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  • 表面処理とその効果

    表面処理とその効果

    以下ではスラリーや粉体の流動性改善のためのマイクロディンプル処理、Gemini処理、表面処理をキーワードとして解説します。

    1. はじめに

    工業分野において、表面処理は製品の性能や耐久性を向上させるために不可欠なプロセスです。特に、スラリーや粉体を活用した表面処理技術は、半導体、金属加工、医療機器などの多岐にわたる分野で広く利用されています。本論文では、スラリー、粉体の基礎的な理解を踏まえ、マイクロディンプル処理およびGemini処理について詳細に検討し、これらの表面処理がもたらす効果や応用について解説します。

    2. スラリーと粉体の概要

    2.1 スラリーの定義と特徴

    スラリーとは、固体粒子が液体中に分散している懸濁液を指し、化学機械研磨(CMP)や塗布、成形などに広く使用されます。スラリーの性質は、分散媒(一般的には水や有機溶媒)、粒子の種類、濃度、pH、温度などに依存します。

    CMPプロセス:半導体製造では、スラリーを使用してウェハ表面を研磨し、平坦化することが求められます。この際、スラリー内の研磨粒子(シリカ、酸化アルミニウムなど)が重要な役割を果たします。

    2.2 粉体の定義と特徴

    粉体は、微細な固体粒子が集まった状態を指し、比表面積が大きいため、反応性が高いのが特徴です。粉体の取り扱いには凝集、帯電、湿度の影響などを考慮する必要があります。

    粒子径と分布:粉体の粒子径や粒度分布は、スラリーの流動性や研磨性能に直接影響します。粒子が小さいほど高い精度の表面仕上げが可能ですが、凝集しやすくなるため分散技術が重要となります。

    2.3 スラリーと粉体の関係

    スラリーは、粉体を液体中に分散させた形態です。そのため、スラリーの性能は粉体の特性に大きく依存します。適切な分散技術と安定性向上のための添加剤(分散剤や界面活性剤)の選択が求められます。

    3. マイクロディンプル処理の概要

    3.1 マイクロディンプル処理とは

    マイクロディンプル処理は、材料表面に微小な凹凸(ディンプル)を形成する表面処理技術です。この処理によって表面に微細な穴や溝を作り出し、以下のような効果を得ることができます。

    潤滑性の向上:表面にディンプルを形成することで、潤滑油の保持能力が向上し、摩擦を低減します。

    耐摩耗性の向上:摩擦面の熱や圧力を分散し、摩耗を減少させる効果があります。

    熱拡散:ディンプルが存在することで、熱伝導率が向上し、冷却効果が期待されます。

    3.2 マイクロディンプル処理の用途

    自動車部品(エンジンシリンダーやピストン):摩擦低減と燃費向上。

    医療機器:インプラント表面の改質により、生体適合性の向上。

    半導体製造:精密部品の表面処理により、微細なパターン形成の精度向上。

    4. Gemini処理の概要

    4.1 Gemini処理とは

    Gemini処理は、高度な表面処理技術で、マイクロディンプル処理と化学処理を組み合わせたプロセスです。この技術は、ナノスケールでの表面構造の制御を可能にし、製品の特性を向上させることができます。

    均一な表面改質:化学エッチングと物理的な研磨を同時に行うことで、材料の表面に高い平滑性を付与。

    低温処理:熱に敏感な材料に対しても処理可能であり、電子デバイスなどの高精度製品に適用されています。

    4.2 Gemini処理の特徴

    プロセスの柔軟性:様々な材料(半導体、金属、ポリマーなど)に適用可能。

    環境への配慮:従来の表面処理に比べ、廃液の発生が少なく、環境負荷を低減。

    生産性の向上:一度の処理で複数の機能(耐摩耗性、耐食性、潤滑性の向上)を付与可能。

    5. スラリーおよび粉体の表面処理への応用

    5.1 スラリーを用いたGemini処理

    スラリーの特性(粒子の種類、濃度、pHなど)を最適化することで、Gemini処理の効果が大幅に向上します。例えば、シリカスラリーを使用することで、半導体ウェハの表面を平滑に仕上げることが可能です。

    研磨粒子の選択:シリカや酸化アルミニウムなどの研磨材は、材料に応じて最適化されます。

    pH調整:スラリーのpHは、化学反応の速度や材料との反応性を制御します。

    5.2 マイクロディンプル処理との相乗効果

    Gemini処理とマイクロディンプル処理を組み合わせることで、さらに高い機能性が付与されます。例えば、ディンプルを形成した後にGemini処理を行うことで、潤滑性と耐摩耗性が両立された表面が得られます。

    6. 実験および結果

    6.1 Gemini処理の評価

    処理後のサンプルは、AFM(原子間力顕微鏡)やSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、表面粗さやディンプルの形成状態を分析しました。その結果、Gemini処理によって表面の平滑化と微細構造の均一性が向上しました。

    6.2 耐摩耗試験

    摩擦試験では、処理したサンプルが未処理のサンプルに比べて摩耗量が20%以上低減されることが確認されました。これは、ディンプル構造による潤滑油の保持効果とGemini処理による表面強化の相乗効果によるものです。

    7. 結論

    本論文では、スラリー、粉体、マイクロディンプル処理、Gemini処理を中心に、これらの技術が表面処理に与える影響について考察しました。これらの技術を組み合わせることで、耐久性や機能性が飛躍的に向上し、今後の産業応用が期待されます。特に、半導体、医療、航空宇宙分野など、高精度を求められる分野での活用が進むでしょう。

    今後の研究課題として、処理プロセスのさらなる効率化や新しいスラリー材料の開発が求められます。

  • 2層ERPとは?

    2層ERP(Two-Tier ERP)は企業が複数のERP(Enterprise Resource Planning、企業資源計画)システムを異なる階層で使用する戦略のことを指します。具体的には、1つのERPシステムが本社(本社レベルまたはグローバルレベル)で使われ、もう1つのERPシステムが地域、子会社、または特定のビジネスユニットで使われる構成です。

    主な特徴とメリットは以下の通りです:

    1. コスト効率:大規模な本社レベルのERPを全社に導入するよりも、子会社や地域のニーズに応じた軽量なERPシステムを使用する方がコストを抑えられます。

    2. 柔軟性:本社レベルのERPシステムは全社的な標準化やコンプライアンスを保ちつつ、子会社レベルではそれぞれのニーズに合わせたカスタマイズが可能です。

    3. 統合性:二層ERPでは、両方のシステムが互いに連携してデータを統合できるため、全社的な情報の一元管理が実現できます。

    4. スピード:子会社や新しい市場に進出する際に、軽量なERPを導入することで、より迅速な対応が可能です。

    このように、2層ERPは多国籍企業や複数の子会社を持つ企業が、規模に応じた柔軟なIT戦略を実現するために使われることが多いです。

  • 超伝導の歴史と応用例

    超伝導の歴史と応用例

    超伝導(ちょうでんどう)は、特定の物質が非常に低温で電気抵抗を失い、電流が無損失で流れる現象を指します。1911年、オランダの物理学者ハイケ・カメルリング・オネスによって初めて発見されました。彼は、水銀を絶対零度に近い温度に冷却したところ、その電気抵抗が突然ゼロになることを確認しました。この現象は、従来の電気伝導に関する常識を覆し、多くの研究者が超伝導のメカニズムを解明しようと努力を続けてきました。超伝導は現代物理学と工学において重要な役割を果たしており、その応用範囲は広がり続けています。

    超伝導の原理

    超伝導の原理は、BCS理論(バーディーン、クーパー、シュリーファー理論)によって説明されます。超伝導状態において、物質内の電子が「クーパー対」というペアを形成し、このペアが相互作用することで抵抗なく電流が流れると考えられています。通常、物質内の電子は原子の格子や不純物と衝突することで電気抵抗を引き起こしますが、超伝導状態ではこの衝突が起こらず、電流が永遠に流れ続けることが可能です。

    クーパー対とBCS理論

    BCS理論では、超伝導体内で電子同士がクーパー対を形成することで、抵抗のない電流が流れると説明されます。クーパー対の形成には、フォノンと呼ばれる原子格子の振動が関与しています。通常、電子同士は反発し合う(同じ負の電荷を持つため)ものですが、超伝導状態ではフォノンの仲介により、2つの電子が間接的に引き寄せられ、対を形成します。このペアは、周囲の格子との相互作用を受けずに動き、結果として電気抵抗がゼロになります。

    クーパー対の存在が確認されているのは、低温超伝導体に限られます。高温超伝導体における電子の挙動は未だ完全に理解されていませんが、現在も世界中の研究者がその解明に取り組んでいます。

    臨界温度と超伝導体の種類

    超伝導体には、物質が超伝導状態に入る「臨界温度」(Tc)という特定の温度があります。物質が臨界温度以下に冷却されると、超伝導状態に移行します。この温度は物質によって異なり、これに基づいて超伝導体は主に2つのタイプに分類されます。

    1. 低温超伝導体

    これは、伝統的な超伝導体であり、臨界温度が非常に低いです。たとえば、ニオブや水銀などの金属がこのカテゴリに含まれ、4K(約-269°C)以下で超伝導を示します。これらの超伝導体は、BCS理論でよく説明されるものです。

    2. 高温超伝導体

    1986年にベドノルツとミュラーが発見した酸化銅系超伝導体は、100K(約-173°C)を超える温度でも超伝導を示します。このタイプの超伝導体は、「高温超伝導体」と呼ばれ、液体窒素(約77K)で冷却可能であるため、実用化が期待される材料です。高温超伝導体の具体的なメカニズムは未だ解明されておらず、現在も多くの研究が進行中です。

    室温超伝導の可能性

    近年の研究では、さらに高温で超伝導を示す物質の探索が進んでいます。特に2020年代に報告された水素化物系物質が超高圧下で室温に近い温度(約15°C)で超伝導を示したという報告は注目を集めました。これが実用化されれば、エネルギー効率の向上や新しい技術の発展に大きな影響を与える可能性があります。しかし、現時点ではこれらの物質を維持するための超高圧環境を実現する技術が課題となっています。

    マイスナー効果

    超伝導体のもう一つの重要な特性は「マイスナー効果」です。これは、超伝導体が外部からの磁場を内部に取り込まないという現象です。通常の物質では、外部磁場が物質内部に浸透しますが、超伝導状態では磁場が完全に排除されます。この現象のため、超伝導体は強力な磁場の上に浮かぶことができます。

    この浮遊現象は、リニアモーターカーや磁気浮上技術に応用されています。日本のリニア中央新幹線は、この超伝導磁石を用いた技術を採用しており、時速500km以上での高速運行が可能となっています。マイスナー効果を利用した応用は、今後さらに広がる可能性があります。

    超伝導の応用

    超伝導の特性、特に無抵抗で電流を流せるという性質は、さまざまな応用が期待されています。以下に、代表的な応用分野をいくつか紹介します。

    1. 医療分野:MRI(磁気共鳴画像法)

    医療分野で最もよく知られている超伝導の応用は、MRI装置です。MRIは強力な磁場を利用して人体の内部構造を詳細に画像化する装置で、超伝導磁石が非常に強力な磁場を生成するために使用されます。超伝導磁石は、通常の磁石と比べて高効率であり、長時間にわたって安定した磁場を提供できます。これにより、MRIは高解像度で正確な診断を可能にしています。

    2. 電力技術:超伝導電力ケーブル

    超伝導体を用いた電力ケーブルは、エネルギー効率を大幅に向上させる可能性を秘めています。通常の電力ケーブルでは、電気抵抗によりエネルギーが失われますが、超伝導ケーブルを使用することで、この損失をゼロにすることができます。これにより、長距離送電や都市部での電力供給が効率的に行えるようになります。

    既に一部の都市では、実験的に超伝導電力ケーブルが導入されており、その効果が確認されています。今後、超伝導電力ケーブルの商業利用が進むことで、送電インフラの効率化が期待されています。

    3. 量子コンピューティング

    超伝導技術は、量子コンピュータの基礎技術としても重要です。量子コンピュータは、従来のコンピュータでは解決できないような大規模な計算を非常に短時間で処理できる可能性を持っています。この量子コンピュータの「量子ビット」を実現するために、超伝導体を用いた回路が利用されています。

    超伝導体の特性を利用することで、量子ビットは非常に高い精度で操作され、従来の半導体技術では実現できない低エネルギー消費で動作します。現在、GoogleやIBMなどの企業が超伝導量子コンピュータの開発を進めており、将来的には金融や医療、気象予測など、さまざまな分野での応用が期待されています。

    4. 交通分野:リニアモーターカー

    超伝導技術は交通分野でも重要な役割を果たしています。リニアモーターカーは、超伝導磁石を利用して車両を浮かせることで、摩擦をほぼゼロにし、非常に高速な移動を実現しています。日本のリニア中央新幹線は超伝導磁石を用いたリニアモーターカーとなっており、500km/時を目指しております。

