大きな物から不要なものを小さくしたり、削ったりするのではなく、このナノテクノロジーを実現するための学問の1つに分子や原子のように一番小さなものから集めていくその化学を「超分子化学」と呼ぶ。これはナノの世界から大きな世界へ組み上げて材料とする考え方である。物質を3次元から2次元と変化させ、横方向は大きな動きで縦方向はナノの動きとなり、大きな物質科学とナノテクノロジーを共存させる考えである。
ナノテクノロジーはとても小さい構造をコントロールして役に立つものを作る技術である。ナノは10億分の1メートルという科学知識を自在に応用して、今の常識を全く超える様々な新技術が爆発的に生み出される「技術の世紀」が21世紀であると言える。より人間らしい生活を送るため、例えば、今日携帯電話のように優秀で小さな機械がありどこでも持ち運べる。昨今言われている持続可能なサイクルであるSDGsの考えも提唱され、少ない資源で必要な機械が作ることが出来、また廃棄物となった場合に廃棄物の量も少なくできるといったメリットがある。
1987年のノーベル化学賞では「超分子化学」提唱者であるジャン=マリー・レーンらが受賞している。超分子はある安定なエネルギー準位の状態で分子の受け渡しを行える伝統的なホストーゲスト化学を開拓した。2016年にノーベル化学賞受賞の「分子マシンの設計と合成」である。この分子マシンは薬物送達、がん細胞を発見する超小型ロボット、外部信号に応じて適応したり変化したりするスマート材料まで多岐に渡る可能性がある。
例として、講義にも取り上げられた分子、ステロイドシクロファン(Steroid Cyclophane)はその構造の圧縮と伸張により、その形態を変化させる特徴を持つ。凝縮により3次元形状となり、キャビティ―型のコンフォメーションをとる。そして、低圧で伸張させることにより2次元でその形状は平面となる。この分子はマクロスコピックな動作で分子マシンを駆動、ゲスト補足させることでスイッチングする。
その開閉システムを使用することで、例えば、その中に薬物を抱えて動物の体内に入ってからある時間や必要な位置で開き、ピンポイントで必要な投薬を行える可能性があると言える。分子レセプターの構造を自在にチューニングして、一番望ましい状態を作り出すことが可能である革新的手法である。
今後、このナノテクノロジーを実現するために分子や原子のように基礎から構築されるその超分子化学が発展し、21世紀を支える技術となることが期待される。この技術によって少ない材料やエネルギーで人類が必要なデバイスが作られ、また廃棄物となった場合にもその量も少なくエコな世の中になることを望む。
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