たてがみを捨てたライオンたち 白岩玄著

書籍紹介

この書籍では章ごとにシーンを設定し、それぞれの日常について何気ない会話が表現されている物語である。

例えば、はじめの章では妊娠した女性、可奈子が悪阻で苦しんでおり、直樹が介抱している。家で洗濯をしたり、吐いている加奈子を助ける。ほぼ一日中吐き気があるため、会社も何度か有給を取って休んでいるし、何か食べるとすぐに気持ち悪くなって吐いてしまうような状況である。可南子が気持ち悪くならずに食べられる唯一のものというフルーツゼリーをコンビニ買ってきたりという妊娠した奥さんと夫と言う夫婦の日常を覗き見るようなストーリーとなっている。そんな中で不安定になった自分を支えるために浮かんでくるのは仕事で、明日の会議で発表する企画書をもう一度練り直してみようかと考えている。妻の心配をしている中で良い案も浮かんでこないようだ。

もう一つの章は時期はクリスマス。市役所に勤めている25歳の男性は市役所で起こったシステムトラブルのため、その日のアイドルのライブに間に合わない不幸にあっている。また、彼は今日誕生日である。仕事が終わって会場までの移動時間を計算してみても今からダッシュで電車に乗っても、着く頃には終わってしまっているだろうという状況。以前のライブでライトのつきが悪くなっていたから新しいのに買い替えて準備もしていた。最近はライブのチケットも取りにくくなっているから、ぜひとも今日は行きたかった様子。誕生日にライブに行けなかった自分をなぐさめるために、担々麺の店に寄った。これがまた担々麺との相性が抜群で、交互に食べると、それぞれのうまさがからみ合って、どんどん積み重なっていくようなところがあり満足しているが、家に帰るとアイドルから来たメールだけが彼の誕生日を祝ってくれているようであった。

また、タイトルにある『たてがみを捨てたライオンたち』は『慎一』の章からとっていると考えられる。葵という人物があるクラブでホステスをしていたときに客としてくる男はライオンのオスだと思っている。見えないたてがみが生えていて、肩書き、学歴、運動神経、他人よりも勝っているところを探してあげて肯定すると安心する。男にとってたてがみは重要である。

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