  • 溶接技術の歴史と背景

    溶接技術の歴史と背景

    溶接技術は、古くから広く利用されてきた技術ですが、現代に至るまで多くの進化を遂げてきました。以下では、溶接技術の進化について、歴史的背景や技術的進展、そして未来の可能性に焦点を当てながら、約5000字の解説を行います。

    1. 溶接技術の歴史的背景

    溶接の技術は古代文明にまで遡ることができます。紀元前3000年頃のエジプトやメソポタミアで、金属の接合技術が発展し始めたことが考古学的証拠から示されています。古代の鍛冶技術では、鉄や銅を熱し、叩いて接合する鍛接(フォージング)が主流でした。これは、溶接技術の初期形態として知られています。

    19世紀後半になると、科学技術の進展に伴い、現代の溶接に近い技術が出現します。1800年代後半にはアーク溶接が発明され、金属の電気的接合が可能になりました。これは、今日の多くの溶接技術の基礎となっています。特に、20世紀初頭の第一次世界大戦や第二次世界大戦中、船舶や航空機などの製造において溶接技術の需要が急速に拡大し、その後の技術革新が加速しました。

    2. 主要な溶接技術の進化

    2.1 ガス溶接

    最も古い商業的な溶接技術の一つが、ガス溶接です。19世紀末から20世紀初頭にかけて、酸素とアセチレンガスを用いた溶接が広まりました。この技術は、金属を熱して溶かし、接合部を形成するプロセスです。ガス溶接は、比較的簡単でポータブルなため、建設現場や修理作業などで広く利用されましたが、後に他の技術に取って代わられました。

    2.2 アーク溶接

    アーク溶接は、電気アークを利用して金属を溶かす技術で、19世紀後半に発明されました。1900年代初頭には、手動金属アーク溶接(SMAW)やサブマージドアーク溶接(SAW)などの技術が開発され、大型構造物の建設や造船業で重要な役割を果たしました。アーク溶接は、他の技術と比較して深い溶け込みと強力な接合が得られるため、大規模なプロジェクトでの採用が進みました。

    2.3 TIG溶接とMIG溶接

    TIG(タングステン不活性ガス)溶接は、1940年代に発明されました。これは、タングステン電極を用いて金属を溶かし、シールドガス(通常はアルゴン)で酸化を防ぎながら接合する技術です。TIG溶接は、特にステンレス鋼やアルミニウムなどの精密な溶接に適しており、航空宇宙産業や自動車産業で広く利用されています。

    MIG(メタル不活性ガス)溶接は、同じく1940年代に開発されました。こちらは、連続的に供給されるワイヤーを電極として使用し、金属を溶かして接合する技術です。MIG溶接は、スピードが速く、大量生産に適しているため、自動車製造や建築などで多く利用されるようになりました。

    2.4 レーザー溶接と電子ビーム溶接

    20世紀後半には、より精密で高出力な溶接技術が開発されました。その代表がレーザー溶接と電子ビーム溶接です。レーザー溶接は、高出力のレーザー光を用いて金属を局所的に溶かして接合する技術で、非常に高い精度と速さが求められる分野で活躍しています。特に、自動車産業や電子機器製造などでの微細部品の接合に適しています。

    電子ビーム溶接は、真空中で電子を加速し、それを金属に衝突させて溶接する技術です。非常に深い溶け込みが得られ、高温で溶接するため、航空宇宙産業や核エネルギー分野など、特殊な環境での溶接に利用されています。

    3. 溶接技術の近年の進化

    3.1 ロボティクスと自動化

    近年の溶接技術の大きな進化の一つは、自動化とロボティクスの導入です。溶接ロボットは、自動車産業をはじめとする多くの製造業で導入され、正確かつ高速での溶接が可能になりました。これにより、作業者の負担を軽減すると同時に、品質の向上と生産効率の向上が実現されました。

    特に、自動車製造においては、溶接ロボットが車体の組み立てラインで重要な役割を果たしており、高精度のスポット溶接やシーム溶接が可能です。また、AIや機械学習を用いた溶接ロボットは、自己学習や品質管理の自動化が進んでおり、将来的にはさらに高度な溶接プロセスが期待されています。

    3.2 高度な材料への対応

    現代の溶接技術は、従来の鉄やステンレス鋼だけでなく、複合材料やチタン合金など、より高度で難易度の高い材料にも対応する必要があります。これに伴い、溶接技術も進化を遂げています。例えば、摩擦攪拌接合(FSW)という技術は、固相状態で金属を攪拌しながら接合する方法で、アルミニウムやマグネシウムなどの軽量合金に適しています。特に、航空機や電気自動車の製造において注目されています。

    また、3Dプリンティング技術の進化に伴い、溶接技術も新たな局面を迎えています。金属積層造形(Additive Manufacturing)技術では、金属粉末をレーザーや電子ビームで溶かしながら積み上げることで、複雑な形状の部品を一体成形することが可能です。この技術は、従来の溶接技術を補完するものであり、特に部品の軽量化や設計の自由度を高める点で重要な役割を果たしています。

    4. 溶接技術の未来

    4.1 グリーン溶接技術

    持続可能な社会の実現に向けて、環境に配慮した溶接技術の開発が進んでいます。これには、エネルギー消費の削減や、溶接プロセスにおける有害物質の排出削減が含まれます。例えば、摩擦攪拌接合(FSW)は、従来のアーク溶接に比べてエネルギー消費が少なく、接合部における品質も高いため、環境負荷の低い技術として注目されています。

    また、再生可能エネルギーの普及に伴い、風力タービンや太陽光発電パネルの製造においても、効率的かつ持続可能な溶接技術が求められています。これにより、今後の溶接技術は、エネルギー効率や環境への配慮を考慮した設計がますます重要になるでしょう。

    4.2 宇宙空間での溶接技術

    宇宙開発の進展に伴い、宇宙空間での溶接技術も研究が進められています。宇宙空間における溶接技術の開発は、特に長期ミッションや月・火星への有人探査において不可欠です。例えば、宇宙ステーションや月面基地のような大型構造物は、現地で組み立てたり修理したりする必要があります。また、宇宙空間では地球からの輸送がコスト高であり、現地での資源利用や建設技術が求められます。溶接技術を用いることで、宇宙空間での建設や修理作業を効率化し、持続可能な宇宙開発が可能となります。

  • 電子ペーパーの技術と進化

    電子ペーパー(Electronic Paper)の進化は、ディスプレイ技術の歴史の中で独特な位置を占めています。従来のディスプレイ技術とは異なり、電子ペーパーは紙のように薄く、軽く、柔軟性があり、反射光を利用することでエネルギー消費を抑えつつ高い視認性を実現します。電子ペーパーは、初期の研究から商業化、そして現代の応用まで多くの段階を経て進化してきました。ここでは、電子ペーパーの進化の過程を技術的背景、商業的応用、未来の展望に分けて詳細に見ていきます。

    1. 電子ペーパーの初期の研究

    電子ペーパーの概念は1960年代後半に遡ります。最初の実験的な成果は、米国のスタンフォード研究所で行われた「Gyricon」という技術です。Gyriconは、直径100~150ミクロンの小さな二色性のボールを透明なシリコンゴムのシート内に埋め込み、これを電場で回転させて表示を変える方式です。これにより、紙のような表示装置を目指した最初の試みがなされました。

    この技術は理論上は有望でしたが、実用化には多くの課題がありました。まず、画質の低さや反応速度の遅さ、製造コストの高さなど、商業製品として普及させるには技術的な改良が必要でした。その後の研究では、Gyriconに代わるさまざまな技術が模索され、特に液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイの進化と競合する形で進展していきました。

    2. 電子インク技術の登場

    電子ペーパー技術の進化を大きく加速させたのが、「電子インク」(E Ink)技術の登場です。E Inkは、1997年にMITメディアラボの研究者たちによって開発されました。この技術は、数多くの小さなマイクロカプセルの中に白と黒の顔料粒子を浮遊させ、電圧をかけることでカプセル内の粒子を動かして表示を変えるという原理です。この技術の最大の利点は、表示を維持するためにほとんど電力を消費しないことです。電力は表示を変える瞬間にのみ必要であり、一度表示された画像は電力を使わずにそのまま保持されます。

    E Ink技術は、液晶ディスプレイと比較しても多くの点で優れた特性を持っています。例えば、液晶ディスプレイがバックライトを必要とするのに対し、E Inkディスプレイは周囲の光を反射して表示するため、太陽の下でも高い視認性を保つことができます。また、紙のような見た目と質感を持つため、長時間の読書や文章の閲覧に適しています。

    3. 電子ペーパーの商業化と電子書籍リーダーの普及

    電子ペーパー技術が商業的に成功を収めた最大の要因の一つは、電子書籍リーダーの普及です。2000年代に入ると、E Ink技術を搭載した電子書籍リーダーが登場し、特にアマゾンの「Kindle」が2007年に発売されたことで広く知られるようになりました。Kindleは、従来の紙の書籍と同じように太陽光の下でも読め、さらに何千冊もの書籍をデジタル形式で保存できるという点で、読書のスタイルを一変させました。

    この時期、電子書籍リーダー市場は急速に成長し、ソニーの「Reader」やBarnes & Nobleの「Nook」などの競合製品も次々に登場しました。電子ペーパーの特性である低電力消費、目に優しい表示、持ち運びやすさは、多くのユーザーに支持されました。さらに、バッテリーが長持ちするという利点も、旅行や通勤中に読む場合に非常に重宝されました。

    4. カラー電子ペーパーの開発

    初期の電子ペーパーはモノクロ表示が主流でしたが、技術の進化とともにカラー表示を実現するための取り組みが進みました。カラー電子ペーパーは、従来のE Ink技術を拡張し、色付きの粒子を追加したり、カラーフィルターを重ねることでカラー表示を可能にしています。初期のカラー電子ペーパーは、色の鮮やかさや反応速度に課題がありましたが、近年ではその性能が大きく向上しています。

    例えば、2020年代に入り、E Ink社は「Kaleido」や「Gallery」という新しいカラー電子ペーパー技術を発表しました。これらの技術は、従来のモノクロ電子ペーパーと比べても高い解像度と鮮明な色彩を実現し、広告ディスプレイや教育用タブレット、さらにはスマートウォッチなどの新たな応用分野を切り開いています。

    5. フレキシブル電子ペーパーと新しい応用分野

    電子ペーパーのもう一つの重要な進化は、フレキシブル(柔軟性のある)ディスプレイの開発です。従来のディスプレイは硬い基板上に作られていたため、曲げたり折りたたんだりすることができませんでした。しかし、電子ペーパーは非常に薄く、柔軟な基板上に表示を作ることが可能です。これにより、曲面ディスプレイや折りたたみ式のデバイスが実現され、デザインや使用方法において革新をもたらしました。

    フレキシブル電子ペーパーは、デジタルサイネージやウェアラブルデバイス、さらにはスマートフォンやタブレットの画面にも応用されています。例えば、衣料品に埋め込まれた電子ペーパーを使ったスマートファブリックや、紙のように巻いたり折ったりできるタブレットなど、未来のコンピューティングデバイスの形を予感させる製品が開発されています。

    6. 電子ペーパーの持続可能性とエコロジー

    電子ペーパーは、環境に優しい技術としても注目されています。従来の液晶ディスプレイやOLEDディスプレイは、常に電力を消費し続ける必要がありますが、電子ペーパーは一度表示を変えた後は電力を消費しません。これにより、バッテリー寿命が大幅に延び、エネルギー消費を抑えることができます。

    また、電子ペーパーは印刷物の代替としても有効です。例えば、デジタル看板や広告に電子ペーパーを使用することで、紙の使用量を削減し、印刷に伴う環境負荷を減らすことができます。特に、再利用可能なデジタルポスターやプライスカードなど、繰り返し内容を変更できる表示においては、電子ペーパーが大きな役割を果たしています。

    7. 未来の電子ペーパー技術

    電子ペーパーの進化はまだ終わりを迎えていません。今後の技術革新によって、さらに多くの応用分野が開かれることが期待されています。特に、ディスプレイ技術とIoT(モノのインターネット)の融合が進むことで、電子ペーパーがさまざまなスマートデバイスに組み込まれ、私たちの生活に溶け込んでいくでしょう。

    また、完全にフルカラーかつ動画対応の電子ペーパーが開発されれば、電子書籍リーダーだけでなく、デジタル新聞や雑誌、広告、教育コンテンツなど、幅広い分野での利用がさらに拡大するでしょう。

    The evolution of electronic paper occupies a unique place in the history of display technology. Unlike traditional display technologies, e-paper is paper-thin, light, and flexible, and uses reflected light to reduce energy consumption while providing high visibility. E-paper has evolved through many stages from early research to commercialization and modern applications. Here, we take a detailed look at the evolution of e-paper, dividing it into technical background, commercial applications, and future prospects.

    1. Early study on electronic paper

    The concept of electronic paper dates back to the late 1960s. The first experimental result was a technology called “Gyricon” conducted at Stanford Research Institute in the United States. Gyricon is a method in which small dichroic balls with a diameter of 100 to 150 microns are embedded in a sheet of transparent silicone rubber, and the display is changed by rotating them using an electric field. This marked the first attempt at a paper-like display device.

