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  • ASEAN(東南アジア諸国連合)

    ASEAN(東南アジア諸国連合)

    はじめに

    東南アジア地域は世界経済の中で急成長を遂げ、政治的にも重要な位置を占める地域となっています。そうした中で、この地域の平和と繁栄を推進するために設立されたのがASEAN(Association of Southeast Asian Nations、東南アジア諸国連合)です。ASEANは、加盟国間の経済協力、政治的安定、文化的交流を推進する目的で設立され、現在では10カ国が加盟しています。本稿では、ASEANの歴史、目的、組織構造、主な活動内容、課題、そして今後の展望について詳述します。

    1. ASEANの歴史と設立の背景

    ASEANは、1967年8月8日にタイのバンコクで結ばれた「バンコク宣言」に基づいて設立されました。創設当時の加盟国は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国でした。これらの国々は、冷戦時代における政治的不安定と共産主義の拡大に直面していました。そのため、地域の安定と発展を促進するために、協力関係の構築が急務とされていたのです。

    1.1 バンコク宣言の意義

    バンコク宣言は、ASEAN設立の基盤となる文書であり、以下の5つの目標を掲げました。

    • 経済成長、社会進歩、文化的発展の促進

    • 地域の平和と安定の確保

    • 相互援助と協力の推進

    • 教育、科学技術、行政分野での協力強化

    • 国際機関との協力を通じた域内外の平和促進

    1.2 加盟国の拡大

    ASEANの設立当初は5カ国のみでしたが、その後、域内の他の国々も次々と加盟しました。以下は加盟国の拡大の歴史です。

    • 1984年:ブルネイ・ダルサラーム

    • 1995年:ベトナム

    • 1997年:ラオス、ミャンマー

    • 1999年:カンボジア

    これにより、現在のASEANは東南アジアの10カ国が加盟する組織となっています。

    2. ASEANの目的と基本原則

    ASEANの設立目的は、加盟国間の協力と相互理解を促進し、地域の平和と安定を確保することです。具体的な目的として、以下の点が挙げられます。

    2.1 経済成長の促進

    ASEANは、加盟国の経済成長を促進し、貧困削減や社会的な格差是正を図るため、経済協力を強化しています。自由貿易協定(FTA)の締結や域内市場の統合により、加盟国間の貿易と投資を活発化させています。

    2.2 政治的安定と安全保障の確保

    ASEANは、紛争解決や安全保障分野での協力を通じて、地域の平和と安定を保つことを目指しています。特に、南シナ海問題などの領有権紛争に対しては、対話と協調を重視しています。

    2.3 文化的交流と相互理解の促進

    多様な文化背景を持つASEAN加盟国は、文化交流を通じて相互理解を深め、地域の結束を強化しています。

    3. ASEANの組織構造

    ASEANは、以下の主要な機関で構成されています。

    3.1 ASEAN首脳会議

    加盟国の首脳が一堂に会する最高意思決定機関で、年に2回開催されます。地域の重要な問題についての方針を決定し、協力の枠組みを強化する場です。

    3.2 ASEAN外相会議

    加盟国の外務大臣が集まり、地域の政治的・外交的な問題を協議します。安全保障、環境問題、国際関係など多岐にわたる課題についての意見交換が行われます。

    3.3 ASEAN事務局

    インドネシアのジャカルタに本部を置き、ASEANの政策やプログラムの実施を監督する役割を担っています。

    4. ASEANの主な活動分野

    4.1 経済協力

    ASEANは経済統合を目指し、2003年にASEAN経済共同体(AEC)構想を発表しました。AECの目標は、単一市場と生産拠点の形成、競争力の向上、地域経済の均衡発展、そして域外経済との統合です。これにより、加盟国間の関税が撤廃され、自由な物資の流れが促進されています。

    4.2 安全保障協力

    ASEAN地域フォーラム(ARF)は、地域の安全保障問題を協議する場として1994年に設立されました。テロ対策、海洋安全保障、災害救援などの分野で協力を進めています。

    4.3 環境保護

    ASEANは環境問題にも取り組んでおり、特に熱帯雨林の保全や海洋汚染防止に注力しています。気候変動への対応も重要な課題として取り組んでいます。

    4.4 教育・文化交流

    ASEANユースキャンプやASEANユニバーシティ・ネットワーク(AUN)を通じて、若者の交流や教育の質向上を図っています。

    5. ASEANの課題

    ASEANは数多くの成功を収めてきましたが、以下のような課題も抱えています。

    5.1 経済格差

    ASEAN加盟国の中には、経済発展の度合いに大きな差があります。例えば、シンガポールやマレーシアは先進国に近い水準ですが、カンボジアやラオスは発展途上国です。この格差が域内の経済統合を阻害する要因となっています。

    5.2 南シナ海問題

    南シナ海を巡る領有権問題は、加盟国間の対立要因となっています。特に、中国との関係が緊張しており、ASEANとしての統一対応が求められています。

    5.3 人権問題

    ミャンマーにおける少数民族ロヒンギャの迫害問題など、加盟国の内部問題が国際的な批判を招いています。ASEANの「内政不干渉」の原則が、こうした問題への対応を困難にしているとの指摘もあります。

    6. 今後の展望

    ASEANは地域統合をさらに進め、アジア太平洋地域における影響力を高めることを目指しています。特に、デジタル経済の推進やサプライチェーンの強化、持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みが今後の課題となります。また、インド太平洋地域での影響力を強化するため、日米欧などの域外国との連携も進めています。

    6.1 デジタル経済の推進

    ASEANはデジタル技術を活用し、域内の経済成長を加速させるために、スマートシティ構想やデジタル貿易の促進を進めています。

    6.2 グリーン成長と持続可能な発展

    気候変動への対応や再生可能エネルギーの普及など、持続可能な開発を重視し、地域の環境保護に取り組んでいます。

    結論

    ASEANは、東南アジア地域の平和と繁栄を目指す重要な地域機構として、その役割を果たしています。しかし、経済格差や政治的対立などの課題に直面しており、今後のさらなる統合を目指しております。

    Southeast Asia has achieved rapid growth in the global economy and has become a politically important region. Against this backdrop, ASEAN (Association of Southeast Asian Nations) was established to promote peace and prosperity in this region. ASEAN was established to promote economic cooperation, political stability, and cultural exchanges among member countries, and currently has 10 member countries. This article details the history, purpose, organizational structure, main activities, challenges, and future prospects of ASEAN.

  • 世界的に影響力のある10人の「顔」

    世界的に影響力のある10人の「顔」を紹介します。これらの人物は、政治、ビジネス、エンターテイメント、科学、スポーツなど、さまざまな分野で世界に大きな影響を与えています。

    1. ジョー・バイデン (Joe Biden)

    役割: アメリカ合衆国大統領

    影響力: 世界最大の経済・軍事大国であるアメリカのリーダーとして、国内外の政策に大きな影響を与えています。気候変動問題や国際関係でのリーダーシップが注目されています。

    2. 習近平 (Xi Jinping)

    役割: 中国国家主席

    影響力: 世界第2位の経済大国である中国のリーダー。経済、軍事、外交において強い影響力を持ち、特にアジア太平洋地域やグローバルな経済・政治の場で大きな存在感を示しています。

    3. エロン・マスク (Elon Musk)

    役割: テスラ、スペースXのCEO

    影響力: テスラを通じて電気自動車産業を牽引し、スペースXでは宇宙産業の革命を進めています。技術革新の分野で世界的なインフルエンサーとなり、未来の技術への期待を背負っています。

    4. ウラジーミル・プーチン (Vladimir Putin)

    役割: ロシア連邦大統領

    影響力: 世界的なエネルギー資源を持つロシアのリーダーとして、ヨーロッパや中東における地政学的問題に大きな影響を与えています。特にロシアと西側諸国との関係が注目されています。

    5. グレタ・トゥーンベリ (Greta Thunberg)

    役割: 気候変動活動家

    影響力: 若者を代表する環境活動家として、気候変動に対する国際的な意識を高める運動を推進。彼女の行動は、世界中のリーダーや市民に気候変動対策の重要性を再認識させました。

    6. ティム・クック (Tim Cook)

    役割: Apple CEO

    影響力: 世界最大のテクノロジー企業であるAppleを率い、iPhoneやMacを通じて世界中の人々の生活に大きな影響を与えています。技術革新と企業倫理を重視し、グローバル市場で大きな存在感を示しています。

    7. カマラ・ハリス (Kamala Harris)

    役割: アメリカ合衆国副大統領

    影響力: アメリカ初の女性、副大統領であり、黒人と南アジア系アメリカ人としての初の大役を果たしています。彼女は多様性と平等を象徴する存在であり、国内外での社会正義や政策に大きな影響を与えています。

    8. ビル・ゲイツ (Bill Gates)

    役割: マイクロソフト共同創業者、ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同代表

    影響力: マイクロソフトの創業者として世界のテクノロジー革命を牽引し、その後はビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じてグローバルな健康問題や貧困対策に尽力しています。

    9. クリスティアーノ・ロナウド (Cristiano Ronaldo)

    役割: プロサッカー選手

    影響力: 世界で最も有名なサッカー選手の一人であり、スポーツ界におけるスーパースター。彼の影響力はスポーツを超え、広告やチャリティ活動などでもグローバルな影響力を持っています。

    10. アンジェリーナ・ジョリー (Angelina Jolie)

    役割: 女優、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)特使

    影響力: ハリウッドの大スターでありながら、人道的な活動にも熱心に取り組んでいます。特に難民支援や人権問題に対しての影響力は大きく、多くの慈善活動に尽力しています。

    これらの10人は、それぞれの分野で重要な役割を果たし、世界に大きな影響を与えているリーダーや象徴的な人物です。

  • 能登半島の度重なる天災

    能登半島の度重なる天災

    石川県能登半島は、日本海に面した美しい自然環境と豊かな伝統文化が特徴的な地域ですが、2007年から2024年の間、地震や洪水といった自然災害による深刻な被害を経験してきました。これらの災害は、住民の生活や地域経済に大きな影響を与え、防災・復興対策の必要性を改めて浮き彫りにしています。以下では、能登半島地域で起きた地震や洪水に焦点を当て、これらの災害が地域に与えた影響と、その後の復興および対策の取り組みについて解説します。

    1. 2007年能登半島地震

    地震の概要

    2007年3月25日、能登半島を震源とするマグニチュード6.9の強い地震が発生しました。この地震は「2007年能登半島地震」として知られ、特に石川県輪島市や珠洲市などの地域に甚大な被害をもたらしました。震度は最大6強を記録し、家屋の倒壊や土砂崩れ、道路の寸断などの被害が広範囲に及びました。この地震によって、少なくとも1名の死者と200名以上の負傷者が出たほか、約1万棟の建物が被害を受けました。

    被害の詳細

    地震の揺れによる直接的な被害として、家屋の倒壊や瓦の落下が多く報告されました。特に伝統的な木造家屋は、耐震性能が低いために大きな被害を受け、歴史的な建造物や文化財も損壊しました。また、土砂崩れや地割れが発生し、道路や鉄道などのインフラが遮断されました。これにより、一部地域では孤立状態が続き、救援活動が困難を極めました。

    さらに、地震によるライフラインの被害も深刻でした。電気やガス、水道といった基本的なインフラが断たれ、多くの住民が数日間にわたって不便な生活を強いられました。特に、地震直後の寒冷な気候が追い打ちをかけ、避難所生活を余儀なくされた住民にとっては、厳しい状況が続きました。

