエネルギー政策・原発に対する法規制は大きく見直される予定である。特に福島原発においては他の原子力発電所とは別枠にて見直しされる方向であるとの案が示されている。リスクを早期に除去するための設備には、枠ではまった規制ではなく、合理的・効率的な規制が実施される。通常の原子力施設と同等の保安水準を求めないとの方針が示されている。今後、この法改正により二度と東日本大震災と同様の事案が起こらないことを願う。

参考文献

[1] 農林水産省 東日本大震災 地震と津波の影響 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1105/spe1_01.html

[2] 復興庁 全国の避難者数http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-1/20190329_hinansha.pdf

[3]日本弁護士連合会https://www.nichibenren.or.jp/document/assembly_resolution/year/2016/2016_2.html

[4]新たな検査制度(原子力規制検査)の実施に向けた法令類の整備(第一段階)及び意見募集の実施等について

In March 2011, the Great East Japan Earthquake occurred in Japan, causing serious disasters due to a massive earthquake with a magnitude of Mw 9.0 and a maximum seismic intensity of 7, and a tsunami that occurred across a wide area on the Pacific coast of Honshu from the coast of Iwate Prefecture to the coast of Ibaraki Prefecture. The total number of dead and missing is 25,949. The area flooded by the tsunami was 561 km2 (approximately nine times the area inside the Yamanote Line) in six prefectures, including Miyagi and Fukushima. The government estimates that the damage caused by the Great East Japan Earthquake, which left a huge scar on homes and industries as well as many precious lives, is 16 trillion to 25 trillion yen [1].

Due to the earthquake and tsunami, the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant lost both external power and in-house power generation, resulting in a power outage and the inability to supply cooling water to the nuclear fuel.As a result, the nuclear fuel used for nuclear power generation suffered a core meltdown. I woke you up. As a result, a large amount of hydrogen was generated, which exploded, causing major damage to the building and releasing radioactive materials into the air. In particular, residents of surrounding towns such as Futaba, Okuma, and Namie towns in Fukushima Prefecture, where the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant is located, are still being forced to evacuate eight years later. As of March 11, 2019, there are still approximately 51,000 evacuees in 1,001 municipalities in 47 prefectures nationwide [2].

Immediately after the earthquake, the “University East Japan Earthquake Reconstruction Support Legal Project” was launched to help evacuees, and legal support is being provided to the affected areas. Since March 2012, one year after the earthquake, we have continued to provide legal support to Namie Town, Fukushima Prefecture, which is located in close proximity to the TEPCO Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Through research on the precautionary principle, this legal support is intended to support consideration of issues such as how the government should respond to radioactive contamination disasters caused by nuclear power plant accidents, and issues related to restarting nuclear power plants. The Disaster Victims’ Livelihood Reconstruction Support Act is a fundamental law that supports the rebuilding of disaster victims’ lives.However, the livelihood reconstruction support system based on this law provides monetary benefits of up to 3 million yen to each household based on the damage to their home. There are some people who are unable to continue their livelihoods because the amount they receive is not enough to rebuild their lives. In addition, non-resident homeowners are not eligible for support, and there is the problem that support funds may not be distributed in cases where families are scattered and living as evacuation centers [3]. Therefore, this law alone cannot be said to be sufficient to support the reconstruction of disaster-stricken areas.

What does regional revitalization mean?

We believe that three points are essential for regional reconstruction after the earthquake: retaining local people, especially young people in the workforce, creating a new flow of people to rural areas, and promoting local industry. First, unless local people return and settle there, live there, and earn tax revenue from their labor, city and town services will not be available. And without the flow of tourists and new people coming to work, the region will not be enriched. It can be said that there is a need to reach out to people whose movements have been halted due to the nuclear power plant accident, provide support to the disaster-stricken areas, and promote regional reconstruction. Without industries that can be considered regional characteristics, the economy would not be able to function and people would not be able to settle there.

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