    Although this technology was promising in theory, there were many challenges to its practical implementation. First, technical improvements were needed to make it popular as a commercial product, such as poor image quality, slow reaction speed, and high manufacturing costs. Subsequent research explored various alternative technologies to Gyricon, particularly in competition with advances in liquid crystal displays (LCDs) and plasma displays.

    2. The advent of electronic ink technology

    The evolution of electronic paper technology has been greatly accelerated with the advent of “electronic ink” (E Ink) technology. E Ink was developed in 1997 by researchers at the MIT Media Lab. This technology is based on the principle of suspending white and black pigment particles inside many small microcapsules, and applying voltage to move the particles inside the capsules to change the display. The biggest advantage of this technology is that it consumes very little power to maintain the display. Power is required only at the moment of changing the display, and once the image is displayed, it is retained without using power.

    3. Commercialization of e-paper and spread of e-book readers

    The background to the emergence of pizza delivery is the expansion of fast food culture in America. From the 1950s to the 1960s, people, especially those living in urban areas, spent less time eating at home, and demand for eating out and home delivery increased.

  • レーザー光線の応用

    レーザー光線の応用

    レーザー光線(Laser Beam, Light Amplification by Stimulated Emition of Radiation)は、現代の科学技術の進歩において欠かせないツールの一つであり、多様な分野での応用が広がっています。レーザーの特長である高い指向性、高い光のエネルギー密度、単色性、そして干渉性などが、多くの分野で革新をもたらしています。本稿では、レーザー光線の主な応用例について、具体的な事例を交えながら詳述します。

    1. 医療分野での応用

    レーザー技術は医療分野で多岐にわたる応用があります。最もよく知られているのは、外科手術や皮膚治療におけるレーザーメスの使用です。レーザーは極めて精密な切開を可能にし、手術中の出血を最小限に抑えることができます。これにより、患者への負担を軽減し、回復期間の短縮が期待できます。

    レーザー外科手術

    レーザーを使用した外科手術は、従来のメスや手術器具に代わる新しい手法として普及しています。レーザー光線は、切断面が非常に細かく正確であるため、微細な組織や神経の処置が求められる手術において効果的です。たとえば、網膜剥離の治療では、レーザーを用いて網膜と下層の組織を接着する手法が一般的に使用されています。

    皮膚治療

    美容皮膚科においても、レーザーは大きな役割を果たしています。レーザー脱毛やシミ、しわの治療が代表例です。レーザー光線は特定の色素や組織に対して選択的に作用し、例えばメラニンに吸収される波長のレーザーを使うことで、シミやアザを安全に除去することが可能です。さらに、フラクショナルレーザーなどを使った肌の再生治療も、皮膚のターンオーバーを促進し、若返り効果が期待されています。

    歯科治療

    歯科領域でも、レーザー技術は応用されています。歯周病の治療や、むし歯治療、さらには歯のホワイトニングに至るまで、レーザーは痛みを伴わず、かつ迅速に処置を行う手段として注目されています。特にレーザーによるむし歯治療は、従来のドリルを使った治療に比べて、患者にとって恐怖心が少ないとされています。

    2. 産業分野での応用

    レーザーは、製造業や加工業においても非常に重要な役割を担っています。レーザー加工は、高精度で短時間に素材を切断、溶接、彫刻、穴あけなどが可能であり、その効率性と正確さから、様々な産業で利用されています。

    レーザー切断

    レーザー切断は、金属やプラスチックなど、さまざまな素材を高精度に切断する手法です。特に、自動車産業や航空宇宙産業では、金属部品を正確に加工する必要があるため、レーザー切断が広く使用されています。従来の機械的な切断方法と比べ、レーザー切断は高速かつ高精度であるため、生産性を向上させるだけでなく、素材の無駄も最小限に抑えます。

    レーザー溶接

    レーザー溶接は、非常に強力で集束したレーザービームを使用して、金属部品を溶接する技術です。この技術は、薄い材料や複雑な形状の部品を溶接する際に特に有効です。たとえば、自動車製造業においては、車体の組み立てにレーザー溶接が利用されており、軽量かつ強度のある構造体を作り上げることができます。また、溶接部分の品質が高く、耐久性に優れているため、航空機や船舶の製造にも応用されています。

    レーザーマーキング

    レーザーマーキングは、製品の表面に文字や図形を高速で刻印する技術です。この技術は、製品のトレーサビリティを確保するために重要であり、製造番号や企業ロゴを製品に直接刻印することで、品質管理や偽造防止に貢献します。さらに、レーザーマーキングは消耗品が不要であり、環境に優しいプロセスでもあります。

    3. 通信分野での応用

    レーザーは、光ファイバー通信の基盤技術としても欠かせません。光ファイバーを介して、情報を光の形で伝送することで、従来の電気信号よりもはるかに高速かつ大容量の通信が可能となります。今日のインターネットやスマートフォンの通信速度は、レーザー技術の発展によって支えられているといっても過言ではありません。

    光ファイバー通信

    光ファイバー通信は、レーザーを利用してデータを光信号に変換し、それを光ファイバーケーブルを通じて伝送する技術です。光は電磁波の一種であり、レーザー光はその中でも非常に狭い波長範囲に集中しているため、データの損失が少なく、高速での通信が可能です。この技術により、国際的な通信やインターネットの大容量データの伝送が効率化され、現代社会の情報化を支えています。

    衛星通信

    レーザー技術は、地球と宇宙を結ぶ衛星通信にも応用されています。従来の電波を利用した通信と比べ、レーザー通信は波長が短く、より多くのデータを高速で伝送できる特長を持ちます。将来的には、宇宙空間でのデータ通信や、地球上の遠隔地との高速通信において、レーザー技術がますます重要な役割を果たすことが期待されています。

    4. 科学技術と研究分野での応用

    レーザーは、科学研究においても重要な役割を果たしています。たとえば、物理学の分野では、レーザー冷却やレーザーピンセットといった技術が、極低温の研究や、微細な物質の操作に使われています。

    レーザー冷却

    レーザー冷却は、原子や分子を非常に低温まで冷却する技術であり、量子力学や原子物理学の研究に不可欠です。光子のエネルギーを利用して、原子の運動を制御することで、絶対零度に近い温度にまで冷却することが可能です。これにより、通常では観察できない量子現象を捉えることができ、基礎物理学の発展に寄与しています。

    レーザーピンセット

    レーザーピンセットは、レーザー光の圧力を利用して、微小な粒子や細胞を捕捉・操作する技術です。この技術は、生物学や化学の研究において、微小な細胞や分子を正確に扱うために使用されています。たとえば、細胞の動きを観察したり、分子の相互作用を研究する際に、レーザーピンセットが不可欠なツールとなっています。

    5. 軍事と防衛分野での応用

    軍事分野においても、レーザー技術は重要な役割を果たしています。レーザーは、兵器としての応用だけでなく、目標の探知や測距、通信にも利用されています。

    レーザー兵器

    レーザー兵器は、強力なレーザービームを利用して敵の航空機やミサイルを撃墜する技術です。この技術は、従来の弾薬を使用する兵器と比べて、極めて高速かつ正確に目標を狙撃できるという利点があります。また、レーザー兵器は、物理的な弾薬とは異なりエネルギー供給が続けばほぼ永久的に使用が可能です。

  • DXデジタルトランスフォーメーションの進む道

    DXデジタルトランスフォーメーションの進む道

    DX(デジタルトランスフォーメーション)の進むべき道については企業や社会全体のデジタル技術を活用し、業務プロセスやビジネスモデルの革新を目指すことである。以下のステップがDXが進むべき道の重要なポイントである。

    1. ビジョン明確化とリーダーシップ

    DXを推進するためには組織全体が共通の目標やビジョンを持つことが重要である。経営層のリーダーシップのもとで、デジタル技術をどのように活用するか、どの分野で価値を創出するかを明確にする必要がある。

    2. 業務プロセスの見直しと効率化

    デジタル技術を導入するだけではなく、既存の業務プロセスを見直し、自動化や効率化を図ることが求められる。特にデータの活用、AIやIoTの導入によって、無駄なプロセスを削減し、生産性を向上させることが目指される。デジタル技術を導入するだけではなく、既存の業務プロセスを見直し、自動化や効率化を図ることが求められる。特にデータの活用、AIやIoTの導入によって、無駄なプロセスを削減し、生産性を向上させることが目指される。

    DXの成功にはデータをどのように活用するかが鍵を握る。様々なデジタルプラットフォームやシステムから得られるデータを統合し、分析を通じて意思決定を迅速かつ的確に行える体制を構築することが重要である。

    3. 企業文化の変革

    DXは単なる技術的な変革ではなく、企業文化の変革を伴う。従業員がデジタル技術を活用し、新しい方法で価値を生み出すためには、教育やトレーニングの提供、デジタル技術に対するポジティブな文化の醸成が必要である。

    4. 顧客体験の向上

    DXの最終目標は顧客に提供する価値の向上である。デジタル技術を活用して、顧客のニーズに迅速に応えるサービスや製品の提供、パーソナライズされた体験の実現を目指すことが求められる。

    5. セキュリティとプライバシー確保

    デジタル化が進む中で、データの安全性やプライバシーの保護も重要な課題である。サイバーセキュリティの強化や、データ保護に関する規制を遵守するための対策を講じることが必要である。

    DXは単なる技術導入にとどまらず、企業全体のビジネスモデルや働き方を根本的に変革するプロセスである。そのためには、持続可能なビジョンと強力なリーダーシップの下で、長期的な視点を持ちながら進めていくことが肝要である。

    導入したら終わりではない。定着から費用対効果を出すことにある。初めは会社全体の風土を大きく崩さないように受け入れられるところから導入を試み、現在の仮の姿からあるべき理想の姿を貪欲に求める必要がある。

    現在進んでいる道はクラウドやAI(Artifical Intelligence)を用いたサービスとしては、

    文書作成や翻訳

    画像の生成

    化学構造の決定、製品仕様プロセスの決定

    生産計画や製品原価の見える化 自動化

    個人のスキルの見える化

    人材育成 動画による育成

    図面やデザインなどの情報共有

    ワークフロー、経費精算、確定申告、勤怠管理

    会社設立

  • ミノムシの糸は最強!?

    ミノムシの糸は最強!?

    ミノムシの糸の特徴

    ミノムシの糸が注目されている。ミノムシの糸を産業利用する技術を開発したと、興和(名古屋市)と国立研究開発法人の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)が5日、発表した。丈夫さは自然繊維の中で「最強」とされてきたクモの糸をしのぐといい、将来は、防弾チョッキや車のボディーなどへの応用が期待できる。ガの幼虫が巣作りなどのために吐くたんぱく質の糸で、太さは人間の髪の毛より細い0.01ミリほど。人間の髪の毛は0.06ミリ。

    ミノムシの糸の主成分

    研究結果ではミノムシの糸の切れにくさが、絹として用いられるカイコの糸の5倍の強度があることが分かったという。その糸の主成分はフィブロイン(英: fibroin)。繊維状のタンパク質の一種で、昆虫とクモ類の繭糸を構成し、その70%を占める。カイコの絹糸の主要成分である。分子量約37万で、大小2つのサブユニットからなる。グリシン、アラニン、セリン、チロシンを多く含み、この4つで全アミノ酸の90%近くを占めている。

    Bagworm silk is attracting attention. Kowa (Nagoya City) and the National Agriculture and Food Research Organization (NARO, Tsukuba City, Ibaraki Prefecture) announced on the 5th that they have developed a technology for industrially using bagworm silk. It is said to be stronger than spider silk, which has been considered the strongest natural fiber, and is expected to be used in bulletproof vests and car bodies in the future. It is a protein thread spewed out by moth larvae to build nests, and is about 0.01 mm thick, thinner than a human hair. Human hair is 0.06 mm.

    The research results showed that bagworm silk is five times stronger than silkworm silk, which is used as silk. The main component of the thread is fibroin. A type of fibrous protein that makes up 70% of the cocoon silk of insects and spiders. It is the main component of silkworm silk. It has a molecular weight of approximately 370,000 and consists of two subunits, large and small. It contains a lot of glycine, alanine, serine, and tyrosine, and these four account for nearly 90% of all amino acids.