    地域経済への影響

    能登半島は観光業が盛んな地域であり、地震の発生によって観光客が激減しました。能登半島の美しい景観や歴史的な街並み、温泉地などは、地震前まで国内外から多くの観光客を引き寄せていましたが、地震後はこれらの観光資源も大きなダメージを受けました。特に、宿泊施設や飲食店などの観光関連産業は、顧客減少と施設の損壊により深刻な経済的打撃を受けました。

    また、農業や漁業といった地元産業にも影響が及びました。地震による土壌の変動や土砂崩れは、農地や棚田に被害を与え、農作物の収穫が大幅に減少しました。漁業に関しても、港湾施設の損壊や津波の影響による漁業資源の減少が報告され、漁業者たちの生活にも大きな影響を与えました。

    復興への取り組み

    地震直後から、地域では復興に向けた様々な取り組みが行われました。国や地方自治体は迅速に災害支援を行い、仮設住宅の設置や避難所での物資提供が行われました。また、ボランティア団体やNPOが地域に入り、瓦礫の撤去や食料・水の提供、医療支援などに尽力しました。

    復興支援は長期にわたり行われ、特に住居再建やインフラの復旧に力が注がれました。耐震性の高い住宅の建設や、避難経路の整備、防災意識向上のための訓練など、災害に強い地域づくりが推進されました。また、地震を乗り越えた地域の魅力を再発見するための観光促進活動も行われ、復興観光という形で地域の再生を図る試みも見られました。

    2. 洪水と土砂災害

    近年の豪雨による洪水

    2007年以降、能登半島では地震に加えて、豪雨による洪水や土砂災害も頻発しています。特に、2018年と2021年には記録的な豪雨が発生し、能登地域を中心に大きな被害が報告されました。

    これらの豪雨は、気候変動の影響で異常気象が増加していることが一因と考えられます。温暖化によって日本海の海水温が上昇し、より強力な台風や集中豪雨が発生しやすくなっています。その結果、河川の氾濫や土砂崩れが多発し、農地や家屋に被害をもたらしました。

    洪水の被害

    2018年7月には、能登半島で記録的な大雨が降り続き、複数の河川が氾濫しました。この豪雨により、能登半島全域で広範囲にわたる浸水被害が発生し、家屋や商業施設、公共インフラが水没しました。特に低地に位置する集落や、川沿いの農地が大きな被害を受けました。

    また、洪水の影響で道路や鉄道も寸断され、一部地域では住民が孤立状態となりました。洪水による被害は、家屋の物理的な損壊だけでなく、住民の生活に長期的な影響を与えるものであり、避難生活や復旧作業が続く中で、地域全体が大きな負担を強いられました。

    土砂災害

    能登半島は、急峻な地形と豊かな森林に恵まれた地域ですが、その地形は同時に土砂災害のリスクも高めています。特に、豪雨の際には山間部での土砂崩れが発生しやすく、被害が拡大する傾向があります。2018年の豪雨でも、土砂崩れによって複数の道路が寸断され、住民の避難や救援活動が難航しました。

    土砂災害は、特に山間部に位置する小規模な集落に大きな影響を与えました。これらの集落では、道路や橋が崩壊することで物資の供給が途絶え、孤立状態が長期化するケースが見られました。また、棚田や農地が土砂で埋まり、農業に従事する人々にとっては大きな打撃となりました。

    洪水と土砂災害への対策

    能登半島地域では、豪雨や土砂災害への対策として、河川の堤防強化や排水設備の整備、土砂災害警戒区域の設定が進められています。また、地域住民に対する防災教育や避難訓練も定期的に実施され、災害時に迅速に対応できる体制が整えられています。

    加えて、近年ではドローンや人工知能(AI)を活用した災害監視システムの導入も進められています。これにより、山間部での土砂崩れのリスクを早期に把握し、事前に住民へ避難を呼びかけることが可能となっています。また、災害発生後には迅速な被害状況の把握と、復旧作業の効率化が図られています。

    2023年能登半島地震の概要

    2023年5月5日、石川県能登半島を震源とするマグニチュード6.5の強い地震が発生しました。この地震は「2023年能登半島地震」として知られており、特に石川県珠洲市を中心に大きな被害をもたらしました。震度6強が観測され、建物の倒壊や土砂崩れ、インフラの損壊が広範囲に及びました。

    地震の発生はゴールデンウィーク中であったため、多くの観光客が能登地域を訪れていましたが、その中での災害発生は避難や対応にさらなる困難をもたらしました。震源の浅さも相まって、強い揺れが広範囲に感じられ、石川県内のみならず周辺地域でも大きな影響が報告されました。

    地震による被害

    この地震によって、住宅の倒壊や壁の崩落、瓦が落ちるといった被害が報告されました。特に珠洲市では、古い木造家屋が多いため、耐震基準が満たされていない建物が多く、倒壊の被害が顕著でした。また、伝統的な建築物や文化財も損壊し、地域の歴史的遺産に影響を与えました。

    人的被害としては、地震により1名の死者が出ました。また、複数の負傷者が報告され、被災者の一部は避難所に避難しました。さらに、ライフラインの損傷も深刻で、地震直後には電力や水道の供給が断たれ、通信網にも影響が及びました。一部地域では道路が寸断され、孤立状態に陥った集落もありました。

    地震による地盤の変動や余震の発生も相次ぎ、復旧作業が遅れる原因ともなりました。特に余震が続く中での建物の損傷が懸念され、住民は不安を抱えながらの生活を余儀なくされました。

    経済的影響と観光業への打撃

    能登半島は、観光業が地域経済の重要な柱となっており、地震はこの観光業にも大きな打撃を与えました。地震の発生により、旅行客が避難を余儀なくされ、宿泊施設や観光地は一時的に閉鎖されました。また、地震後の安全確保のために観光施設の再開が遅れることで、観光業への影響が長期化しました。

    この地域では温泉地や歴史的な街並みが観光の目玉であり、観光資源の損傷は地域の経済に直接的な影響を与えました。また、農業や漁業も能登地域の基幹産業であり、地震により施設やインフラが損傷したことで、これらの産業にも被害が及びました。

    防災対策の強化

    2023年の地震は、能登半島地域における防災対策の必要性を再び強調する結果となりました。過去の地震や豪雨による災害経験をもとに、能登地域では防災インフラの整備や住民の防災意識向上が進められてきましたが、今回の地震を契機にさらなる対策が求められています。

    特に、古い木造家屋の耐震補強や公共施設の耐震化は急務とされています。また、避難所の整備や避難経路の確認、災害発生時の迅速な情報伝達システムの構築も重要な課題として挙げられています。地域住民に対する防災訓練や、観光客への適切な避難指導も強化される見通しです。

    さらに、気候変動に伴う異常気象が増える中で、地震のみならず、豪雨や土砂災害への対策も引き続き強化される必要があります。能登半島はその自然環境から、災害リスクが高い地域でもあるため、地域全体での防災力向上が今試されるときです。

    2024年、能登半島を再び襲った地震は、地域に新たな試練をもたらしました。この地震は2023年の地震に続く大きな地震であり、地元住民や自治体は復興に向けた取り組みを進めている中での再度の災害に直面しました。

    2024年能登半島地震の概要

    2024年8月12日、石川県能登半島でマグニチュード6.7の地震が発生しました。この地震は、前年の2023年に起きた地震と同じく、石川県の珠洲市周辺を震源とし、広範囲で強い揺れを感じさせました。震度は最大6強を記録し、建物の倒壊、土砂崩れ、道路や橋梁の損壊といった大規模な被害が報告されています。特に、前回の地震で損傷を受けた建物やインフラに対しては、二重の被害が重なり、復旧の長期化が懸念される事態となりました。

    地震の揺れは能登半島全域で感じられ、石川県全体にも広がり、福井県や富山県など隣接する地域にも影響を与えました。余震も頻繁に発生し、住民は再度の地震に対する不安を抱きながら日々を過ごすこととなりました。

    被害の詳細

    2024年の地震は、特に建物への被害が大きく、前回の2023年地震で耐震補強が施されていない家屋や古い建物が多く倒壊しました。また、歴史的な文化財や伝統的な建物も被害を受け、地域の貴重な文化遺産が損壊しました。

    地震による人的被害も深刻で、複数の死者が報告され、100名以上が負傷しました。特に、崩壊した家屋の下敷きになるなどして大きな被害を受けた人々が多く、地域住民の間に大きな衝撃を与えました。また、地震によって避難を余儀なくされた住民たちは、避難所に身を寄せる生活が長期間続くこととなり、生活面での不安も高まりました。

    ライフラインの被害も大きく、電気、水道、ガスといったインフラが断たれ、一部地域では通信手段も寸断されました。これにより、住民は情報不足の中で混乱が広がり、物資の供給や救援活動にも支障をきたしました。

    経済的影響と産業への打撃

    能登半島は観光業が盛んな地域であり、地震の影響は観光業にも直撃しました。地震後には多くの観光施設が一時閉鎖され、キャンセルが相次ぎました。能登の温泉地や歴史的建造物を訪れる観光客の減少は、地域経済に深刻な影響を与えました。

    また、農業や漁業といった基幹産業にも被害が及びました。地震による土壌の変動や津波の影響で、農地が荒廃し、漁港施設が損傷するなど、農漁業者にとっては大きな打撃となりました。特に、漁業に関しては、港湾施設の修復が長期化し、復旧までの間の収入減少が問題視されています。

    防災対策と地域の復興

    2024年の地震は、能登半島地域における防災対策の重要性を再認識させるものでした。過去の地震から得られた教訓をもとに、防災インフラの整備や住民の防災意識の向上が進められてきましたが、それでもなお、十分な対策が講じられていない場所も多く、特に古い木造家屋の耐震補強の必要性が改めて浮き彫りになりました。

    今後の課題として、避難所の整備や、住民への迅速な情報提供の仕組みをさらに強化することが求められています。また、観光業の回復に向けた取り組みとして、復興観光の推進や地域の魅力を再発見するためのイベントやキャンペーンも計画されています。

    国や地方自治体も、早急な復旧支援に取り組み、住宅再建やインフラ整備、災害対策の強化に向けた資金提供や技術支援を進めています。また、地震の影響を受けた産業や企業に対する支援策も講じられており、地域全体での復興が目指されています。

    結論

    2024年能登半島地震は、前年に続く大きな災害であり、地域に新たな課題をもたらしました。防災対策の強化が急務であることは明白であり、これからの能登半島は、災害に強い地域づくりを進めることが求められています。また、復興と同時に、観光業や農漁業などの基幹産業を再び活性化させ、地域経済を支える取り組みが重要となるでしょう。