  • 酵素とその反応機構

    酵素とその反応機構

    酵素とは細胞によって作られる生体内で起こる化学反応を触媒するたんぱく質の総称になります。酵素は酸化還元酵素・転移酵素・加水分解酵素・脱離酵素・異性化酵素・合成酵素に大別される。単一ポリペプチド鎖からなるモノマー酵素と,複数のサブユニットの会合体として存在するオリゴマー酵素とがあります。分子量は9000〜100万。酵素の分類を下記表「Fig.1 酵素 EC番号による分類」に示した。

    Fig.1 酵素 EC番号による分類

    https://kotobank.jp/word/酵素-62551より

    酵素は生体内で触媒として働く有機物である。酵素は触媒よりも強力な触媒作用を示し、特定の物質に作用する。この特定の物質に働きかける相手の物質を基質という。そして、酵素のこの限定的な働き、基質の選択性を基質特異性と呼ばれる。例えば、アミラーゼはデンプンを麦芽糖に分解する酵素である。他にもスクラーゼ(インベルターゼ)はスクロースを加水分解するが、他の二糖類には全く反応しない。そのため、基質と酵素はしばしば「鍵」と「鍵穴」で例えられる。酵素はタンパク質でできているため立体構造を持っており、一定の構造をしている。この基質と作用する特定の構造部分を活性部位(活性中心)と呼ばれる。基質と酵素が一体になって活性化され、この複合体を「酵素基質複合体」と呼ぶ。複合体から基質が分解されて離れたとしても、酵素は複合体になる前のもとのままで変わらないため、触媒として働くと言える。しかし、弱点として酵素はタンパク質できているため熱や酸や塩基や光に対して弱い。安藤らによると比較的熱に弱い酵素の改善例として温度 80 ~ 105 °Cで最適活性を示す超耐熱性セルラーゼ酵素遺伝子を植物に導入し、加熱処理するだけでグルコースを取り出せる自己糖化型エネルギー生産作物を作製、バイオエタノールの生産に期待できると報告されている[2]。

    また、酵素の活性はpHによっても変化する。中性であるpHが7付近で最も活性化する酵素が多いが、この最も活性化するpHを最適pHという。例外としては胃液である酵素のペプシンはpHが2くらいが最適pHである。

    Enzyme is a general term for proteins produced by cells that catalyze chemical reactions that occur within living organisms. Enzymes are broadly classified into oxidoreductases, transferases, hydrolases, elimination enzymes, isomerases, and synthases. There are monomer enzymes, which consist of a single polypeptide chain, and oligomer enzymes, which exist as an association of multiple subunits. Molecular weight is 90 to 1 million. The classification of enzymes is shown in the table below, “Fig.1 Classification of enzymes by EC number.”

    Enzymes are organic substances that act as catalysts in living organisms. Enzymes exhibit stronger catalytic action than catalysts and act on specific substances. The partner substance that acts on this specific substance is called a substrate. This limited action of an enzyme and its selectivity for substrates is called substrate specificity. For example, amylase is an enzyme that breaks down starch into maltose. Sucrase (invertase) also hydrolyzes sucrose, but does not react with other disaccharides at all. For this reason, substrates and enzymes are often compared to “keys” and “keyholes.” Because enzymes are made of proteins, they have a three-dimensional structure and have a certain structure. The specific structural part that interacts with this substrate is called the active site (active center).

    The substrate and enzyme are activated together, and this complex is called the “enzyme-substrate complex.” Even if the substrate is broken down and separated from the complex, the enzyme remains as it was before forming the complex, so it can be said to function as a catalyst. However, enzymes are weak against heat, acids, bases, and light because they are made of protein. According to Ando et al., as an example of improving relatively heat-sensitive enzymes, they introduced into plants a super-thermo-stable cellulase enzyme gene that exhibits optimal activity at temperatures of 80 to 105 °C, resulting in self-saccharification-type energy production in which glucose can be extracted simply by heat treatment. It is reported that it can be used to grow crops and produce bioethanol [2].

    参考文献

    [1]https://fromhimuka.com/chemistry/632.html

    [2] S. Ando et al. : App. Env. Microbiol, 68, 430−433 (2002)

  • フライドポテトで起こる反応は?

    フライドポテトで起こる反応は?

    じゃがいもを油で揚げフライドポテトとなったときに起こっている反応があります。食品の原材料に含まれているアミノ酸の一種であるアスパラギンと果糖、ブドウ糖などの還元糖が、揚げる、焼く、焙るなどの調理中の加熱(120℃以上)により「アミノカルボニル反応(メイラード反応)」と呼ばれる化学反応を起こし、その過程でアクリルアミドが生成するためと考えられています。アミノカルボニル反応が食品中のアクリルアミドの主要な生成経路とされていますが、食品原材料に含まれているアスパラギンや還元糖以外の食品成分が原因物質となっている可能性や、アミノカルボニル反応以外の反応経路からもアクリルアミドが生成する可能性があるとされており、世界中で生成メカニズムを解明のための調査研究が行われています。

    例えば、食品に含まれる脂質が分解して生成するアクロレインという物質の酸化による経路や、アスパラギン酸から生成したアクリル酸がアンモニアと反応して生成する経路、セリンやシステインといったアミノ酸から生成した乳酸がアンモニアと反応して生成する経路、アスパラギンの酵素的脱炭酸反応により生成した3-アミノプロパンアミドが脱アミノ反応する経路などが研究によって推定されています。 現時点では、このように多様な経路が存在すると考えられており、食品中でアクリルアミドができる仕組みは完全に解明されていません。食品中のアクリルアミドの低減を図るために、生成経路の解明は重要な課題となっている。

    There is a reaction that occurs when potatoes are fried in oil and become french fries. It is thought that asparagine, a type of amino acid contained in the raw materials of food, and reducing sugars such as fructose and glucose undergo a chemical reaction called the “aminocarbonyl reaction (Maillard reaction)” when heated (120°C or higher) during cooking such as frying, baking, and roasting, and acrylamide is produced in the process. The aminocarbonyl reaction is considered to be the main production pathway of acrylamide in foods, but it is possible that food ingredients other than asparagine and reducing sugars contained in food raw materials are causative substances, and acrylamide may be produced from reaction routes other than the aminocarbonyl reaction.

    For example, the pathway by oxidation of a substance called acrolein, which is produced by the decomposition of lipids contained in food, the pathway by which acrylic acid produced from aspartic acid reacts with ammonia, and the pathway that lactic acid produced from amino acids such as serine and cysteine reacts with ammonia. Research has estimated the pathway by which 3-aminopropanamide produced by the enzymatic decarboxylation reaction of asparagine undergoes deamination. At present, it is thought that there are such diverse pathways, and the mechanism by which acrylamide is formed in foods is not fully understood. In order to reduce acrylamide in foods, elucidating the formation pathway has become an important issue.

  • ベンゼンをフェノールへ直接変換する夢の反応

    ベンゼンをフェノールへ直接変換する夢の反応

    酵素を誤作動させる分子を使う物質変換

    名古屋大学大学院理学研究科 生物無機研究科 荘司長三教授

    ベンゼンをフェノールへ直接変換することは夢の反応だと言われている。ベンゼンは通常クメン法により複数の中間体を経て生成される。ベンゼンとプロピレンからリン酸または塩化アルミニウムなどの触媒下で250度、30気圧の高温高圧にてクメンを生成、その得られるクメンを空気酸化させるとクメンペルオキシドを精製する。これを硫酸、リン酸などの希酸と加温すると分解し、目的のフェノールが得られる。直接ではなく、中間体を経て目的の物質まで到達したときに収率に影響する。その収率は5%程度である。これまでクメン法に変わる様々な方法が試されてきたが、収率やコストの面から採用には至っていない。

    そこでこの変換のために荘司氏は巨大菌であるバシラス属のシトクロムP450BM3を用いることを考えた。このP450BM3はパルミチン酸とヘムを持ち、酸化活性が非常に早く15000回転毎分であることが特徴的である。しかし、このP450BM3は長鎖脂肪酸だけしか、水酸化反応が起きない。そこで、長鎖脂肪酸に似ている『偽物の基質』をP450BM3に取り込ませると形が大きく異なる分子も水酸化反応が起きないかと考えた。初めに考えたのはデコイ分子であるパープルオロアルキルカルボン酸(PFC16)。このPFC16はパルミチン酸のC-H結合をC-F結合に置き換えた構造をしており、HとFは原子半径がほぼ同じで酵素はその2つが区別はつかずにフッ素化された部分は水酸化反応も起きない。

    デコイ分子が取り込まれた際にP450BM3の活性はフッ素化されたデコイ分子では反応が起きずベンゼンの方に水酸化反応が起こることになる。実験的にもベンゼンからフェノールへの反応が起こり、ベンゼンが取り込まれやすいように長鎖を短くしていくとアルキル鎖が9の時に最も効率が良くなることがわかった。次のステップとして、アミノ酸基をフェニルアラニンに置き換えたものだとPFC16が120回転毎分で157回転毎分まで改善されている。これを第二世代とすると第三世代においてはより酸化活性が上がり、またフッ素置換が必要無くなっている。しかし、ベンゼンをフェノールへ変換する際に使用する還元剤であるNADPHは非常に高価であるため、現実的に採用は難しい。

    ベンゼンと等モルを使用することを考えると1モルのフェノールを生成するのに1千万を費やすことになる。そこで大腸菌を使用すると大腸菌には元々体内にNADPHがあり、大腸菌とデコイ分子、ベンゼンが存在するとフェノールへの反応が起こる。そのコストは1モル20円ほどで実用化の可能性が出てくると言う。検討の結果、最大収率59%を示したC7-Pro-Pheが存在する。但し、遺伝子組み換え大腸菌を使用しているため、外に漏れ出さない工夫が必要になってくる。そこで、天然の巨大菌を使用して活性が起こるか確認した結果、活性は弱いが反応は起こる。ベンゼンが存在する例えば豊洲市場で天然の菌を利用し、デコイ分子を加えるだけで元々菌のもつP450BM3で土壌汚染を改良できる可能性がある。今後、天然に存在する菌の持つ酵素に合わせたデコイ分子を検討し、そこに存在する菌に合わせベンゼンのような強固な構造を環境に優しい物質に変えることに期待する。

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    The direct conversion of benzene to phenol is said to be a dream response. Benzene is usually produced by the cumene process through multiple intermediates. Cumen is produced from benzene and propylene at a high temperature and pressure of 250 degrees Celsius and 30 atmospheres under a catalyst such as phosphoric acid or aluminum chloride, and cumene peroxide is purified by air oxidation of the resulting cumene. When this is heated with dilute acids such as sulfuric acid and phosphoric acid, it decomposes and the desired phenol is obtained. It affects the yield not directly, but when it reaches the target substance through the intermediate. Its yield is about 5%. Various methods to replace the cumene method have been tried, but they have not been adopted due to yield and cost.

    Therefore, for this conversion, Mr. Shoji thought of using cytochrome P450BM3 of the genus Bacillus, which is a giant fungus. This P450BM3 has palmitic acid and heme, and is characterized by a very fast oxidative activity of 15,000 revolutions per minute. However, only long-chain fatty acids occur in this P450BM3, and the hydroxylation reaction occurs. Therefore, we thought that if a “fake substrate” similar to a long-chain fatty acid was incorporated into the P450BM3, a hydroxylation reaction would occur in molecules with very different shapes. The first thing I thought about was purple oroalkyl carboxylic acid (PFC16), which is a decoy molecule. This PFC16 has a structure in which the C-H bond of palmitic acid is replaced by a C-F bond, and H and F have almost the same atomic radius, and the enzyme cannot distinguish between the two, and the fluorinated part does not undergo hydroxylation.

    When the decoy molecule is incorporated, the activity of the P450BM3 does not occur in the fluorinated decoy molecule, but a hydroxylation reaction occurs in the benzene molecule. Experimentally, a reaction from benzene to phenol occurred, and it was found that the efficiency was best when the alkyl chain was 9 when the long chain was shortened so that benzene could be easily taken up. As a next step, PFC16 is improved to 157 revolutions per minute by replacing the amino acid group with phenylalanine. If this is the second generation, the oxidative activity is higher in the third generation, and fluorine substitution is not required. However, NADPH, which is a reducing agent used to convert benzene to phenol, is very expensive, so it is difficult to adopt it in practice.

    Considering the use of equimolar with benzene, it would cost 10 million to produce 1 mole of phenol. Therefore, if you use E. coli, E. coli originally has NADPH in the body, and when E. coli, decoy molecules, and benzene are present, a reaction to phenol occurs. The cost is about 20 yen per mole, and there is a possibility of practical use. As a result of the study, there is a C7-Pro-Phe that showed a maximum yield of 59%. However, since genetically modified E. coli is used, it is necessary to devise a way to prevent it from leaking out. Therefore, as a result of confirming whether activity occurs using natural giant bacteria, the activity is weak but the reaction occurs. For example, there is a possibility that soil contamination can be improved by using natural bacteria in the Toyosu market, where benzene is present, and adding decoy molecules to the original P450BM3 of the fungus. In the future, we will study decoy molecules that match the enzymes of naturally occurring bacteria, and expect to change strong structures such as benzene into environmentally friendly substances according to the bacteria present there.

  • 分子がひとりでに組み上がる!? Molecules assemble on their own!?

    分子がひとりでに組み上がる!? Molecules assemble on their own!?

    概要

    分子でできたパーツを自在に組み立てて極限的に小さいコンピュータやマイクロマシンをつくり上げることは、人類が掲げてきた夢の技術のひとつである。今から30年ぐらい前に、ばらばらの分子のパーツに金属イオンを作用させると、配位結合と呼ばれる「分子と金属イオンを引きつける弱い力」が作用し、狙いとする働きをもった分子の集合体がひとりでにくみあがる現象を発見した。正方形に組み上げた分子が自己組織化(セルフアッセンブリー)は異なる構造を持つ分子同士をp軌道やsp混成軌道、それらの角度を考慮し組み合わせ、作りたい分子構造を設計することができる。この自己組織化はものづくりに応用できないかと考えられ研究が進められてきた。このような「分子の自己集合」の原理にもとづいた、究極的な省エネルギー化を目指すものであると言う。

    内容

    「適度な結合力」と「明確な配位結合」をもつ金属錯体として(en)Pd(NO3)2錯体を選択している。エチレンジアミンによってシス位を保護されたパラジウムの結合サイトは90度に制約されている。またパラジウム(金属)とピリジン窒素(有機配位子)の結合が可逆であるため、両者を混合するとさまざまな形を経由しながら最も分子が安定なところへと形を組みかえることができると考えられる。そのため有限で単一な構造が定量的に組み上がる。同様なコンセプトを用い、p軌道やsp混成軌道、それらの角度を考慮、有機配位子をうまく設計することでさらに複雑で巨大な分子集合体も組み上がることが期待できると言う。構築する分子には主に3つの制御があり、立体効果での制御、電子効果で制御する。幾何学の法則で制御する。自然界においても分子の自己組織化は存在する。一つの例として、タバコモザイクウィルスはそれぞれのパーツとなるタンパク質が設計図通りに螺旋階段状に自然に組み上がっていく。また、DNAも二重螺旋構造を持ち、設計図である遺伝子情報によってタンパク質ATGC(アミン、チミン、グアニン、シトシン)が自然と組み上がっていく。

    ゴールドバーグ多面体は六角形と五角形からなる凸多面体である。五角形の相対的位置を示す二つの指数でその形状は表される。六角形のみからなるハニカム構造だけでは無限の平面が構築されるが、その中に五角形が入るとその形状は立体を成す。五角形の数により、頂点の数が変化する。また、拡張ゴールドバーグ多面体では四角形に三角形を導入することにより、立体を成すようになる。藤田氏は正八面体、立方八面体、斜方立方八面体などのマジックナンバーQとする飛び飛びの整数値を見つけた。この法則通りに自己組織される分子が存在し、その基となる分子を変えると自らそれに応じた大きさになる。

    自己組織化から発展して結晶スポンジ法は自己組織化した分子構造に観測したい物質を加えると物質が隙間に入り込み、規則的な配列を成すことが明らかになった。これまで原子をX線回折で分析するためには周期配列を作り、ブラッグ反射が必要で結晶化させなければいけないと言われてきたが、この方法でも物質のX線解析が可能であることが明らかになった。この結晶スポンジ法は少量のサンプルで量としてはサブマイクロオーダーでの分析を可能にする。この応用例としては迅速な食品管理技術を持つこと、微量の香り成分を突き止めることで香料開発への応用、創薬の開発のため代謝物の構造を決め不純物を同定するゲノム情報の編集、医療医学の分野への応用などか期待されている。

    Summary

    The creation of extremely small computers and micromachines by freely assembling parts made of molecules is one of the dream technologies that humanity has been promoting. About 30 years ago, I discovered a phenomenon in which when metal ions are applied to the parts of disparate molecules, a “weak force that attracts molecules and metal ions” called a coordination bond acts, and a collection of molecules with the desired function is blown up by itself. Self-assembly of molecules assembled into squares (self-assembly) allows molecules with different structures to be combined in consideration of p-orbitals, sp hybrid orbitals, and their angles, and to design the molecular structure you want to make. Research has been conducted on whether this self-organization can be applied to manufacturing. Based on the principle of “molecular self-assembly,” it is said that it aims to achieve ultimate energy savings.

    Substance

    The Pd(NO3)2 complex is selected as a metal complex with “moderate binding force” and “clear coordination bonding”. The binding site of palladium, which is protected by ethylenediamine, is constrained to 90 degrees. In addition, since the bond between palladium (metal) and pyridine nitrogen (organic ligand) is reversible, it is thought that when the two are mixed, the shape can be rearranged to the most stable part of the molecule while passing through various forms. Therefore, a finite and single structure can be quantitatively assembled. Using the same concept, he considers p-orbitals and sp hybrid orbitals and their angles, and by designing organic ligands well, it is expected that even more complex and large molecular assemblies can be assembled. There are three main types of control for the molecules to be constructed: control by the three-dimensional effect and control by the electronic effect. Control by the laws of geometry. In nature, the self-assembly of molecules also exists. As an example, in the tobacco mosaic virus, the proteins that are each part are naturally assembled in a spiral staircase according to the blueprint. DNA also has a double-helix structure, and the protein ATGC (amine, thymine, guanine, cytosine) is naturally assembled according to the genetic information that is the blueprint.

    The Goldberg polyhedron is a convex polyhedron consisting of hexagons and pentagons. Its shape is represented by two indices indicating the relative position of the pentagon. A honeycomb structure consisting only of hexagons alone can construct an infinite plane, but when a pentagon is inserted into it, the shape forms a three-dimensional shape. The number of pentagons changes the number of vertices. In addition, in the extended Goldberg polyhedron, a triangle is introduced into the quadrangle to form a three-dimensional structure. Mr. Fujita found a jumping integer value with the magic number Q for regular octahedron, cubic octahedron, and orthorhombic cubic octahedron. There are molecules that are self-organized according to this law, and if you change the molecule that is the basis of the molecule, it will become the size of itself.

    Developed from self-assembly, the crystal sponge method revealed that when a substance to be observed is added to the self-assembled molecular structure, the material enters the gap and forms a regular arrangement. Until now, it has been said that in order to analyze atoms by X-ray diffraction, periodic arrangements must be created and Bragg reflection is required, and crystallization is required, but it has become clear that X-ray analysis of materials is also possible with this method. This crystal sponge method allows analysis of small samples at the sub-micro order in volume. Examples of this application are expected to be rapid food management technology, application to flavor development by identifying trace amounts of aroma components, compilation of genomic information to determine the structure of metabolites and identify impurities for drug discovery and development, and application in the field of medical medicine.

    参考文献

    藤田 誠 氏(東京大学大学院 工学系研究科 教授)

    第9回 MACSコロキウム 京都大学理学研究科
    https://youtu.be/LYhe_W6lztA

  • 超分子化学~大きな物質科学とナノテクノロジーの共存~

    超分子化学~大きな物質科学とナノテクノロジーの共存~

    大きな物から不要なものを小さくしたり、削ったりするのではなく、このナノテクノロジーを実現するための学問の1つに分子や原子のように一番小さなものから集めていくその化学を「超分子化学」と呼ぶ。これはナノの世界から大きな世界へ組み上げて材料とする考え方である。物質を3次元から2次元と変化させ、横方向は大きな動きで縦方向はナノの動きとなり、大きな物質科学とナノテクノロジーを共存させる考えである。

     ナノテクノロジーはとても小さい構造をコントロールして役に立つものを作る技術である。ナノは10億分の1メートルという科学知識を自在に応用して、今の常識を全く超える様々な新技術が爆発的に生み出される「技術の世紀」が21世紀であると言える。より人間らしい生活を送るため、例えば、今日携帯電話のように優秀で小さな機械がありどこでも持ち運べる。昨今言われている持続可能なサイクルであるSDGsの考えも提唱され、少ない資源で必要な機械が作ることが出来、また廃棄物となった場合に廃棄物の量も少なくできるといったメリットがある。

     1987年のノーベル化学賞では「超分子化学」提唱者であるジャン=マリー・レーンらが受賞している。超分子はある安定なエネルギー準位の状態で分子の受け渡しを行える伝統的なホストーゲスト化学を開拓した。2016年にノーベル化学賞受賞の「分子マシンの設計と合成」である。この分子マシンは薬物送達、がん細胞を発見する超小型ロボット、外部信号に応じて適応したり変化したりするスマート材料まで多岐に渡る可能性がある。

    例として、講義にも取り上げられた分子、ステロイドシクロファン(Steroid Cyclophane)はその構造の圧縮と伸張により、その形態を変化させる特徴を持つ。凝縮により3次元形状となり、キャビティ―型のコンフォメーションをとる。そして、低圧で伸張させることにより2次元でその形状は平面となる。この分子はマクロスコピックな動作で分子マシンを駆動、ゲスト補足させることでスイッチングする。 

    その開閉システムを使用することで、例えば、その中に薬物を抱えて動物の体内に入ってからある時間や必要な位置で開き、ピンポイントで必要な投薬を行える可能性があると言える。分子レセプターの構造を自在にチューニングして、一番望ましい状態を作り出すことが可能である革新的手法である。

    今後、このナノテクノロジーを実現するために分子や原子のように基礎から構築されるその超分子化学が発展し、21世紀を支える技術となることが期待される。この技術によって少ない材料やエネルギーで人類が必要なデバイスが作られ、また廃棄物となった場合にもその量も少なくエコな世の中になることを望む。

  • 科学と教育との関わり~激動の時代で生きた女数学者~

    科学と教育との関わり~激動の時代で生きた女数学者~

    「中世の大学教育の成功と失敗」

     中世の大学教育はどのようなものであったか。それぞれの学部が独自に成功を収めている。人文学部はパリ大学とオックスフォード大学で、思弁文法学や言語学に繋がる着想があった。哲学はアリストテレス読解がパリ大学のアヴェロニスの注釈があり、その哲学から自治・自律を求める運動も発生した。パリ司教はアヴェロエス主義的な219の命題について神の啓示に反しているとして哲学は神学の補佐とされてしまう。神学の功績の中で有名なのはアルベルトゥス・マグヌスが基礎を打ち立て、トマス・アキナスが確立した総合的哲学体系である。ドミニコ修道会の公式教義と認められたが、大きな批判も呼びおこした。法学についてはボローニャ大学にてローマ法の原理が見直され、ヨハネス・アンドレアらがその体系化を行った。医学については医学的な知が合理的な学問であることを認められ、医療行為の専門職化を促し、外科治療の見直しが行われた。功績ではなく失敗としては教会による管理の結果で歴史学をなおざりにし、文芸・古典作品の研究は取り組まず、精密科学は大学で取り扱われなかった。建築家や技師も大学の外で学ぶ結果となっていた。

    「医学教材としての解剖学書」「17世紀の医学教育」「臨床観察の重視」

     ヨーロッパの大学医学部では、14世紀頃から医学理論と医学実地が主要な教科となり、16世紀外科学と解剖学が重要となってきた。16世紀に近代解剖学の創始者ヴェサリウスの『ファブリカ』と『エピトメー』が出版された。詳細で精緻な解剖図が高く評価された。ヴェスリングは各章ごとに分かりやすい解剖図を添え、血液循環やリンパ管の発見をいち早く取り入れたことで好評となった。17世紀後半になるとヴェスリングらのパドヴァ大学とは関係を持たないアルプス以北の医師たちが解剖学書を書くようになった。ディーメルブリュックはペスト流行の体験を元に『疫病について』アムステルダムのブランカールトは医学辞書が有名で人気を博した。

     医学理論の教材として『アルティセラ』は16世紀末まで繰り返し使用されたが、17世紀に入りフェルネルの『普遍医学』はラテン語で15版出版されている。17世紀には新たな医学理論書が次々と出版され、ドイツ諸大学とネーデルラントのライデン大学で多くの医学理論書が著された。『医学教程』の題で生理学・病理学・徴候学・健康学・治療学の5部からなる。また、医療化学派の先駆け的存在の『化学についてアリストテレスとガレノスの一致と不一致』はそのテーマの2者とバラケルススの学説を調和させようとした。

    「数学を学ぶ少女たち」

     少女に数学や科学を教えることは必要ない、ふさわしくないと考えられてきた。しかし、そのような考え方の中でも裕福か時間的余裕のある女性は数学教育を受けられた。初期の例として、一世紀末に中国の皇后鄧である。学んだのは斑昭という女性であった。通常の女性が数学を研究する方法としては、父、夫、兄弟から教えてもらうことであった。紀元前19世紀にバビロニアの町シップルではイナナ=アマガ、ニジュ=アンナという姉妹がいた。彼女らは父から学んでいた。先述の中国の斑昭は学者である班固の妹であった。 18世紀になるとソフィー・ジェルマンはパリの裕福な家庭で生まれ、13歳でフランス革命が起こり、外出制限の際、数学の魅力に取りつかれ、ラグランジュやガウスといった数学者へ論文を送るまでとなった。彼女は数学研究の中心の一つのゲッティンゲン大学の名誉博士にも値するとガウスは言っているほどである。