  • 情報化社会で生じる課題

    情報化社会で生じる課題

    はじめに

    近年、凄まじい勢いで高度情報化が進んでいる。インターネットの普及により電子メールやSNSなどが普及し、どこにいても人に連絡でき世界が非常に近くなっていると感じる。1990年代のインターネットや携帯電話の普及、情報技術の高度化に伴い、情報化社会という言葉が生まれた。インターネットは前身であるARPANET(アーパネット、Advanced Research Projects Agency NET work、高等研究計画局ネットワーク)は、世界で初めて運用されたパケット通信コンピュータネットワークであり、これがインターネットの起源である。1977年のことである。そこからxDSLや光ファイバ通信へと技術が進歩し、一般家庭においても短時間での大容量情報通信が可能となっている。今や半導体や通信技術の向上により、手のひらサイズのスマートフォン一つで高画質の動画を見ることができ、今やライブ配信まで可能になっていることが身近な例として挙げられる。将来、さらに細部までネットワークは普及し、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)について議論がされ、普及が進んでいる1)。IoTは家電がインターネットに繋がる例として、防犯のためスマートフォンで外にいながらカメラを通じて家の様子を確認できたり、家に着く前にエアコンの電源を入れ、事前に部屋を温めておいたりといったことが可能となる。更には外からお風呂のお湯を沸かしたり、冷蔵庫に入っているものが分かり、レシピまで提案したりする製品まである。インターネットが身近になり、時間や費用を大幅に削減できる非常に便利なモノであることは間違いないが、一方、すべてがオンラインで繋がっているからこそ個人情報流出などセキュリティ面でのデメリットもある。以下のように本レポートでは情報化社会になることにより生じる課題と解決策について述べる。

    1. 情報化社会が進むことによるメリット・デメリット

     情報化社会が進むと生活を営む人々には多くのメリットがある。パソコンから検索エンジンに知りたいキーワードを入力すればインターネットにより欲しい情報がその場ですぐに手に入る。わざわざその場所に行かなくても用事が済むようになっている。例えば、銀行窓口やATMに行かなくても離れた場所から残高確認や振り込みなどオンライン決済が可能である。ATMまでの移動にかかる費用や時間、銀行店舗にかかる人件費も節約が可能となる。また、ビッグデータの活用が可能である。ビッグデータとはデジタル化の更なる進展やネットワークの高度化、またスマートフォンやセンサー等IoT関連機器の小型化・低コスト化によるIoTの進展により、スマートフォン等を通じた位置情報や行動履歴、インターネットやテレビでの視聴・消費行動等に関する情報、また小型化したセンサー等から得られる膨大なデータである2)。スマホをはじめとするデバイスの進歩で、あらゆる情報が瞬時に蓄積され、コンピュータの進化で、その大量の情報(ビッグデータ)を瞬時に処理することができ、ネットワークの進化でグローバルに、企業・個人の壁を越え、国境も越えて、瞬時に情報が飛び交う時代になった。今後はさらにコンピュータの処理能力は上がり、記憶媒体の大容量化と低価格化は止まらず、スマホのさらなる高度化とSNSの進化であらゆる情報はさらに蓄積される。企業の情報システムは、自社所有化からクラウド利用にシフトしていく過程で、ビジネスにおける情報利用のレベルも急激に広がり進化していくと思われる。情報があつまり、消費者に価値を生まない無駄は徹底的に排除される。この流れはさらに加速し、今後はこの大量の情報(ビッグデータ)を、会社経営に有効活用するために情報システムをはじめとしAIやロボット化にどんどん波及して、企業の優劣や業績への影響もますます大きくなると予想できる。一方、オンラインで繋がっているからこそコンピュータウイルスやフィッシングによる氏名、住所、電話番号、クレジットカード番号などの個人情報流出はセキュリティ面やプライバシーの侵害の可能性が出てくる。これは、むやみに個人情報を端末に入力せず、必要最低限とし自分を守る必要がある。また、コンピュータウイルスや停電によりサーバがダウンすると便利な媒体は全く使用できない状態となる可能性が考えられる。ウイルスはネットワークが感染しないように監視・ブロックを行い、感染してしまった場合、感染が広がらないように直ちにネットワークを遮断し、感染経路を断つ措置を講じる。停電した場合に備え、太陽光発電や予備バッテリーによる電源の確保をしておくなどの対策が必要となると考えられる。

    3. 情報化社会における有害情報

     情報化社会が進むと人が情報を容易に手に入れられるようになる。そのため、フィルタリングをかけなければ成人だけではなく、判断が未熟である未成年にも有害情報や違法な情報が届いてしまう恐れがある。有害情報とは児童ポルノ・わいせつ物、麻薬売買の広告、公序良俗に反する情報、死体画像などの人の尊厳を害する情報、自殺を誘引する書き込み、アダルト、出会い系サイト、暴力的な表現などがある。

    近年、未成年者の誘拐事件のニュースを目にすることが多い。スマートフォンからSNSを利用し、悩み事を持つ未成年者の相談にのり、良き理解者を演じ誘う。背景としてスマートフォンの個人保有率は多くの世代で増加傾向にある。SNSを良く利用し、情報リテラシーに疎いと考えられる13歳から19歳の未成年においても2017年で79.5%が所有しているという結果が報告されている2)。

    図1 スマートフォンの個人保有率の推移 2)

    4. 個人情報保護法

     個人情報保護法は正式には個人情報の保護に関する法律と言い、個人情報の取扱いに関連する日本の法律である。コンピュータの進歩やネットワークを用いた情報通信網の発達に伴って、大量で多様な個人情報を蓄積し利用できるようになったが、管理する側には情報流出を防ぐ必要がある。個人のプライバシーが侵害されるおそれがあるため、個人情報が適正に扱われることを目的として法が制定、施行された。2003年(平成15年)5月23日に成立し、2005年(平成17年)4月1日に全面施行した。 個人情報保護法および同施行令によって、取扱件数に関係なく個人情報を個人情報データベース等として所持し事業に用いている事業者は個人情報取扱事業者とされる。個人情報取扱事業者が主務大臣への報告や、それに伴う改善措置に従わない等の適切な対処を行わなかった場合は、事業者に対して刑事罰が科される。後に個人情報には個人識別符号の定義が設けられた。身体の一部の特徴を電子計算機のために変換した符号。DNA、顔、虹彩、声紋、歩行の態様、手指の静脈、指紋、掌紋などがある。サービス利用や書類において対象者ごとに割り振られるものとしてはパスポート番号、基礎年金番号、免許証番号、住民票コード、マイナンバー、各種保険証等がある3)。

    5. まとめと私見

     情報化社会が進むと生活する人の利便性が増すが、そこに様々な問題が生じている。インターネットが生まれ情報化社会が進むと人が情報を容易に手に入るようになる。そのため、制限をかけなければ成人だけではなく、判断が未熟である未成年にも有害情報や違法な情報が届いてしまう恐れがあり、スマートフォン一つで気軽に行えるSNSなどでは情報リテラシーに乏しく、犯罪に巻き込まれる恐れさえある。だから、保護者は未成年に情報をそのまま与えるのではなく、ある種のフィルターをかけて与えるべきである。また、ビッグデータやAIは個人がネットサーフィンを行い、オンラインショップなどでモノを購入した情報などを集めた膨大なデータから得ている。気をつけなければ、個人のあらゆる情報が筒抜けとなりプライバシー侵害となる可能性がある。そのため、個人情報を守るために個人情報保護法が制定されている。個人情報保護法はコンピュータの進歩やネットワークを用いた情報通信網の発達に伴って、大量で多様な個人情報を蓄積し利用できるようになり、管理する側に情報流出を防ぐ責任を持たせる役割を持つ。また、リスクとしてはコンピュータウイルスや停電によりサーバがダウンすると便利な媒体は全く使用できない状態となる可能性が上げられ、備えとして太陽光発電や予備バッテリー等による十分な電源の確保をしておくなどの対策が必要となると考えられる。世の中を便利にするためにIoTや情報化が進み、情報と上手く共存するより良い世の中になっていくことを望む。

    参考文献

    1) 2時間でわかる 図解「IoT」ビジネス入門 小泉耕司

    2) 総務省 平成30年版 情報通信白書

    http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd142110.html

    3) 個人情報保護委員会事務局

    https://www.ppc.go.jp/files/pdf/28_setsumeikai_siryou.pdf

  • 日本人消滅の危機とは?1億人割れも…

    日本人消滅の危機とは?1億人割れも…

    はじめに

     令和2年(西暦2020年)における合計特殊出生率の全国平均は1.34である。県別にみると最も高いのは沖縄県の1.86、最も低い東京1.13に次いで低いのが北海道で1.21、全国平均1.34となるのは栃木県である。そして、日本全国の2045年までの推計を含めた人口の推移を見ると平成27年(西暦2015年)の1億2700万人をピークに減少しており、令和27年(西暦2045年)では1億600万人まで減少すると見られている。合計特殊出生率を日本の中でも県別に見てみる。なぜ、このように差が出てくるのか。また、人口減少が地方経済にどのような影響を及ぼすのか。以下、3県、北海道・栃木県・沖縄県について取り上げた。人口変動の要因や経済成長との関係を検討して、将来の成長に関する政策課題の説明や必要な政策の提言について考察する。

    合計特殊出生率について

     令和2年(2020)における合計特殊出生率の全国平均は1.34である。ここで言う「期間」合計特殊出生率は1年間の出生状況に着目したもので、その年における15~49歳の女性の出生率を合計したものである[1]。県別にみると最も高いのは沖縄県で1.86、最も低い東京1.13に次ぐ北海道は1.21、全国平均1.34と一致している栃木県である。県別に見ると合計特殊出生率に差が出ている[2]

    過去の人口と2045年までの将来推計人口予測推移について

     平成22年(西暦2010年)から令和27年(西暦2045年)までの日本の人口推移を下記『表 全国総人口および県別総人口』には、選択した3つの県および全人口と東京都の人口を示した。始めに全国の人口推移を見てみると平成27年(西暦2015年)の1億2700万人をピークに減少しており、令和27年(西暦2045年)では1億600万人まで減少すると見られている[4]。この全国の人口減のように今回取り上げた3県の内、北海道・栃木県の2県では人口が減少している。

    表 全国総人口および県別総人口[3][4]

    平成22年度は参考文献[2]、それ以降は[3]を参照。点線の令和7年以降は予測値

     北海道の人口は2021年6月1日公表の令和2年(西暦2020年)国勢調査速報によると2015年の調査よりも2.8%減となっている。これは自然減に加え、道外への転出が進んだ結果と言える。また、札幌市では1.2%増の197万5065人であるが、その他の地方の函館市25万1271人と1万4708人減(5.5%減)、小樽市の1万502人減(8.4%減)、旭川市の1万92人減(3.0%減)となっている。進学や就職のため都市部の札幌市への一極集中型が進んでいる[5]

     栃木県の人口については令和2年(西暦2020年)で193万人、前回平成27年(西暦2015年)では197.4万人と4.4万人が減少している。出生児数の減少に比べ死亡者が上回ることに加え、首都圏1都3県への転出が増えたことによる。予測では令和7年(西暦2025年)には187.3万人と減少し、令和27年(西暦2045年)で156.1万人まで減少すると見られている。自然減と首都圏への転出が進むことが予想されている。下記に総務省統計局の『国勢調査 都道府県・市区町村別特性図 昼夜間人口比率』を示した[6]。この都道府県別の昼夜人口比を見ても東京に人が集中し、首都圏の栃木県を含めた東京以外の首都圏の千葉県、埼玉県、神奈川県、茨城県は減少が起こっている。これは労働のために人が転出されていることが言え、東京に近い場所へ転居・転出が進むと言える。

    図 国勢調査 都道府県・市区町村別特性図 昼夜間人口比率[12]より

     一方、東京都と沖縄県はほぼ横ばいである。東京都は平成 27(2015)年国勢調査による人口を基準に、2060 年までの東京の人口を推計すると今後もしばらく増加を続け、2025 年の1,398 万人をピークに減少に転じるものと見込まれている。このような背景として区部を中心とした社会増と、それに伴う出生率の上昇による出生数の減少緩和がしばらく続くと見込まれる。一方で高齢化が進行する中、いわゆる団塊の世代が全て75 歳以上の後期高齢者となる 2025 年以降に自然減の影響が相対的に強まることが想定される。その結果、2025 年が東京の人口の転換点になると見込まれる[7]