     西洋では19世紀少女の地位は改善され始めた。練習帳の記録により、少女らの教えられた数学内容が洞察されている。エレノア・レクサンダーは1831年貨幣換算と三数法について勉強、1834年にはウォーキングゲームのチューターアシスタントを読み勉強、1837年で250ページとかなりの量である。かなり改善は進むが、ケンブリッジ大学は1947年まで女性を正規学生として認めていなかったのは事実である。ソフィー・ジェルマンは18世紀のフランスで生まれ、13歳でフランス革命が起こる激動の時代、当時は「女性に数学や科学を教える必要ない」という価値観が一般的であったにも関わらず自分の好きな数学を学び続け、女性として初めてパリの王立アカデミー受賞を成し遂げた偉大な数学者である。彼女はバスティーユ牢獄が襲撃されフランス革命が起こり、外出制限となった際、ある日父親の蔵書でたまたま手に取った、ジャン・エティエンヌ・モンテュクラの『数学史』であった。モンテュクラの語るアルキメデスの一生が彼女の心を捉えたのである。特に彼女が魅せられたのはアルキメデスの死に関する話だった。言い伝えによると、アルキメデスが砂地に描いた幾何学図形に夢中になっていた。その際、ローマ兵に名を尋ねられても返事をしなかったため、槍で突かれて死んでしまったというのである。殺されてしまうほど夢中になれるなんて、数学はこの世でいちばん魅力的な学問に違いないとソフィー・ジェルマンは考えたという[1]

     数学に魅力を感じたソフィー・ジェルマンは数論と微積分学の基礎を自ら習得し、じきにオイラーやニュートンの仕事について学ぶようになった。しかし、娘が突然こんな女らしくない学問の虜になったとあって、ソフィー・ジェルマンの両親はうろたえた。ジェルマン一家と親しかった伯爵の語ったところによれば、父親はソフィー・ジェルマンに勉強の意欲を失わせようとロウソクと洋服を取り上げ、部屋に暖房も入れさせなかったという。ソフィー・ジェルマンは父親に対抗してロウソクを隠し持ち、毛布にくるまって勉強を続けた。リブリ=カルッチによれば、パリの冬の夜はひどく冷えるのでインク壺のインクが凍りついたが、それでもソフィー・ジェルマンは勉強をやめなかった。頑として譲らず、ついに両親も娘が数学を勉強することを認めたのだった。そして、ソフィー・ジェルマンはクラドニ図形で知られる形周波数によって異なり、決まったパターンを描くことを発見した。ソフィー・ジェルマンによる振動についての研究は、振動に対して強い建物を作るのにも活用された。ソフィー・ジェルマンはこの複雑な模様について研究を行い、様々な振動に対してどのようなパターンが生み出されるのか法則を発見した。この発見が女性で初のパリの王立アカデミー受賞をもたらした[2]

     その後の世界で高層建築ブームを支えた重要な考えは、このソフィー・ジェルマンが行った研究によりもたらされたと言える。パリで高さ324mもあるエッフェル塔が建ち、さらに世界中に高層ビルや長い橋が次々と建造された。現在ではホログラムなどでも応用されている。光をそのまま記録するのではなく、補助の光 (参照波)を重ねて、干渉縞を記録し読み出す。干渉縞には位相情報が書き込まれているため、強度と位相の両方を同時に記録できる[3]。ホログラフィーとは記録したい光波の振幅と位相を補助の波と干渉させ、干渉縞として記録し回折現象を利用して記録した光波を再生する技術である。干渉縞を記録したものをホログラムという。女性に数学や科学を教える必要ないという当時の価値観に屈せず自分の好きな学問を学び続け成功した。ソフィー・ジェルマンのその意思に感服する。

    参考文献

    [1] 数学の窓 ~1歩踏み込んで~ 女性数学者ソフィー ・ジェルマンの人生 sg70228163417.pdf (pweb.jp) 2021.07.23

    [2] エッフェル塔ができたのはこの人のおかげ!?数学者ソフィー・ジェルマンとは

      https://note.com/math_wakara/n/nc44dbb3fb9af   2021.07.23

    [3] 黒田 光学 第8章 ホログラフィー 8holographyU.pdf (u-tokyo.ac.jp) 2021.07.24

  • 高分子(ポリマー)の色々

    高分子(ポリマー)の色々

    ポリエチレン・ポリプロピレンについて

    ポリエチレンには低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度(HDPE)、そして直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)があり、耐熱温度、比重、耐薬品性、分子構造などがそれぞれ異なる。その重合方法はLDPEでは高圧下でラジカル重合にて得られる。LLDPEは中圧下でラジカル重合にて分岐を持たせた構造の素材が得られる。HDPEはチーグラー・ナッタ触媒を用いたチーグラー法にて得られる。

    側鎖分岐が長いLLDPEは強度が高く、また、分子量が大きいものほど引張衝撃強さは大きくなる。LLDPEはLDPEに比べて同一MFRでの引張衝撃強さが大きい。重合法の違いにより軟化点や比重などが異なる理由としては、LDPEでは分岐が多く、分岐部分は密度が低いため比重が小さくなる。一方、HDPEは分岐をほとんど持たない長鎖で構成され、密度が高い。3つの内、HDPEは密度が高く、熱を加えられても分子運動が抑えられるため、比較的軟化点が高い。LDPEとLLDPEは比重が同じであるが、軟化点と耐薬品性に違いがある。これは分子同士で架橋を作り、立体の網目構造の超高分子を成すためである。下の表『ポリエチレンの種類と物性』にまとめた。

     ポリプロピレンはポリエチレンより耐熱温度が高く100~140℃で、プラスチックの中では最も比重が小さく、0.9~0.91となっている。機械的強度にも優れた素材である。また表面に艶があり、光沢がある素材である。生産量も多い高分子材料で、ポリエチレンに次ぐ量が生産されていると言われている。

    ガラス転移点について

    ガラス転移点Tgと融点Tmの違いについて述べる。まず融点は固体と液体間で相転移が起こる。対してガラス転移点は高分子自体が過冷却状態の液体であり、相は液体で変わらない。融点では固体から液体に変わるため、そこで大きく弾性率が変化する。一方、ガラス転移点ではその分子鎖自身の重心が変わらないため、弾性率は徐々に変化が起こる。また、高分子では非晶性と結晶性で違いがあり、非晶性ポリマーは明確な融点を持たない。温度を上げTgを超え、さらに上げていくと徐々に溶融粘度の低下が進む。結晶性のポリマーではガラス転移点Tgと融点Tmの2つが存在する。

    ガラス転移点の測定方法には示差走査熱量計DSC、動的粘弾性測定DMA (Dynamic Mechanical Analysis) と熱機械分析TMA(Thermal Mechanical Analysis)などがある。示差走査熱量計DSCの中でも熱流束DSCでは、温度制御されたヒートシンクを持ち、試料、基準物質と、ヒートシンクの間に熱抵抗体を設け、この熱抵抗体の定まった場所で温度差を検知する。 熱流のフィードバックは熱抵抗体を介してヒートシンクとの熱交換で行われる。基準試料としてアルミナなどが用いられ、温度差を温度-電圧変換素子(熱電対等)で検知することにより、DSC信号として出力する。熱流束DSCではヒートシンクにより試料部周辺全体が温度制御されるため、ベースラインの安定性が良いとされる1)

    示差走査熱量計DSCの模式図

    動的粘弾性測定DMAは試料に時間によって変化(振動)する歪みまたは応力を与え、発生する値を測定することによって、試料の力学的な性質を測定する方法である。温度分散測定によるガラス転移点や弾性率の温度依存性の分析のみならず、温度分散・周波数分散同時測定を行うことにより、ガラス転移を含む各種の緩和現象を観測でき、高分子の分子構造や分子運動に関する情報も得ることができる。試料は、測定ヘッドに取り付けられ、ヒーターにより加熱されるとともに、荷重発生部からプローブを介して試料に応力が与えられる。試料に与えた応力と検出した歪から温度または時間の関数として出力される。ヒーター内に試料用、基準物質用それぞれの天秤ビームを対称に配置し、サンプル、リファレンス独立に感度調整された駆動コイルにて重量を計測し、その差がTG信号として出力される2)

    動的粘弾性測定DMAの模式図

     熱機械分析TMAは資料の温度を一定のプログラムによって変化させながら、圧縮、引っ張り、曲げなどの一定の荷重を加えてその物質の変形を温度または時間の関数として測定する方法。温度変化に対応して試料の熱膨張や軟化等、試料の変形が起こると、変形に伴う変位量がプローブの位置変化量として、変位検出部で計測される。熱膨張、熱収縮、軟化点などが主な測定対象となる3)

    3.Gauss鎖の関係

    3-1一本鎖が末端間で引き伸ばされたときに生じる力―変位距離の関係 

    3-2力―絶対温度の関係

     f = (kBT/Na2)・A

     S = kB・ln(W)S
      = kB・ln{W(r・N)}P(r)
      =―3/2・exp(-)S
      = kB ln {A×()―3/2×exp(-)}   
      = 定数(A’)+kB ln{exp(-)}    = 定数- =  – SdV = 0=-T S 

    上記式より力は一本鎖が末端間で引き伸ばされたときに生じる力は変位距離rに比例し、力は絶対温度Tに比例する。

    4.熱硬化性ポリマーについて

    熱硬化性ポリマーの例としてフェノール樹脂(ベークライト)を挙げる。フェノール樹脂はフェノールとホルムアルデヒドをモノマーとして縮合重合される。フェノール樹脂は正式名称ポリオキシベンジルメチレングリコールアンハイドライドである。中間生成物の違いから酸触媒下ではノボラック式、塩基触媒下でのレゾール式が存在する。硬化剤としてヘキサミンを加え、さらに充填剤や強化材を添加して加熱すると架橋が起こり、優れた物性を持つ硬化物となる。このノボラックを用いた樹脂製造法を二段法あるいは乾式法と呼ぶ。一方、塩基性触媒下では縮合反応より付加反応の方が速いので、ホルムアルデヒド過剰の条件で反応させるとフェノール核にメチロール基の多く付いたポリメチロールフェノール混合物ができる4)。これをレゾールと呼ぶ。下記にフェノール樹脂の化学構造式を示した。

    フェノール樹脂の化学反応5

    5.金属などの剛体粘性の内部摩擦測定方法

    内部摩擦とは固体に外から力を加えたときに,弾性変形が伝わる過程で各部分間の運動摩擦によって,外から加えた力学的エネルギーの一部が熱エネルギーに変化する現象である。固体による音波の吸収と関係がある6)。したがって超音波により結晶が歪むと,結晶内に圧電分極を発生し,これを打ち消すようにキャリアが移動する。キャリアの移動によりジュール熱が発生するのでこれが内部摩擦となって現われる。外力を加え発生するジュール熱により内部摩擦を測定できる。下記にMaxwell (マクスウェル)模型、Voigt(フォークト)模型、粘弾性体で拘束した質量片の強制振動の模式図とそれを表す式を示した。

    Maxwell模型は、材料が弾む性質と粘る性質の両方を合わせて示す物性である粘弾性を説明するためにバネとダッシュポット(ピストン)を組み合わせたモデルである。物質が受ける応力と歪の関係を示している。Maxwell模型での物質が受ける応力と歪の関係は下記のような式となる。弾性率 (バネ定数) を E、バネのひずみを γ1、ダッシュポットの粘度を η、歪をγ2とする。

    γは歪でσは応力である。時間で微分すると

    Maxwell模型での物質が受ける応力と歪の関係は以上のような関係となる7)

    Voigt模型は粘弾性を説明するためにバネとダッシュポット(ピストン)を並列に繋いだモデルである。フォークト模型の場合には, バネとピストンの歪が等しい。このひずみをγとする。バネの応力をσ1, ピストンの応力をσ2とする。バネの応力がひずみに比例すると、

    7)

    粘弾性体で拘束した質量片の強制振動の模式図を示した。これは、質量Mの鉄片を粘弾性体で挟み込み、加速度と歪速度、歪量との和が最大荷重と振動数と位相を示すものである。

    6.複合材料の5つの弾性率 含める語:テンソル

    複合材料の弾性率はヤング率E 、ポアソン比ν、体積弾性率K 、剛性率G 、ラメの第一定数λの5つである。弾性率Dは4階のテンソル量で表すことができる。下記一軸直交性体のテンソルから独立な弾性率は5個となる。

    σ = D ϵ , {\displaystyle {\boldsymbol {\sigma }}={\boldsymbol {D}}{\boldsymbol {\epsilon }},} σ i j = D i j k l ϵ k l ( i , j , k , l = 1 ∼ 3 ) {\displaystyle \sigma _{ij}=D_{ijkl}\epsilon _{kl}\quad (i,j,k,l=1\sim 3)}弾性率テンソルは81(= 34)個の成分を持つが、応力テンソルσとひずみテンソルεは対称性、すなわちσ i j = σ j i , ϵ i j = ϵ j i {\displaystyle \sigma _{ij}=\sigma _{ji},\quad \epsilon _{ij}=\epsilon _{ji}} よりそれぞれ独立な6成分を持つので、弾性率テンソルDもD i j k l = D j i l k {\displaystyle D_{ijkl}=D_{jilk}} の性質を持ち、独立な成分は36(= 62)個となる。

     さらに単位体積あたりの弾性ひずみエネルギーd W ≡ σ i j d ϵ i j {\displaystyle dW\equiv \sigma _{ij}\,d\epsilon _{ij}} を用いて弾性率D i j k l = ∂ 2 W ∂ ϵ i j ∂ ϵ k l {\displaystyle D_{ijkl}={\frac {\partial ^{2}W}{\partial \epsilon _{ij}\partial \epsilon _{kl}}}} が表せるため、最終的に弾性率テンソルDの独立な成分は21(= 6×(6+1)/2)個となる。その中でも独立な弾性率は5個となる。

    参考文献

    • 株式会社日立ハイテクサイエンスweb ページ https://www.hitachi-hightech.com/hhs/products/tech/ana/thermal/descriptions/dsc.html
    • 株式会社日立ハイテクサイエンスweb ページ https://www.hitachi-hightech.com/hhs/products/tech/ana/thermal/descriptions/dma.html
    • 株式会社日立ハイテクサイエンスweb ページ https://www.hitachi-hightech.com/hhs/products/tech/ana/thermal/descriptions/tma.html
    • 波華合成株式会社 用語辞典http://www.naniwagousei.com/dictionary/フェノール樹脂/
    • 合成樹脂 https://pigboat-don-guri131.ssl-lolipop.jp/732%20Synthetic%20resin.html
    • ブリタニカ国際大百科事典 https://kotobank.jp/word/内部摩擦-107428
    • マクスウェル(Maxwell)模型とフォークト(Voigt)模型 http://cisweb.yz.yamagata-u.ac.jp/~escargot/index.php?plugin=attach&refer=%B9%E2%CA%AC%BB%D2%B9%A9%B3%D8&openfile=VEModel.pdf
  • アリストテレス「理論的科学と実践的科学」

    アリストテレス「理論的科学と実践的科学」

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    概要

     アリストテレスはギリシア北部のカルキディケ半島の町スタギロスで生まれた。彼の父がマケドニアのアミュンタス3世の侍医であったこともあり、若き日のアリストテレスは学問を探求するためにアテナイ(アテネ)に出された。そこで彼はプラトンと出会い、プラトンの生涯の終わりまでアカデメイアの構成員であり続けた。マケドニア王家との緊密な関わりがある点、政治的な盛衰がアリストテレス自身の経歴と、彼が創設した哲学の学派の歴史どちらも影響を及ぼすこととなった[1]。アリストテレスは知識を目的として探求される理論的な諸科学と、主にそれらから得られる諸利益を目的として探求される実践的な諸科学との間に根本的な差異があることを指摘している。ポリス(国家)は最高善を目的因とし、人間にとって本質的なものであると定義されている。また、アリストテレスは国家体制について言及している。公共の利益を考えるものが正しく、中でも共和制が最適であると述べている。以下これらについて述べる。

    「理論的」と「実践的」科学

     アリストテレスは「魂には二つの部分(メロス)があり、一つは理性(ロゴス)をもつ部分であり、他は理性を欠いた(アロゴン)部分である」。加えて、「しかし今や理性をもつ部分に関しても同じようにして、われわれは区分しなくてはならない」と述べている。それは、おおよその概念(アルケー)がそれ以外の仕方がないものごとを考察するための部分。それ以外の仕方において存在するものごとにかかわるものを考察する部分に分けられる。アリストテレスは知性や思考がなければ、選択はできないと考えるが、「思考それ自体は何も動かさないのであって、動かすのは何かを目指す行為的な思考なのである」とも述べている。これは知性や思考の優位性を認めているが、それだけでは何も変わらない。動かすのは、行為的な思考(実践的認識)なのである。無論、「制作的な思考」も、行為にかかわる思考によって支配されている。アリストテレスは諸科学を「理論的」と「実践的」の2つに分けている。知識を目的として探求される理論的な諸科学と、主にそれらから得られる諸利益を目的として探求される実践的な諸科学とのあいだに根本的な差異があることを指摘している。アリストテレスによって認められた理論諸科学には形而上学あるいは政治学、神学、数学、自然学、生物学、そして心理学が含まれる。中でも政治学はアリストテレスにとって優れて「実践的な」科学なのである。アリストテレスの倫理的および政治的な諸著作の文献としての性格の正当な評価という目的のためにも、そしてアリストテレスの思想における政治哲学自体の問題をはらんだ役割を把握するためにも、最初に必要なことは、実践的あるいは政治的な科学の範囲と意図をアリストテレスがそれを捉えていたとおりに理解することであるその能力は魂の理性的部分の科学的あるいは理論的な部分である。また、自然学が第1の学的知識

    著書『政治学』のポリスと国家体制

     アリストテレスの著作の中に『政治学』がある。この著作では「ポリスは、家族であれ、同族のものであれ、善く生きることをともにしつつ、完全で自足的な生を目的とする共同体である」と記述されている[3]。人間は善を目的因とする存在。ポリス(国家)は最高善を目的因とする存在。ポリスは人間にとって本質的なものであると定義され、ポリスは村落が集まって出来る最終の共同体あり、村落は家族の集合体である。また、ポリスは人間にとって本質的なもの、ポリスは人為的なものではなく、自然なものである。人間はポリス的動物でポリスは「市民」から構成されている。市民の定義としては裁判と統治に参加できるひとのこと(ここで奴隷は含まない)である。また、市民は徳に配慮をしなければならない。ポリスは単なる生活共同体ではなく、最高善を目的因とするためである。

     アリストテレスは国家体制について言及している。王制、貴族制、共和制、僭主制、寡頭制、民主制があり、公共の利益を考えるものが正しいため、前3つの王制、貴族制、共和制が良いとしている。中でも共和制が最適であると述べている。民主制は貧困にあるひとたち(無産者)によって支配されるから裁判と統治に参加しているひとが国制の中心でなければならない。一般市民である大衆が最高の権限をもつべきである。アリストテレスは現代では当たり前になっているある年齢以上で持つ選挙権や、人が皆平等である権利がない古代において公共の利益を多くの人に持てるようにすでにその考えを持っていたことが驚きである。哲学者プラトンも考えは違っても哲学を通じて良き社会を作ろうという考えでした。彼は法律(ノモス)に従った政治に重きを置いており[4]、人間理性に基づく良き生き方の指針を作る。もう一つは財産の平等でした。必要最低限以上の欲望は財産をため込もうとし、奴隷を囲い人の自由を奪う。その後、現代も残っているが王制、貴族制が作られ、例えば、中世のヨーロッパに見られるフランス革命のように歪んだ制度は解体されている。これはアリストテレスが歴史を予言されていたようにも見える。

    参考文献

    [1] C・ロード著 アリストテレス 『政治哲学』第23号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpp/23/0/23_3/_pdf

    [2] アリストテレス著『政治学』p1139-1140

    [3] 中畑正志著アリストテレスの哲学p80

    [4] 納富信留 プラトンとの哲学p110

  • 【法律】著作物の定義と利用:日本の著作権法に基づく具体例とは?

    【法律】著作物の定義と利用:日本の著作権法に基づく具体例とは?

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    はじめに

     著作権は人々の生活にて身近に触れているものである。何気ない普段の生活の中でも人が身につけている衣類、食べるために使用する食器類、住んでいる家にあるテーブルやソファー、漫画や雑誌、携帯電話で使用するアプリなど考えてみれば周りはありとあらゆるものが著作物である。本レポートでは、まず著作物の定義やその具体例について挙げ、次にその著作物に編集を加え二次的著作物としたもののその利用の例、そして著作権が発生する時期とまたその効力について、著作権が侵害される場合とその侵害の具体例を挙げ、最後に著者の私見を述べる。

    著作物の定義とその例

     日本国の著作権法にて定義する著作物とは、著作権法第2条にて思想又は感情を創作的に表現したものであり文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。「思想又は感情」とは、高度な学問的あるいは芸術的な内容を問うものではなく、人の考えや気持ちが現れているものであれば足りる、と解されている。また、「創作的に表現」とは芸術作品のような創作性を求めているわけではなく、著作者の個性が創作行為に現れていれば良いとされており、創作性のレベルの高低を問うものではない点にも注意が必要である。

     著作物として当たるものには次のようなものがある。例えば、科学技術の研究報告論文、舞台やテレビドラマなどで使用される台本、脚本や小説、詩歌、俳句、講演などの言語、作詞や作曲物である音楽、絵画、版画、彫刻、漫画、書、舞台装置、美術工芸品などの美術、デザイナーや建築家によって設計された芸術的な建造物、図形。フォトグラファーにより撮影された写真、グラビア。劇場用映画、テレビドラマ、ネット配信動画、ビデオソフト、ゲームソフト、コマーシャルフィルムなどの映画。アプリやブログなどのコンピュータープログラム。出版社により編集され、素材の選択又は文字や図表の配列によって創作された新聞、雑誌、百科事典、書物、他には編集著作物のうちコンピュータで検索できるものであるデータベース、日本舞踊、バレエ、ダンスやパントマイムの振り付けなどの舞踊、またこれまで挙げた著作物の二次的著作物などが挙げられる。思想やアイデアは著作物に当てはまらないが、それを文書など形とした場合は著作権が発生する。

    二次的著作物とその利用

     著作権法第2条第1項第11号ではある著作物(原著作物)を、翻訳、編曲、映画化、表現形式を変更する等して創作された著作物を二次的著作物と呼ぶ。二次的著作物については、これを創作した者が有する権利(著作権)と同一の権利を、原著作物の著作権者も有することになり、これを一般に二次的著作物の利用権と呼んでいる(第28条)。具体的には、日本語で書かれた小説を英語など他言語に翻訳し、それを出版する。出版物である原作を用いてそれを映画で表現する場合は、翻訳者の了解だけでなく、元となる原作者の了解が必要になる。

    著作権発生時期とその効力

     著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生し、その取得のために手続を必要としない。この点が、登録することによって権利の発生する特許権や実用新案権などの工業所有権と異なる点である。しかし、著作権を登録する制度は存在する。著作権法上の登録制度は、権利取得のためのものではなく、また、登録は著作権の移転の要件ではなく、登録をしなくても移転の効力は有効に生じる。では、なぜ登録制度があるのかという疑問が湧いてくる。それは、著作権関係の法律事実を公示するとか、あるいは著作権が移転した場合の取引の安全を確保するなどのために存在するものである。そして、登録の結果、法律上一定の効果が生じることになる。なお、プログラムの著作物を除くその他の著作物については、創作しただけでは登録できない。著作物を公表したり、著作権を譲渡したなどという事実があった場合にのみ、登録が可能となる。

    著作権侵害の要件と侵害の事例

     著作物を自由に使用できるものとしては家庭内で仕事以外の目的で使用するために著作物を複製することができ、翻訳、編曲、変形、翻案もできる。なお、デジタル方式の録音録画機器等を用いて著作物を複製する場合には、著作権者等に対して補償金の支払いが必要となってくる。しかし、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製するときや著作権法第2条1項の技術的保護手段の障害回避が可能となった複製。具体的には、CDやDVD等の記録媒体に保存された音楽や映像、プログラム等の著作物の複製行為を一定の範囲に積極的に制限する場合や著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、著作権等を侵害する自動公衆送信である事実を知りながら行うときは、この例外規定は適用されない。 

     それから、国立国会図書館では複製が認められている。著作権法第31条によると国立国会図書館と政令(施行令第1条の3)で認められた図書館に限り,一定の条件(注4)の下に、ア)利用者に提供するための複製、イ)保存のための複製、ウ)他の図書館のへの提供のための複製を行うことができるとある。利用者に提供するために複製する場合には,翻訳して提供することもできる。国立国会図書館においては,所蔵資料の原本の滅失等を避けるため納本後直ちに電子化(複製)することができるとある[3]。

     また、例外として著作権利用の例外規定として映画の盗撮の防止に関する法律により,映画館等で有料上映中の映画や無料試写会で上映中の映画の影像・音声を録画・録音することは、私的使用目的であっても適用されない。2007年8月30日から施行されたこの法律は盗撮行為に対する量刑も大変重く、10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、又はその両方が科せられる。日本の映画産業における被害は年間200億円に上る[2]。芸術とも取られる映画産業を保護する目的がある。

     平成31年1月17日、大阪地方裁判所は、日本最大級の出版海賊サイトにて出版コンテンツの無断アップロード事案に関し、当該サイトを運営・管理するなどしていた主犯格の男性3名について、いずれも実刑判決を言い渡している。男性らは、複数のアップロード行為者と共謀の上サイトを通じて出版コンテンツを権利者に無断で公開していた事実により起訴されていたが、大阪地裁は、本サイトを通じた被害について、起訴対象となった44著作権者、68点の書籍データに限っても3931万円であり、サイト全体では極めて大規模、悪質で結果も重大との事実を認定し、本判決を通じて当該サイトを通じた著作権侵害行為が極めて悪質であったことが改めて明らかなった事例がある[4]。

    著作権侵害に対する私見

     著作物は著作者が苦労して時間や費用をかけ作製したものであるため、容易に他の人に渡らないように制限され、不利益が被らない仕組みとならなければいけない。そこで発生した考えが著作権である。世の中に存在するありとあらゆるものが著作物であり、著作権発生のタイミングとしては著作物を創作した時点で自動的に発生し、その取得のためには手続を必要としない。著作権関係の法律事実を公示する、あるいは著作権を譲渡する場合の取引の安全を確保するなどのために存在するものである。そして、登録の結果、法律上一定の効果が生じることになる。

     なお、プログラムの著作物を除くその他の著作物については、創作しただけでは登録できないことを理解した。また、著作権は二次的な利用にも制限され、原作者の気持ちを考えると、原作者の了承を得ることが必要であることは当然である。音楽や映画など記録媒体での例から家庭生活の限られた範囲の利用であれば、複製を行っても良い例があることが理解できた。しかし、個人使用が目的であっても映画館での撮影を禁止している例などもあるため注意が必要である。

    参考文献

    [1]文化庁 ウェブサイト http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/toroku_seido/index.html

    [2]映画館に行こう ウェブサイト https://www.eigakan.org/legal/

    [3] 公益社団法人著作権情報センター ウェブサイト 著作権法 http://www.cric.or.jp/db/domestic/a1_index.html

    [4] 一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 ウェブサイト http://www2.accsjp.or.jp/criminal/2018/1221.php

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  • 【化学】ウランはどのような特徴を持つのか?