     沖縄県は2021年7月1日現在の国勢調査確報に基づく推計人口に公表した国勢調査結果によると145.9万人である。2015年の調査人口143.4万人と比較すると25,648人で1.8%増えている。これは都道府県の中で最も高い。この人口増加の要因としては沖縄県の高い合計特殊出生率が挙げられる。「平成25年~29年人口動態保健所・市町村別統計」(厚生労働省)によると、沖縄県の2013年~2017年における赤ちゃんの出生数は、年平均で16,672人。人口千人当たりでは11.7人(全国平均7.9人)となり、47都道府県中1番目である。同期間の1人の女性が生涯に産む平均子供数を推計した合計特殊出生率では1.93で1番目である。2020年でも合計特殊出生率は1.86人で全国1位となっている。この要因として他の都道府県と比較し、親族や近所付き合いが多いこと、男系の子孫を重んじ、男児が生まれるまで出産を制限せず子の人数が増える傾向にあることが挙げられる。

     また、沖縄県は長寿の県としても知られている。2017年12月13日に厚生労働省が公表した「平成27年都道府県別生命表 都道府県別にみた平均寿命の推移」によれば、2015年の沖縄県の0歳児の平均余命としての平均寿命は、全国平均より高い。男性が全国平均よりも0.50歳短い80.27歳、女性は全国平均より0.43歳長い87.44歳となっている[8]

    表 沖縄県の人口の推移

    [9]厚生労働省「平成27年都道府県別生命表 都道府県別にみた平均寿命の推移」2017年参照

    人口減少と地方創生

     これまでの3県北海道・栃木・沖縄県の人口について結果を以下にまとめる。北海道の人口は2021年国勢調査速報によると2015年の調査よりも2.8%減となっている。要因として札幌市では1.2%増の197万5065人であるが、進学や就職のため都市部の札幌市への一極集中型が進んだ結果と考えられる。栃木県の例については令和2年で人口193万人、前回平成27年(西暦2015年)では197.4万人と4.4万人が減少している。沖縄県の人口は2021年の国勢調査結果によると145.9万人である。2015年は143.4万人と25,648人割合で1.8%増えている。要因として合計特殊出生率が1.86人と都道府県別で1位となっており、他の都道府県と比較し、特殊な例だと言えるが男児出産まで制限がなく、子の人数が増える傾向にあるという。

     一方、都市部では東京の例のように合計特殊出生率は1.13であり、埼玉・千葉・神奈川の首都圏は1.2台である。大阪は1.3で京都・兵庫・奈良も低い。都市部へ集中すると子供を育てる環境が悪くなる傾向があり、合計特殊出生率は下がる傾向にある。これまで述べたように地方で十分な生活ができる状況にないことも原因であると言える。人口減少が起こると労働を主に行う生産年齢人口が減り、総生産・所得も減少が起こる。下記に内閣府の子供子育て本部による日本の人口構造を示した[9]。これによると現在3.47人に1人が65歳以上の高齢者で2045年では人口減少が進み、2.7人に1人が高齢者となる。

    内閣府 子供子育て本部

    https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/taikou_4th/k_1/pdf/ref1.pdf[9]

     これらを防ぐためには、①出生児数の減少を防ぎ、子育てのために必要な所得を上げ、②働いている間に安心して子供を預けられるような保育園・幼稚園や学童など子育てがしやすい、働きやすい環境を整え、③首都圏への転出防止のため県内での雇用を創出することなどが必要であると考えられる。

     政府は人口減・少子化対策のために2021年10月より幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳までの子供たちおよび住民税非課税世帯の0歳から2歳児クラスまでの子供たちの利用料を無償化とすることを決定している[10]

     また、政府は県別の経済指標を示し、県経済の実態を明らかにするために県民経済計算を報告している。県内、あるいは県民の経済の循環と構造を生産、分配、支出等各方面にわたり、計量把握することにより県の行財政・経済政策に資することを目的としている。それによると北海道は274.2万円、栃木県は347.9万円、全国1位の東京都は541.4万円である[11]。沖縄県は県民経済計算により234.9万円である[12]。収入が少なくなるほど子を育てる家庭を築く機会が少ないため、子を育てる余裕はなくなり、仕事があり、収入が期待できる県内都市部や他県への転出超過が進むと予想される。地方でも安定して人が住み続け、子育てができる環境づくりが人口減・少子化対策に必要と考えられる。最近の新型コロナウィルスの影響でも景気不安が見られ、人が集まる飲食店やライブ・コンサートを筆頭に地域社会への影響も広がる可能性がある。そこで、近年、政府は地域活性化の例として令和3年6月、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の内閣府地方創生推進事務局より新型コロナウィルス感染症による意識・行動変容とひと・しごとの流れの創出や各地域の特色を踏まえた自主的・主体的な取組の促進について提言もされている[13]。今後、様々な提案・提言が現れ、より地方を活性化させ、都市部に頼らない地方での生活を創出し、結果的に近隣住民が支え子供を育てやすい地域環境を生むことが重要と考えられる。

    【参考文献】

    [1] 厚生労働省 期間合計特殊出生率とコーホート合計特殊出生率

    https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai11/sankou01.html (2021.08.06)

    [2] 厚生労働省 直近の合計特殊出生率「人口動態統計月報年計(概数)」令和2(2020)

    https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/ index.html (2021.08.06)

    [3] 人口動態統計月報年計(概数)の概況 平成22

    https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei10/index.html (2021.08.06)

    [4] 社会保障・人口問題研究所 「地域別将来推計人口」平成30(2018)年推計

    http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/t-page.asp (2021.08.06)

    [5] 日本経済新聞社 北海道の人口2.2%減の538万人 札幌の一極集中進む

    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC015NH0R00C21A6000000/ (2021.08.06)

    [6] 総務省統計局 国勢調査 都道府県・市区町村別特性図 昼夜間人口比率

    https://www.stat.go.jp/data/chiri/map/c_koku/tyuhiri/index.html (2021.08.06)

    [7] 東京都政策企画局 2060 年までの東京の⼈⼝

    https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/actionplan-for-2020/plan/pdf/honbun4_1.pdf (2021.08.06)

    [8] 厚生労働省「平成27年都道府県別生命表 都道府県別にみた平均寿命の推移」

    https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/tdfk15/dl/tdfk15-03.pdf  (2021.08.06)

    [9] 内閣府 子供子育て本部

    https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/taikou_4th/k_1/pdf/ref1.pdf (2021.08.06)

    [10] 内閣府 幼児教育・保育の無償化について

    https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/musyouka/index.html (2021.08.06)

    [11] 内閣府 経済社会総合研究所県民経済計算

    https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/kenmin/contents/mokuteki.html (2021.08.06)

    [12] 沖縄県 県民経済計算

    https://www.pref.okinawa.jp/toukeika/accounts/accounts_index.html (2021.08.06)

    [13] まち・ひと・しごと創生基本方針2021について

    令和3年6 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 内閣府地方創生推進事務局

    https://www.chisou.go.jp/sousei/info/pdf/r03-6-18-kihonhousin2021gaiyou.pdf (2021.08.06)

  • 東日本大震災の今

    東日本大震災の今

    はじめに

    2011年3月、日本に岩手県沖から茨城県沖までの本州太平洋側広域に発生したマグニチュードMw9.0、最大震度7の巨大地震や津波による重大な災害をもたらした東日本大震災が起こった。死者と行方不明者の合計は2万5,949人。また、津波により冠水した面積は宮城県、福島県など6県で561km2(山手線の内側面積の約9倍)におよぶ。多くの尊い命とともに家屋や産業に大きな傷跡を残した東日本大震災の被害規模は、16兆~25兆円にのぼると政府は試算している[1]

    地震と津波によって福島第一原子力発電所が外部電源、自家発電ともに消失、停電し、核燃料に冷却水を供給できなくなった。その結果、原子力発電に使用されていた核燃料が炉心溶融(メルトダウン)を起こした。それによって、大量に発生した水素が爆発して建屋は大破し、放射性物質が空気中に放出された。特に福島第一原子力発電所が位置する福島県双葉町、大熊町、浪江町など周辺町民は8年たった今でも避難を強いられている。2019年(平成31年)3月11日現在、避難者は全国47都道府県1001の市区町村にわたり、いまだ約5万1千人存在する[2]。その震災における避難者を助けるために震災の発生直後「大学東日本大震災復興支援法務プロジェクト」が立ち上がり、被災地に対する法的支援がなされているという。そして、震災の1年後である2012年3月から現在に至るまで東京電力福島第一原子力発電所の至近距離にある福島県浪江町に対して法的支援を継続している。その法的支援とは予防原則の研究を通じ、原発事故によって生じた放射能汚染災害への行政の対応のあり方、原発再稼動に関しての問題などの検討支援とされている。被災者の生活再建を支える基本的な法律として、被災者生活再建支援法がある。しかし、支給金額が生活の再建には十分とはいえず、生業を継続できなくなった者が存在する。また、非居住の住宅所有者などは支援の対象とはならず、家族が分散して避難生活を送っている場合などでは支援金が行き渡らないことがあるという問題点もある[3]

    他に原発事故によって生じた種々の損害賠償問題の支援。法律相談支援NPOなどとの連携を通じた被災地が抱えている法律問題の調査支援などを行っているという。以下、東日本大震災後に行われた法による支援の例を挙げ、復興がより進むための方法を考察する。

    地域の復興とは何を指すか

    震災後の地域の復興としては地元の人間特に労働人口に含まれる若者の定着、地方への新たな人の流れの創出、地域産業の振興の3点が必須であると考える。まず、地元の人がそこへ帰還・定着し、生活をし、労働により税収がなければ、市や町のサービスもままならない。そして、観光客や働きに来る新たな人の流れがなければ地域が潤わない。原発事故によって1度止まってしまった人の動きに手を差し伸べ被災地支援を行い、地域復興を促進する必要があると言える。地域の特色ともいえる産業がなければ経済が回らず人も定着しない。人が定着し、経済を回すことがその地域発展に重要である。そのため、震災後の地域の復興とは人が戻り、これまでの生活を取り戻すことにあると考える。

    原発被災地復興のための政策はどうあるべきか

    原発事故によって生じた放射能汚染災害への被災地支援を行わなければ、地域復興はやってこない。支援のために、例えば、被災者の生活再建を支える基本的な法律として被災者生活再建支援法がある。しかし、同法に基づく生活再建支援制度は住宅被害を基礎に世帯ごとに最大300万円の金銭給付を行う制度となっている。支給金額が生活の再建には十分とはいえず、生業を継続できなくなった者が存在する。また、非居住の住宅所有者などは支援の対象とはならず、家族が分散して避難生活を送っている場合などでは支援金が行き渡らないことがあるという問題点もある[3]。そのため、この法律だけでは被災地復興支援としては十分とは言えない。

    福島第一原発事故によって、いまだ約5万1千人に及ぶ住民が避難を余儀なくされている。また、放射性物質に対する不安や風評被害も解消されず、精神的にも経済的にも多大な苦しみを負い続けている。長期にわたる避難生活や生業に回復できる見通しを得られないことから新たな問題も生まれ、将来の展望を抱けていない住民も少なくなく、自ら命を落とす者の数はなお減少を見ていないという。

    東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針が避難指示区域からの避難を慰謝料算定の基礎としているところ、当該中間指針の画一的・形式的運用によって住民間に分断や軋轢が生じた。さらに、除染が完了したとはいえない中避難指示の解除がなされ、避難指示の解除時期にかかわらず賠償期限を2018年3月とする方針が打ち出されたところである。こうした中で、既に帰還した者、今後、帰還しようとしている者、そして帰還を選択しない者も、様々な生活の困難や不安を抱えている。

    そのような状況の中で日本におけるエネルギー政策・原発に対する法規制は大きく見直される。平成29年4月14日に公布された原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の一部を改正する法律第3条では、主に以下の事項に関する規定を整備し、公布の日より3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行することとされている。

    また、東京電力福島第一原子力発電所における規制は以下のように他の原子力発電所とは別枠にて見直しされる方向であるとの案が示されている。福島第一原子力発電所では施設全体のリスク低減に必要な措置が求められる。発電所全体に対し実施計画を中心とした一体的な規制を実施する。施設の内包するリスク及び使用期間に応じて重点的に規制。リスクを早期に除去するための設備には、画一的な規制要件は適用せず、合理的・効率的な規制を実施する。通常の原子力施設と同等の保安水準を網羅的には求めないとの方針が示されている[4]

    まとめ

    東日本大震災は巨大地震や津波により日本にこれまでにない重大な災害をもたらした。その被害規模は大きく、9年が経とうとしているが、いまだ被害者は仮設住宅に住んでいる人が多く存在する。その被災者を救うための法律である被災者生活再建支援法があるが、住宅被害を基礎に世帯ごとの金銭給付のみであり、これだけでは不十分であると考えられる。追加の法的支援が行われ、福島原発周辺の除染が完了し、元々住んでいた人が戻って定着するまでを保証する制度を期待する。

    また、福島の原発事故のようなことが二度と起こらないようにするため、日本におけるエネルギー政策・原発に対する法規制は大きく見直される予定である。特に福島原発においては他の原子力発電所とは別枠にて見直しされる方向であるとの案が示されている。リスクを早期に除去するための設備には、枠ではまった規制ではなく、合理的・効率的な規制が実施される。通常の原子力施設と同等の保安水準を求めないとの方針が示されている。今後、この法改正により二度と東日本大震災と同様の事案が起こらないことを願う。

    参考文献

    [1] 農林水産省 東日本大震災 地震と津波の影響 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1105/spe1_01.html

    [2] 復興庁 全国の避難者数http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-1/20190329_hinansha.pdf

    [3]日本弁護士連合会https://www.nichibenren.or.jp/document/assembly_resolution/year/2016/2016_2.html

    [4]新たな検査制度(原子力規制検査)の実施に向けた法令類の整備(第一段階)及び意見募集の実施等について

    In March 2011, the Great East Japan Earthquake occurred in Japan, causing serious disasters due to a massive earthquake with a magnitude of Mw 9.0 and a maximum seismic intensity of 7, and a tsunami that occurred across a wide area on the Pacific coast of Honshu from the coast of Iwate Prefecture to the coast of Ibaraki Prefecture. The total number of dead and missing is 25,949. The area flooded by the tsunami was 561 km2 (approximately nine times the area inside the Yamanote Line) in six prefectures, including Miyagi and Fukushima. The government estimates that the damage caused by the Great East Japan Earthquake, which left a huge scar on homes and industries as well as many precious lives, is 16 trillion to 25 trillion yen [1].

    Due to the earthquake and tsunami, the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant lost both external power and in-house power generation, resulting in a power outage and the inability to supply cooling water to the nuclear fuel.As a result, the nuclear fuel used for nuclear power generation suffered a core meltdown. I woke you up. As a result, a large amount of hydrogen was generated, which exploded, causing major damage to the building and releasing radioactive materials into the air. In particular, residents of surrounding towns such as Futaba, Okuma, and Namie towns in Fukushima Prefecture, where the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant is located, are still being forced to evacuate eight years later. As of March 11, 2019, there are still approximately 51,000 evacuees in 1,001 municipalities in 47 prefectures nationwide [2].

    Immediately after the earthquake, the “University East Japan Earthquake Reconstruction Support Legal Project” was launched to help evacuees, and legal support is being provided to the affected areas. Since March 2012, one year after the earthquake, we have continued to provide legal support to Namie Town, Fukushima Prefecture, which is located in close proximity to the TEPCO Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Through research on the precautionary principle, this legal support is intended to support consideration of issues such as how the government should respond to radioactive contamination disasters caused by nuclear power plant accidents, and issues related to restarting nuclear power plants. The Disaster Victims’ Livelihood Reconstruction Support Act is a fundamental law that supports the rebuilding of disaster victims’ lives.However, the livelihood reconstruction support system based on this law provides monetary benefits of up to 3 million yen to each household based on the damage to their home. There are some people who are unable to continue their livelihoods because the amount they receive is not enough to rebuild their lives. In addition, non-resident homeowners are not eligible for support, and there is the problem that support funds may not be distributed in cases where families are scattered and living as evacuation centers [3]. Therefore, this law alone cannot be said to be sufficient to support the reconstruction of disaster-stricken areas.

    What does regional revitalization mean?

    We believe that three points are essential for regional reconstruction after the earthquake: retaining local people, especially young people in the workforce, creating a new flow of people to rural areas, and promoting local industry. First, unless local people return and settle there, live there, and earn tax revenue from their labor, city and town services will not be available. And without the flow of tourists and new people coming to work, the region will not be enriched. It can be said that there is a need to reach out to people whose movements have been halted due to the nuclear power plant accident, provide support to the disaster-stricken areas, and promote regional reconstruction. Without industries that can be considered regional characteristics, the economy would not be able to function and people would not be able to settle there.

  • 原子力発電の危険性と地球温暖化現象のジレンマ

    原子力発電の危険性と地球温暖化現象のジレンマ

    はじめに

    社会学とは今起こりえる人間社会を科学的方法にて普遍的法則の解明を目指ざす学問であると考える。その名はフランスのオーギュ・コントにより生み出された。19世紀当時自然科学が物質的世界の物理法則を説明するように、形成する人間の社会も同じように説明ができるはずだと言う考えの元に成り立っている[1]。社会学にこれまで関わってきている多くの人々の考えを理解し、それを踏まえて現代社会における事態的な事象を挙げ、社会学の理解を深める。本論ではアンソニー・ギデンズ第5版の中からp949 問4にある考察を深めるための問い『温室効果を考えあわせたとき、原子力への移行は、とるに値する賢明なリスクだろうか』を考察した。

    未曽有の大災害東日本大震災

    我が国日本では2011年3月、未曽有の大災害東日本大震災が起こった。岩手県沖から茨城県沖までの本州太平洋側広域に発生、マグニチュードMw9.0、最大震度7の巨大地震や津波による重大な災害をもたらした。死者と行方不明者の合計は2万5,949人。多くの尊い命とともに家屋や産業に大きな傷跡を残した東日本大震災の被害規模は、16兆~25兆円にのぼると日本政府は試算している。地震と津波によって福島第一原子力発電所が外部電源、自家発電ともに消失、停電し、核燃料に冷却水を供給できなくなり、その結果、原子力発電に使用されていた核燃料が炉心溶融(メルトダウン)を起こした。それによって、大量に発生した水素が爆発して建屋は大破し、放射性物質が空気中に放出された。特に福島第一原子力発電所が位置する福島県双葉町、大熊町、浪江町など周辺町民は8年たった今でも避難を強いられている。2019年(平成31年)3月11日現在、避難者は全国47都道府県1001の市区町村に渡り、いまだ約5万1千人存在する[2]。結果として原子力は日本と言う1つの国家に大きなダメージを与えた。

    エコロジーとテクノロジーの共存

    そのようなことが起こったのになぜ原子力は必要なのか。原子力の危険性は過去のソビエトのチェルノブイリ原発のような事故で目にしていたはずであるのに事故は起こってしまった。今後起こり得る天災・人災のリスクを防げるのか?原子力以外の他の方法に代替できないのか?など疑問が生まれる。人の生活、科学技術の発展にはエネルギーは必要不可欠であるが、化石燃料による火力発電では温室効果ガスを発生させ、世界各地に異常気象をもたらす。これから述べるが、温室効果ガス抑制を考えるエコロジーと科学技術・近代化を支えるテクノロジーの共存は必須である。今後の温暖化現象を抑えるための原子力の必要性、移行した場合のメリット・デメリット、原子力のリスク回避策について事例をいくつか挙げた。

    温暖化現象が人類に与えるリスク

    温暖化現象は地球に様々な影響をもたらす。よく言われているのが北極・南極の氷が解け、海面上昇が起こりツバルを始めとする島国が海の中に沈んでしまう事象。また、熱波などの異常気象を頻発させ、それにより干ばつや山火事が起こり、砂漠の拡大につながる。これは世界の作物収穫量を減少させ、食糧安全保障に悪影響を及ぼす恐れもある。温暖化により太陽から降り注ぐ赤外線が地球の地表に当たり温められるが、通常その一部は地球の外に排出される。しかし、温室効果ガスが増えると赤外放射が滞り、地球の温度が下がりづらくなってしまう。温室効果があるガスとしては二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなどがある。例えば、二酸化炭素は発電の際に石油、原油といった化石燃料の燃焼とセメント生産及び森林伐採などの土地利用の変化により増加が起こっている。図に大気中における二酸化炭素の世界平均濃度を示した。

    図 大気中における二酸化炭素の世界平均濃度

    気象庁HPよりhttps://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/tour/tour_a2.html

     図を見ると世界平均の二酸化炭素濃度は年々増加しているのが分かる。1985年の二酸化炭素濃度は345ppmであるが、2019年11月では410ppmに迫っている。世界の人口は2015年で72億人、2050年では97億人に迫るという[3]。そうなると必然的に人口増に対応した食料の確保が必要となる。FAO国連食糧農業機関によると2050年には、この97億人の人口の食料を賄うには現在の食料生産量を170%にしなければいけないという[4]。温暖化の影響で2020年までにアフリカの一部の地域の灌漑などで水の制御ができない降雨依存型農業での農作物収穫量が50%程度減少するという予測もある[5]。そうなると食糧難による飢餓が発生する。また、世界的な食糧難に陥れば巡って我が国においても食糧コストが増加する懸念がある。国連が2019年8月8日に発表した「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の気候変動が土地利用にもたらす影響に関する報告書では地球の平均気温が、今後2℃以上の幅で上昇すれば肥沃だった土地は砂漠となり、永久凍土地域に構築されたインフラも破壊されて、干ばつや洪水などによって食料の栽培と生産を脅かすと警告している。その上で、2050年までに世界の穀物価格は最大23%(中央値は7.6%)上がる可能性を指摘している[6]。温暖化現象が起こると食料生産量が減少、価格も上昇し、世界的な食糧難の懸念がある。温暖化現象は地球に様々な影響をもたらすと予測されている。

    原子力発電のメリット・デメリット

    原子力発電は日本では2011年の事故以来リ一時非稼働となったが、温室効果ガスを発生が少ないクリーンなエネルギーだと言われている。日本は世界の主要国と比べエネルギー自給率が低く9.7%となっている。その発電に必要なエネルギー資源(石油、石炭、天然ガス、ウランなど)のほとんどを海外からの輸入に頼っている。人が生活するためにエネルギーが必要であるが、現在主な発電方法の火力発電で使用されている石油・石炭は2018年時点での世界の埋蔵量を考えると今後50年ほどで枯渇すると言われている。そのため、代替エネルギーの取得が不可欠となる。安全でクリーンな代替エネルギーを考えると水力・地熱・風力・太陽光発電があるが、合わせても全発電力量のわずか1割ほどに留まっている。水力・地熱発電は新規開発の場所や発電に適しているかどうかの調査に長期間を有し、風力・太陽光発電は気候や自然環境に左右されやすいデメリットがある[7]。そのため、現時点ではエネルギー自給率とクリーンな代替エネルギー双方を考えると原子力発電は選択肢から外せない状況であると言える。下記に日本の電源構成別の発電電力量の推移を示した。

    原子力発電所稼働への影響

    グラフを見ると2011年の東日本大震災により原子力発電は減少し、2014年に一次ゼロとなっているが、2017年には再稼働している。再稼働には重大事故の防止策としてのチェック機能が働いている。例として、九州電力は特定重大事故等対処施設(特重施設)の完成が設置期限に間に合わないため、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)を停止すると正式発表。原子力規制委員会は電力会社に対し、「原発本体の工事計画の認可から5年」の完成期限の延長を認めないことを決めている[8]。特重施設は原発に航空機を衝突させるなどのテロ行為が発生した場合に、遠隔操作で原子炉の冷却を続けられる設備である。これにより今後は条件をクリアしなければ運用できない原子力発電の稼働が厳しい状況となっている。また、福島第一原子力発電所では、特に施設全体のリスク低減に必要な措置が求められる。発電所全体に対し実施計画を中心とした一体的な規制を実施する。通常の原子力施設と同等の保安水準を網羅的には求めないとの方針が示されている[9]

    今後に残された課題

    温暖化現象は海面上昇が起こりツバルを始めとする島国が海の中に沈み、干ばつや山火事が起こり、砂漠の拡大が世界の作物収穫量を減少させ、これから訪れる人口増に対応できず食糧安全保障に悪影響を及ぼす。温暖化を防ぐには温室効果ガスの発生を押さえなければならない。そこで、2015年フランス・パリで開催されたCOP21において採択された「パリ協定」がある。パリ協定は、歴史上初めて先進国・開発途上国の区別なく気候変動対策の行動をとることを義務づけた歴史的な合意協定である。そこで、日本は2030年度に2013年度比26.0%減の水準(約10億4,200万t-CO2)を守ると表明している[10]。日本だけではなく、これを各国が守ることでパリ協定の目標である世界の平均気温上昇を2.0度未満に(好ましくは1.5度以下)抑えることを達成することができる。その達成には様々な取り組みが必要であると考えられるが、効果的なのが化石燃料使用量を減らすことである。安全でクリーンな代替エネルギーである水力・地熱・風力・太陽光発電をできるだけ活用し、その割合を可能な限り上げることが必要である。また、地震や津波の自然災害に負けない、そしてテロ対策の特定重大事故等対処施設を備え、十分に安全であると判断された場合にのみ原子力発電を活用する。後に安全でクリーンなエネルギーで満たされ、温暖化が抑えられる世界を目指すための議論が進むことを望む。

    Sociology is considered to be a discipline that aims to elucidate the universal laws of human society that are occurring today using scientific methods. The name was coined by Auguste Comte of France. It is based on the idea that, just as natural science explained the physical laws of the physical world in the 19th century, it should be possible to explain the human society that forms it in the same way [1]. Students will understand the ideas of many people who have been involved in sociology, and based on that understanding, will identify current events in modern society and deepen their understanding of sociology.

    In March 2011, Japan experienced an unprecedented disaster, the Great East Japan Earthquake. The earthquake occurred in a wide area on the Pacific coast of Honshu, from the coast of Iwate Prefecture to the coast of Ibaraki Prefecture, and caused serious disasters due to a gigantic earthquake with a magnitude of Mw 9.0 and a maximum seismic intensity of 7, as well as a tsunami. The total number of dead and missing is 25,949. The Japanese government estimates that the damage caused by the Great East Japan Earthquake, which killed many precious lives and left a huge scar on homes and industries, is between 16 trillion and 25 trillion yen. Due to the earthquake and tsunami, the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant lost both external power and in-house power generation, resulting in a power outage and the inability to supply cooling water to the nuclear fuel.As a result, the nuclear fuel used for nuclear power generation suffered a core meltdown. I woke you up.

    参考文献

    [1] アンソニー・ギデンズ 社会学 第5版 而立書房 2015年 1. p.31 p.979

    [2] 農林水産省 東日本大震災 地震と津波の影響 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1105/spe1_01.html

    [3] ナショナルジオグラフィック2100年の世界人口は112億人、国連予測 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/080600214/

    [4] 国際連合広報センター https://www.unic.or.jp/news_press/info/33789/

    [5] 農林水産省 地球温暖化による食糧生産への影響 https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h19_h/trend/1/t1_1_2_01.html

    [6] 東洋経済 日本人は温暖化に伴う食料危機をわかってないhttps://toyokeizai.net/articles/-/298862

    [7] 東北電力HP https://www.tohoku-epco.co.jp/electr/genshi/safety/qa/q1.html

    [8] 福井新聞ONLINE 2019年4月24日 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/842004

    [9] 新たな検査制度(原子力規制検査)の実施に向けた法令類の整備等についてhttps://www2.nsr.go.jp/data/000279077.pdf

    [10] 外務省HP パリ協定 https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol150/index.html

    参考文献中の[2]~[10]は2020年5月6~8日にWeb上にて検索した閲覧結果を示した。

  • メディアが世論に与える影響は?

    メディアが世論に与える影響は?

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     テレビが一般家庭に普及した1960年代以降には、マスメディアは人びとに強い効果を与えるという強力効果論(Powerful Effects Theory)が現れた。この強力効果論は現在でも効果論研究の主流であるとされている1。強力効果説とも。マスメディアの影響は大きく、受け手に対して、直接的、即効的な影響を及ぼすという考え方の総称。「弾丸理論」、「皮下注射論」などとも呼ばれている。20世紀になって、大衆化した新聞・雑誌・ラジオなどの、暴力的なメディアや、性的なメディアが、受け手を暴力的にしたり性的にしたりするという「強力効果説」の発想が、大衆的な通念として流通してきた[2]。しかし過去の実証的研究で裏付けが取れたことはない。

     1973年にElisabeth Noelle-Neumannの沈黙の螺旋理論は世論と人びとの意見表明についての理論である。見かけ上の多数派意見とは異なる意見を持つ者は、周囲の人びとから孤立することを恐れて発言することを避ける。実際には「少数派意見」を持つ者が多く、「多数派意見」を持つ者が少なかったとしても、少数が声を大きくして「多数派意見」を述べる。見かけ上は「多数派意見」が多いように見え、「少数派意見」を持つものは沈黙しているために人数が少ないように見える。結果、「少数派意見」を持つ者はサイレント・マジョリティとなる。サイレント・マジョリティの意見である「少数派意見」が表立って明らかにされないために、これと異なる意見である「多数派意見」の世論はますます増大し、サイレント・マジョリティはますます孤立を恐れ、沈黙を続けていく。サイレント・マジョリティの沈黙がさらに続くと、また「多数派意見」の世論が増大し、サイレント・マジョリティは真の少数派へとなっていくというモデルである。この世論とはマスメディアによって公開された意見(public made by opinions)を指す。人々が「多数派意見」を世論であると認識する指標は、マスメディアが報じているか否かで決定されるものである。以上が沈黙の螺旋理論の概要である。

     中央の螺旋のように「少数派意見」を持つ者が沈黙することと、「多数派意見」を持つ者が意見表明すること、それぞれが増大していくのには2つの背景がある。1つはマスメディアが「多数派意見」を長期間にわたり取り上げること、つまりマスメディアによる「多数派意見」の持続的提示であり、もう1つは周囲の人びとに「少数派意見」支持と表明する者が減少することである。これら2つの背景により、世論は「多数派意見」であると次第に人びとに認知されていくようになる。つまり、世論と反対の意見を持つ人たちは沈黙してしまうので、世論と同じ意見を持つ人と、反対の意見を持つ人が実際には同じ数だけ存在あるいは、たとえ反対の意見を持つ人がより多くいたとしても、見かけ上は世論と同じ意見を持つ人たちのほうが反対の意見を持つ人たちよりも多く存在するように見えてしまうのである。

     主にテレビの影響力に注目し、「テレビ視聴の反復性や非選択性により、テレビは社会において何が現実であるかという共有された現実感覚を『培養』していく」(培養効果)と考え、現実認識への影響を明らかにするための分析。ガーブナーにより提唱され、実証的研究がすすめられた。例えば、テレビでは現実社会に比して多くの暴力シーンが描かれているが、視聴者の現実認識について分析してみると、テレビの視聴時間が長い人は「暴力に巻き込まれる頻度」について、より高く見積もる傾向があると指摘されている3

     立憲民主党は2021年10月の第49回衆議院選挙で改選前の109議席を96議席へと13議席減らした「敗北」をうけて、枝野幸男代表が辞意を表明、福山幹事長も辞意を表している。他方、対照的に改選前276議席を261議席へと15議席を減らした自民党はまるで「勝利」したかのごとき扱いである。開票速報、そして翌、翌々日の大新聞、テレビ局の報じ方に、疑問を感じる方は少なくなかったのではないだろうか。衆議院選挙後、またしてもマスメディアによって、「自公勝利、維新躍進、立憲民主党大敗、野党共闘失敗」といったマス・イメージが形成されたようであるが、それはこの総選挙の実態を本当にきちんと表しているといえるのだろうか4。確かに野党ではなく、与党が議席を伸ばしたわけでもなく、減らしたにもかかわらずこの結果でメディアが報じているのは違和感があると言える。この世論とはマスメディアによって公開された意見により、人びとが「多数派意見」を世論であると認識している例であると言える。

    参考文献
    1.
    効果論研究史における限定効果論と強力効果論の関係の在り方
     ―パーソナル・コミュニケーションの扱われ方の違いに着目して― 中林
     https://digital-narcis.org/information_society/vol12/vol_12_04_pp_33-nakabayashi.pdf

    2.Noelle-Neumann, Elisabeth, 1973, Return to the Concept of Powerful Mass Media, Studies of Broadcasting, No.9, pp.67-112. 情報社会試論 Vol. 12 (2011) 38

    3.中村功「テレビが視聴者の現実認識に与える影響 : ワイドショー等,番組タイプ別の培養分析」『松山大学論集』第10巻第3号、松山大学学術研究会、1998年8月、 133-162(p.144)

    .マスコミの情報操作にだまされるな!「与党危機」の事前予想との落差がつくった自民党勝利ムード!第49回衆議院選挙・自民は15議席減でも「勝利」なのか!?マスメディアは選挙中・選挙後何を報じていたのか!? 2021.11.5

  • 民主主義の移り変わり

    民主主義の移り変わり

    はじめに

     民主主義とは国民が主権を持つ国家体制である。国民が重要な決定権を持ち、国民が選挙権を持って代表を選び、憲法改正・重要な法改正などでは国民投票も行われる。民主主義の考え方は古代より存在し、古代ギリシアの自由民による政治参加が認められていた。近世ヨーロッパを始めとする国家では絶対君主を中心とする体制(君主制)が敷かれていた。そこで、彼らは自ら被支配者たる地位を脱して、政治的自由の獲得を望むようになる。この傾向は17世紀のイギリス革命、また18世紀のアメリカ合衆国建国として現われた。1789年に起ったフランス革命はその最も強力表現である。歴史の新しい方向を決定させ、これは近世後期の転換点と言える。近代まで選挙権は一定の税金を納めている者、貴族など特権階級に与えられていた。現代では民主主義制を取る多くの国である年齢に達すれば選挙権が与えられる普通選挙が普及している。

    近世の民主主義について

     近世初期はいわゆる絶対主義の時代であった。すでに15・6世紀以来人々の間に自由の意識がめざめていたが、18世紀末まではなお旧時代の遺制が種々の面に残っていて人間の生活をしばっていた。政治の上では絶対君主を中心としてそれと結託した貴族・僧侶を支柱とする体制が厳存し、一般庶民はなんら政治上の発言権がなかった。しかるに近代産業のめざましい発達は次第に富裕で教養の高い市民階級を生み出し、彼らは自ら被支配者たる地位を脱して、政治的自由の獲得を望むようになった。この傾向は17世紀のイギリス革命として、また18世紀のアメリカ合衆国建国として現われた。しかも1789年に起ったフランス革命こそは,その最も強力かつ徹底的な現われであって,歴史の新しい方向を決定したものであるから、これを近世後期の出発点に置くことは至当である。

     フランス革命によってアンシャン・レジームという言葉が創出された。1788年、貴族身分の1パンフレット作者によって用いられたのが初出とされる。1789年の春の選挙は、フランス国内の3つの身分の代表者が議論をする場として、全国三部会を中心とした新体制が樹立された。新たな夜明けが始まり、これ以前の体制を「以前の体制」として言及するものが現れたのである。この旧来の統治が崩壊するにあたって、1788年夏に頂点に達した政治的抗争と論争の渦中で人々は、これらすべて恒久的な基盤に立って律するためには憲法が必要だと語り始め、結果として国民議会が1791年9月に憲法を生み出した。その憲法はアンシャン・レジーム下にあったすべての事柄に対する逆を体現すべく意図されたものとなる。それは、国民主権、法の支配、権力分立、選挙による代議制政府、広範に保障された個人の諸権利を高々と掲げるものとなった。

     フランス憲法前文の宣言では、『自由および権利の平等を害していた諸制度を最終的に廃止する。貴族身分、世襲的差別、封建体制、家産的な裁判、それらから由来するいかなる爵位称号も特権、そしていかなる騎士身分、あるいは、貴族の証明の必要、生まれの差別を含むようないかなる社団や勲位などもはや存在しない。フランス人に共通な法に対する特権も例外も存在しない。法は、自然権や憲法に反するような宗教的誓約も他のいかなる契約も承認することはない』とされる。

     これまでのアンシャン・レジームの下では聖職者や貴族という特権身分が存在し、多くの共同負担は免除されていた上に、すべての公的な権力と利益とが独占されていたが、歴史的な客観性は全く考慮されていない。そのため、基盤となるものが何もないのである。そのため、アンシャン・レジームに対する最初にして最大の擁護者としてエドマンド・バークがいる。彼の『フランス革命に関する省察』は、主にイギリスの自由とフランス革命によって宣言されたものと2つの自由は全く異なるという考えであった。イギリス人は過去から継承されてきた制度を信頼しているが、フランス人は継承してきたものを改革によってすべて捨ててしまっている。アンシャン・レジームに手を加えて改善していけばよかったのではなかったのか。また、彼は特に教会に対する攻撃に憤りを感じていた。バークは、教会は調和がとれた社会基盤の1つであり、革命は市民社会の基盤、1つの国家、宗教的権威を革命は破壊したのだという主張をする。アンシャン・レジームの時代は秩序と従順、所有の尊重、そして宗教への敬意の時代であった。

     アンシャン・レジームについて知識を深めるために本格的な学問的研究は1856年に開始された。アレクシス・ド・トクヴィルの『アンシャン・レジームとフランス革命』が創刊された年である。彼にとって革命とは、フランス社会に長いこと以前から伏在していたものが、ただ大きくなり完結させたものであると考えている。近代社会の流れは不可避的に平等へと向かう。危険なのはそれによって専制政治への道や自由の破壊への道が開かれてしまう点である。かつて中世では自由であったが、アンシャン・レジーム下では一部の特権階級への特権や免除が発生。それを水平にする革命が歴史そのものの推進力に他ならないという。また、トクヴィルは述べる。アンシャン・レジームがヨーロッパの大半が同一の諸制度を持ち、フランス特有というわけではない。ではなぜ、フランスで最初に起こったのか。彼によれば、特にフランスでは中央集権的統治によって、公的な発言権も義務という感覚も人々から奪われていた。盲目のその中で非現実な啓蒙思想の夢に魅了され既存の諸制度への軽蔑へと駆り立てられた結果であると述べている1)

    現代の民主主義について

     現代の民主主義の課題として日本の例について挙げる。日本は立憲民主主義であり、憲法の元に平等な普通選挙制であるため年齢に到達すると国民皆に選挙権が与えられる。それゆえに問題点も生まれている。1つ目に、まず、日本の衆議院選挙の投票率が低く、政治に無関心な層があること。次に、女性の国会議員が少ないことが挙げられる。

     1つ目の衆議院議員は任期が4年と短く、参議院に比べ優越的権限を持つより民意を反映しやすい特徴を持つ。その衆議院選挙ですら平成29年全体の投票率で、53.68%と選挙権を持つ国民の半分しか投票を行っていない2)。これは政治に対する無関心を示していると言える。誰が国会議員になっても日本の政治、経済は大きく変化しないだろう。自分の1票を投じても国はどうせ変わらないと言った考えである。世界を見てみるとベトナム、シンガポール、オーストラリアといった国々で軒並み90%を超えている。例えばベトナムはこの背景に、地域の投票率が地区の「成果」とみなされることがあるという。地区選挙管理委員会の人たちは投票率を限りなく100%に近づけるため、投票に来ていない人を家まで呼びに行き、代理投票をも促す。法律では有権者本人が投票をするべきだが、実際には家族などによる代理も存在する。また、投票に行かない人はシンガポールでは選挙権の剥奪。オーストラリアでは1600円ほどの罰金がある3)。このような理由から高い投票率を実現している国も存在する。

     2つ目の女性の国会議員が男性に比べて少ない。少ないことが意味していることは女性特有の出産・子育て問題などの民意が通り辛い状況になっている。出産後に受け入れてもらえる保育園がなく社会復帰がし辛い。このような問題を解決していくには女性の声を大きくする必要がある。しかし、日本の2019年の女性議員の割合は13.8%である。世界を見るとアメリカで23.8%、多いところではルワンダ55.7%やキューバ53.2%といった女性のほうが高い割合の国も存在する4)。解決策としてフランスではパリテ法という男女の国会議員立候補を同数とすることを法律で定めている。その結果、2018年では40%近い女性比率を生み出している5)。近代の民主主義を勝ち取ろうと団結した時代の波は現代社会ではもはや存在しないとも言えるのではないか。国民は普通選挙を獲得すると、人々はその年齢になれば選挙権を与えられることが当たり前になり、今では政治に関心を持たせようとするジレンマも生まれている。例えば、昨今のイギリスのEU離脱の国民投票のように、民主主義では一時の流れだとしても国民の過半数が手を上げればその道を選ぶことになる。この状況が民主主義を見直す大きな波となる可能性も捨てきれないと言えるのではないか。

    参考文献

    [1] ウィリアム・ドイル著/福井憲彦訳「アンシャン・レジーム」(岩波書店、2004年)

    [2] 総務省webサイト https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

    [3] ベトナムの選挙制度 https://life.viet-jo.com/howto/basic/357

    [4] Global Note https://www.globalnote.jp/post-3877.html

    [5] Nippon.com https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00409/

  • 北海道の中核事象「第一次産業がなぜ基幹となっているのか?」

    北海道の中核事象「第一次産業がなぜ基幹となっているのか?」

    北海道の中核事象「第一次産業がなぜ基幹となっているのか?」

    ① 人口とその特色

    北海道の人口は令和4年1月1日現在5,183,687人である。北海道の面積は83,457 km² (北方領土含む)となっており、近畿、中国、四国を足した面積と同等である。また、人口密度は全国平均の約5分の1、都市間距離が全国の2~3倍となっており、広大な地域に人口や機能が分散している地域構造を有している。道内主要都市の人口推移は小樽市、室蘭市など1970年以降減少傾向にある都市と石狩市、恵庭市、中標津町などのように1970年から2010年にかけて増加し、2040年にかけて現在の人口が比較的維持される傾向がある都市等、様々な状況が見られる。下記に令和4年住民基本台帳人口を示した[1]

    また、農水産業の1人当たり産出・生産額は地方部にて大きい傾向がある。北海道における農業産出額、漁業生産額の約8割を都市的サービスが日常的に享受可能な地域以外で担っている。北海道の農林水産業を主体とする地域は都府県と比べ、第1次産業に直接、間接に関わる人が多く、第1次産業が地域経済の基幹となっている。

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    [1]令和4年住民基本台帳人口・世帯数(令和4年1月1日現在)

    ②  農業と自然環境

     北海道の農業は広大な大地を活かし、稲作、畑作、酪農など大規模で土地利用型の生産性の高い農業を展開している。また、平成26年の農業産出額は1兆を超え、全国の1割以上を占めている。地形的に大きな広がりを持つ北海道は、気象や立地条件などの変化によって地域別に農業の特色がある。地域は大きく「道央地帯」「道東(畑作)地帯」「道東(酪農)地帯」「道南地帯」に分かれており、以下のような違いがある。

     道央地帯では北海道の中央部から日本海に注ぐ石狩川水系に沿った川上盆地や石狩平野の豊富な水資源と比較的温暖な夏季の気候を利用し、稲作の中核地帯が形成されている。また、札幌近郊・空知南部・上川では道外移出向けを中心とした野菜の生産が盛んな他、日高の軽種馬、上川・胆振の肉用牛など、地域の特色を生かした農業が展開されている。

     道東(畑作)地帯では十勝・オホーツク地方を中心とするこの地域は、広大な農地を生かした大規模な機械化畑作経営が行われており、豆類、てんさい、馬鈴薯、麦類を中心とした日本の代表的な畑作地域となっている。北見を中心とする玉ねぎは日本の最大の産地として道外に出荷されている。

     道東(酪農)・道北地帯では根釧、宗谷を中心とするこの地域は広大な丘陵と湿原を含む平坦地が大半を占めていますが、泥炭地などの特殊土壌が多く、気候が冷涼であることから草地が中心となっており、EU諸国の水準に匹敵する大規模な酪農が展開されている。

     道南地帯では後志・渡島・檜山地方の渡島半島と羊蹄山麓などからなるこの地域は、平坦部が少ないため経営規模は小さいが、道内では最も恵まれた気候に恵まれ、集約的な農業が行なわれている。米が各地で生産されている他、函館近郊では施設野菜団地が形成されており、畑作地帯は後志の羊蹄山麓が、果樹地帯は後志北部として発展している。

     稲作を中心に、野菜の栽培や種馬、肉用牛の飼育が盛んである。玉葱、ジャガイモ、てんさい(ビート)、小麦、小豆、トウモロコシ、かぼちゃと種類が豊富で全国上位を占めている。また、北海道の食料自給率は208%(平成26年)であり、日本の食料基地として、食の安定供給に貢献している。

    ③ 交通網と地域の分布、農業人口の減少

     北海道の交通ネットワークイメージ図を示した。北海道の高規格道路は昭和42年度から整備を始め、昭和46年度に小樽IC~札幌西IC間(延長24.3km)及び千歳IC~北広島IC間(延長22.9km)が初めて開通した。現在、北海道の高規格幹線道路の開通延長は1,015km、整備率56%である。

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     北海道では農家数の減少が続いており、平成2年で8万戸であった農家数は、平成24年で4万戸(全国の3%)となり20年で半減している。一方、意欲的な農家が積極的に離農跡地を取得して経営規模を拡大してきており、農家数の減少に反して2020年の全体の耕地面積は114.3万haと全国に占める割合は26.1%と微減に留まっている[3]。平均経営規模は23.4haと都府県の15倍となっており、全国1位となっている。

     農業の担い手の確保に向けた取組が進められている。例えば、新得町レディースファームは女性の就農・定住を目的として農業や農村に興味を持つ女性専用農業体験実習施設であり、個室10室を始め、加工室、厨房等を併設している。農家実習による実用的な農業技術、地域の農業改良普及センター等を中心とした専門家による農業技術の理論等を学習している。18期生までの修了生153人の就職のうち、農業関係は47人、うち22人は町内で就職している[2]という。

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    ④ 農業と生活文化(祭りや年中行事)

    北海道の歴史の3つの特徴

     北海道の歴史の特徴の一つは、本州・四国・九州が農耕社会になった後も、生活の基本を「狩猟・漁ろう・採集」とし、その暮らしが続いた。このことが、後の北海道の歴史を本州とは異なるものにしたと言える。

     二つ目の特徴は、現代につながるアイヌ文化の歴史の存在である。アイヌ文化は、縄文文化が徐々に変化した続縄文文化や擦文文化を受け継ぎつつ、交易や雑穀農耕など新たな要素を取り入れ発展してきた文化である。そして現代のアイヌ文化は神様(カムイ)への祈りを捧げる儀式や、文字による伝承ではなく口伝えで残された物語で、アイヌ民族の思想や世界観を今に伝えている。

     三つ目の特徴は、北海道開拓の歴史がある。明治時代になると士族の集団移住や屯田兵の開拓が行われ、本州各地から北海道に人々が入ってきた。それまで、本州から来た和人は主要な村に商人や僧侶がいたほかは、渡島半島南部の和人地に住んでいた。つまり、北海道の大部分はアイヌ民族が住む土地でした。開拓移住に際してはアイヌの人々の手助けもあり、良好な関係を築いた地域もあった。

    ⑤ 特産物と海外姉妹都市(国際交流)

    北海道の人口当たりの出国日本人数(出国率)は九州圏、北陸圏より低く、沖縄と同程度の水準である。国際線乗降客数でみると、北海道は地方圏では沖縄、九州圏に次ぐ水準である。

    画像4.png

    参考文献

    [1]令和4年住民基本台帳人口・世帯数 令和4年1月1日現在(2022.08.25閲覧)

    [2]北海道開発局 国土交通省https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/chousa/foodscatalog_03.pdf (2022.08.25閲覧)

    [3]出典:農林水産省「令和2年耕地及び作付面積統計」よりminorasu編集部作成

  • 公共用物はどのような特徴を持っているのか?

    公共用物はどのような特徴を持っているのか?

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     公共用物は公物の一つで行政活動を行うために必要とされ、公物とは所有権の帰属主体は無関係である国有・公有・私有を問わない。一般公衆の使用や行政主体の使用で意思表示をし、公の目的に供されるものであること。公用開始から公用廃止まで性質を維持し、公用廃止によって公物としての性質を失い、公法上の制限から解除される。また、電波や空気などの無体物は除き、有体物に限られる。動産である公立図書館の書籍や市民体育館のスポーツ施設、公立図書館や市民体育館といった建物などの不動産を問わない。

     除外するものとして、国または公共団体などの行政主体によるもので、例えば私人が私有地を道路用、公園用その他、公の目的に提供しても公物ではない。また、直接であって未開墾地、貸付地、現金、有価証券など間接的に行政主体の財政に寄与するものや納税のために物納された更地など使用されていないものは除く。ただし、公物法理論が念頭においているのは主として河川の流水を含めた不動産である。また、無体物である電波は国が管理し、その一部は国が直接公の目的に供しているが、公物法ができたときには人が支配できるものではなかったため、公物ではない。利用の結果、鉱物や石油などの資源は消費され、また、地下水は民法上、土地所有権に含まれるものであって公物ではないとされる。

     行政財産である公物の定義については国有財産法がある。国有財産法では第2条に国有財産の範囲を示している。国の負担において国有となった財産または法令の規定により、若しくは寄付によって国有となった財産である。不動産・船舶・浮標・浮桟橋及び浮ドック並びに航空機、またそれらの従物、地上権、地役権、鉱業権、それらに準ずる権利、特許権、著作権、商標権、実用新案権、株式、新株予約券、社債、地方債、信託の受益権や準ずる出資権と示される。また、地方自治法第238条4項でも示されている。そして、公の施設は地方自治法第244条第1項において「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」と定義される。また、次の5つの要件を満たすものと考え得られる。

     ①住民の利用に供するため

     ②当該地方公共団体の住民の利用に供するためのもの

     ③住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するため

     ④地方公共団体が設けるもの

     ⑤施設であることである。

     例えば、具体例としては体育館、運動場、プールといった体育施設、博物館、美術館、図書館、文化会館、公民館、コミュニティセンターなどの教育・文化施設、老人福祉施設、児童福祉施設、保育園などの社会福祉施設、公立病院、上下水道、工業用水道、バス路線などの公営企業である。公園、道路、河川、公立学校、公営住宅、墓地なども含まれる。地方公共団体は「公の施設」を設置する場合、賃借権、使用貸借権によって施設を住民に利用させる権原を取得した場合においても、これを公の施設とすることができる[1]。公共用物の定義を要約すると、①所有権の帰属主体は無関係、②国有・公有・私有を問わない。③一般公衆の使用や行政主体の使用で意思表示をし、④公の目的に供されるものであること。⑤有体物に限られる。また、⑤動産・不動産を問わない。⑥関節ではなく直接公衆の使用に解放されるとなる。

     行政財産は法律国有財産法では第2条で規定され、前述したが、国の負担において国有となった財産または法令の規定により、若しくは寄付によって国有となった財産である。不動産や船舶、採掘のための鉱業権、知的財産の特許権、著作権や株式や債券などとされ、地方自治法第238条4項でもその定義が記されている。その中で公共用物とするためには①所有権の帰属主体は無関係、②国有である。③一般公衆の使用や行政主体の使用で意思表示が必要、④公の目的に供され、⑤権利も権利書などの有体物であり、⑤動産・不動産を問わない。⑥直接公衆の使用に解放される場合に公共用物とできると考えられる。

     自然公物は河川や海辺などであり、河川は流水を含めて河川法により公共用物と定義されている。条件を確認してみると①所有権の帰属主体は無関係、②国有・公有・私有を問わない。③一般公衆の使用や行政主体の使用で意思表示をし、④公の目的に供されるものであり、⑤有体物であり、⑤動産・不動産を問わない。⑥直接公衆使用での解放される場合に公共用物となる。

     人工公物の例としては道路、公園、人工的に手が加えられた河川があり、道路は道路法第1条では『交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進する』とあり、①所有権の帰属主体は無関係②道路の国有・公有・私有は問わない。③一般公衆の使用や行政主体の使用で意思表示をしてある場合で、④公の目的に供されるものであること。⑤もちろん有体物である。⑤動産・不動産を問わない。⑥直接公衆の使用に解放される場合、前述したように私人が私有地を公の目的で供されるもの以外は公共用物と言えると考えられる。

    【参考文献】

    [1]第3章 自治体から寄せられた質問と回答 https://www.daiichihoki.co.jp

  • 【社会】ジェンダー革命

    【社会】ジェンダー革命

    ドキュメンタリー『ジェンダー革命』は性別と向き合う入門としての映像作品であると言える。本作はナショナルジオグラフィック制作の2017年のドキュメンタリーである。そのタイトルどおり「ジェンダー」をテーマとし、つまり、「性別」についてを題材にした専門的ドキュメンタリーである。作製はナショナルジオグラフィック、科学的な分析も映し出されるサイエンティフィックなスタイルとなっている。子どもがある日突然トランスジェンダーであることをカミングアウトした両親のエピソードや、インターセックスの赤ん坊を前にした両親のエピソードもあり、その動揺とそれとどう向き合ってきたかが赤裸々に語られている。男の子か女の子かと以前はその区別は単純だった。男の子は青を着て車で遊び、女の子はピンク色の服を着て人形で遊ぶ。男の子は外で運動、女の子は家にいる。でも今は違い、性別の概念は揺れている。それをある人は「ポリティカル・コレクトネスを意識しすぎている」と冷笑的に吐き捨てる。しかし、そんな発言をする人も含めて、「性別」というものを本当に理解しているのか。実は性別は思っている以上に複雑であると言える。

    この作品ではまず10年以上ジェンダーを研究をしている活動家のサム・キラーマンが説明してくれる。「ジェンダーブレッド”パーソン”」という概念を語りだし、「性同一性(gender identity)」「性表現(gender expression)」「生物学的な性(biological sex)」の3つの視点があることを解説している。この3つで成り立つジェンダーは、セクシュアリティ(性的指向;異性愛・同性愛・両性愛・無性愛など)とは無関係である。性別は生殖器での判断であると言う世間でまかりとおる認識を改めるところが最初のステップである。ジェンダーの決め手は外性器ではない。その議論で忘れてはならないのが「インターセックス」の存在だと本作では冒頭に述べられている。作中では、インターセックス当事者であるブライアン・ダグラスが実体験を語っている。一般的に母親のお腹の中に宿った胎児は最初は女性器を持っており、それがホルモンの影響で男性器に変化するかしないかという分かれ道となる。ブライアンは出生時は男の子で、ペニスや睾丸のようなものが発達したが、同時に子宮や卵巣も備わっていた。これは子宮の中でテストステロンを過剰に浴びた結果であり、「CAH(先天性副腎過形成症)」と診断される。

    それから、フォードの家族の事例が映し出される。この家のエリーは男の子として出生時は記録されていたが、いつまでも女の子のドレスばかりを着たがり、ついに4歳の誕生日パーティーのときに告げてくるのである。自分は「girl」だと。今はまだいいけど、思春期になったらと親は不安でいっぱいである。他にもさまざまな親の姿が映される。出生時に外性器の手術をしたこと、しなかったことを子に責められたらどうしようと悩む親。親は同性愛者なのかと疑い、パニックになり、一時的なものではないかと本格的なホルモン療法を施す。しかし、性同一性に悩む10代は精神的な苦痛を抱えていることも多く、自殺率も高い。作中でも、自分の子から自殺念慮を持っていたことを吐露され、そこで初めて事態の深刻さに気付いた親の姿が印象的である。「性別は適合するものではなく肯定するもの」という言葉のとおり、外性器や手術にこだわらない若い人も現れている。きっとこれからもジェンダー革命は続くのである。その先にどんな性別の在り方があるのかは私にもわからない。私もどんどん古い人間になっているが、なるべく若い人の新しい価値観に耳を傾ける必要がある。