    【化学】ウランはどのような特徴を持つのか?

    ウランの特性
    ウランはアクチノイドに属し、原子番号92。元素記号はU、天然に存在する元素の中で最も重い物質である。原子番号は92であるが、ウランは原子半径も大きいためその比重(密度)は、原子番号77番付近のオスミウムやイリジウムや白金などよりも小さい。その比重は室温で、ウランが1cm3当り19g程度であるのに対し、オスミウムとイリジウムが22.5g程度、白金が21.5g程度である。ウランの単体は、銀白色の金属である。常温常圧での安定構造は斜方晶構造(α型)であるが、668 °Cで正方晶構造(β型)へ、775 °Cで立方晶構造(γ型)へ相転移する。融点1132 ℃、沸点3745 ℃。ウラン単体は、反応性が高く、粉末を空気中に放置すると、空気中の酸素によって発火する。またウラン単体を水に投入すると、ウランは水から酸素を奪って、水素ガスが発生する。ウラン化合物の原子価は+2価から+6価をとり得る。このうち、一般に+6価が最も安定である。これに対し、+2価と+5価は特に不安定であり、特殊な条件でないと存在できない。+4価は硝酸水溶液および酸化物等では安定な価数であり、水溶液にしたときには緑色になる。+3価の水溶液は赤紫色となるが安定せずに、水を還元して水素を発生させながら+4価に変化するため、色も緑色に変化する。+6価は水溶液中でも安定であり、ウラニルイオン (UO22+) となって、水溶液は黄色を呈する。水溶液に限らず、+6価のウランは一般に黄色を呈するため、イエローケーキと呼ばれる。 なお、ウランのハロゲン化物は+3価から+6価までをとり得るが、これらは揮発性であることが知られており、その蒸気圧は、+3価が一番小さく、+4価、+5価、+6価と大きくなる傾向にある[1]

    ウランの使用用途

     ウランは核燃料としても知られ、核兵器に使用できることでも知られている。これはウランに核分裂を起こさせることで、エネルギーを取り出している。核兵器製造にはウラン235同位体比90%以上の高濃縮ウラン、軽水炉運転にはウラン235同位体比3~5%の低濃縮ウランが必要である。現在行われている濃縮ウラン製造では、揮発しやすい六フッ化ウラン(UF6)を製造し、気体拡散法または遠心分離法によって濃縮ウランを得る。ただし、これらの用途に使用できるのは、現在の地球上に一番多く存在するウラン238ではなく、次に存在量が多いウラン235である。このウラン235は、唯一天然に産出する核分裂核種として知られ、原子力の分野では重要視されている。このため、しばしばウラン235を濃縮するという作業が行われている。なお、この作業の結果に生ずる、ほぼウラン238だけになった放射性廃棄物を、劣化ウランと呼ぶ。ウラン238が1回のα崩壊と2回のβ崩壊をすることで、このウラン234になるため、ウラン238が存在する限り、ウラン234も無くならない。ウラン234が崩壊しても新たに補充されるためである。なお、このようにウランの同位体は半減期がまちまちなので、地球上のウランの同位体の存在比は、少しずつ変化している。

    ウランの同位体

     ウランには中性子数が異なる234、235、238と多数の同位体がある。現在の地球に天然に存在しているのは、ウラン全同位体の約99.274%を占めているウラン238、約0.7204%を占めているウラン235、約0.0054%を占めているウラン234の3種の同位体である。このうちウラン238とウラン235は、半減期が長い(寿命が長い)ために現在の地球に存在している(なお、ウラン238の割合が多いのは、ウラン238の半減期が一番長いことが関係している)。これに対してウラン234の半減期は、たったの約24万5500年程度でしかないにもかかわらず、現在の地球に存在している。ウラン234が現在の地球に存在していられる理由は、ウラン238が鉛206に変化する過程(ウラン系列)に、このウラン234が属しているからである。

    ウラン235とその核分裂反応について

     ウラン235は陽子92個と中性子143個から構成され、アルファ線を放出して、トリウム231(231Th、1.06日)となる。ガンマ線が放出され、トリウム231の崩壊でプロトアクチニウム231(231Pa、3.24万年)が生じ、崩壊が続いて最後は鉛-207(207Pb)となる。天然ウランに0.720%含まれ、天然に存在する唯一の核分裂性放射能である[1]
     下記の図1のようにウラン235に中性子を打ち込むと中性子が1つ増えた状態となる。この状態は自身を維持するのには不安定すぎるので、くっ付いた瞬間に2つに分裂する。原子核が割れ、それぞれが他の原子となる。この反応を核分裂と言う。核分裂とは、不安定な状態の原子核(例えば、陽子もしくは中性子が多い不安定核)に、外部からの何かのきっかけを受けて原子核が分裂する現象である。

    画像2.jpg
    画像1.jpg

    図1.ウラン235の核分裂模式図

     核分裂の際にいくつか(平均2.5個)の中性子も一緒に放出する。そして、同時に熱が発生する。その際、原子核にある陽子と中性子を分け合う形で分裂するため、分裂後の個々の原子核にある陽子の数は分裂前と異なり、核分裂をすると全く別の原子となる。代表的な核分裂反応としては下記のようなものがある。なお核分裂反応は確率的に起こるため、他の核種を生成することもあり、下記の反応はあくまで一例にすぎない。


     235 U + n → 95 Y + 139 I + 2 n {\displaystyle {}^{235}{\rm {U}}+{\rm {n}}\rightarrow {}^{95}{\rm {Y}}+{}^{139}{\rm {I}}+2{\rm {n}}} この反応ではイットリウム95 とヨウ素139 が生成されるが、上式で元素記号の左肩に示した質量数は原子核の中に存在する陽子と中性子の和であり、右辺と左辺の核子数は等しいことがわかる。すなわち、核分裂反応では反応の前後において質量数は保存される[3]

    核分裂生成物について

     核分裂の過程で原子核が分裂してできた核種を核分裂生成物という。通常は二等分になることはなく、一方が重く質量数140程度、一方は軽い95程度の核になる。これは、分裂するときに魔法数(まほうすう)に近い安定な原子核になろうとするためである。魔法数とは、原子核が特に安定となる陽子と中性子の個数のことをいう。陽子数または中性子数が魔法数である核種を魔法核と呼ぶ。核構造のシェルモデルでは、殻(シェル)が「閉じている」状態(閉殻)は安定性が高く、崩壊や核分裂が起きにくくなる。計算上特定の値が該当し、魔法数となる。陽子と中性子はよく似ているので同じ値となる。

     現在、広く承認されている魔法数は 2, 8, 20, 28, 50, 82, 126 の7つで、原子番号がこれらにあたる元素は、周辺の元素に比べて多くの安定同位体を持っている。中性子数がこれに該当する同中性子体についても同様で、例えば核種の一覧を見ると、縦の20と横の20には安定同位体が並んでいる。核分裂生成物がどの核種になるかはある確率で決まる。この確率を収率という。核分裂する核種によって異なる収率分布をもっているので、核分裂生成物を分析すれば核反応を起こした親核種が判る。例えば、ウラン235が核分裂を起こした場合その核分裂生成物は80種類程度生じ、質量数は72から160と広範囲に分布している。これらは質量数90と140付近のピークを中心として鞍型の分布をなしている。核分裂生成物は様々な核種の混合物であるが、総じて陽子数と中性子数との均衡を欠いており放射能を持つ。これらの放射性同位体は、陽子と中性子の均衡が保てるところまで放射壊変(主にベータ崩壊)を繰り返す。核分裂生成物の中には中性子を良く吸収してしまう物質が含まれる。このような物質は、原子炉に蓄積して核分裂連鎖反応を阻害してしまうため、毒に例えて中性子毒あるいは単に毒物質と呼ばれる。原子炉を停止したり出力を変えたりした場合、放射性の毒物質の存在量は時間とともに変化するため、原子炉の挙動を不安定にしてしまう要因となる。
     これらの崩壊速度は様々で、数秒から数ヶ月でほぼ崩壊しつくす短寿命の核種、100年単位の中寿命の核種、そして半減期すら20万年を超える長寿命の核種がある。放射性物質は基本的には寿命(ここでは半減期とほぼ同義語と捉えて良い)が短いほど少量でも放射能が強いものの短期間ですぐに減衰するが、逆に長寿命であれば放射能は少量ならば弱い(大量にあれば当然強い)が、時間が経ってもなかなか減らないという性質を持っている。比放射能も参照する。
     短・中寿命核種は盛んに放射線を放って崩壊するため少量でも放射能が大きく、例えば1945年に原子爆弾で攻撃された広島市と長崎市では、被爆者だけでなく家族や知人の行方を捜すため爆心地周辺に後日立ち入った人々が重篤な放射線障害を受けている。一方、長寿命核種は放射能が小さいが、原子炉の使用済み核燃料のように大量に存在すると、人間社会の尺度では半永久的に放射線を放ち続けるやっかいな廃棄物となり、半減期の数倍から数十倍(つまり100万年単位)の期間、厳重に遮蔽して保管し続けなければならない[1]

    参考文献

    [1] ウィキペディア「天然ウラン」 https://ja.wikipedia.org/wiki/

    [2] 原子力資料情報室 http://www.cnic.jp/knowledge/2605

    [3] 山本義隆 『新・物理入門 増補改訂版』 駿台文庫、2004 p.319 ISBN 978-4-7961-1618-3 C7342

  • 【物理】レーザー時間分光技術の光速度撮影とTADF遅延蛍光

    【物理】レーザー時間分光技術の光速度撮影とTADF遅延蛍光

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     LASERはLight Amplification by Stimulated Emission of Radiation光強度増幅誘導放出の略である。レーザーの種類としては固体レーザーにはダイオード、気体レーザーにはCO2・N2、液体レーザーには色素などの種類があり、そのレーザーの種類ごとに波長、エネルギー、出力、パルス幅が異なる。レーザー時間分解分光技術では短い時間でのパルスレーザーを用いた分光計測によって物質の高速な状態変化をとらえる技術である。現象の一部を切り取りコマで見ることが出来る。ノーベル賞受賞も多数あり、化学反応のメカニズム解明であるFlash Photosynthesisがある。応用例としてはナノ材料、太陽電池、人工光合成、LEDなどに応用される。2つの光(光子)を合わせると強度は2倍となる。

     レーザー発生の過程としてはnε>nGとなるときに媒質中で反転分布を用い、刺激される。基底状態から励起状態に反転分布の状態となる。レーザーは光に指向性があり、コヒーレンス性(単一光性)がある。一方、LEDや電球は電荷や光を与えると再結合し、光を放出する。放射状に光が出て制御ができず、コヒーレント性もない。パルス化され短い時間だけ光る。

     ガルバノスキャナはGミラーで光の高速回転を行う。2つのミラーでXY軸をスキャンする。材料の加工や非破壊検査、防犯センサ、レーザー治療、レーシック、メスや脱毛などに応用されている。過渡吸収分光法は超高速スナップショットすることで、材料状態変化やエネルギー変化の動的過程を光の吸収にて調べる。励起光によりパルスレーザー光、プローブ光の光強度の反応追跡を行う。TADF材料は三重光励起状態を熱エネルギーでS1励起状態にスピン変換したときに放出され、遅れた蛍光が発生する。

     蛍光OLEDはS1スピンのみであり高純度で外部量子効率~5%と低い、高価で頑丈である。りん光OLED(S1+T1)は高い外部量子効率(~20%)でレアメタルIr・Pt・Os・Ruなどを必要とし、価格は高価で強度が脆い特徴がある。逆項間交差RISCによる全励起子の傾向活性は分子内展開から純粒子(正孔)の非局在化電子が存在する。非金属、汎用的置換基、高い分子設計自由度があり、⊿EST発光に重要な励起種を考慮されている。メソメリー(共鳴)効果により発現され、RISC速度定数⊿Est=Es-Etとなり、⊿Estが小さくなるほどTADF効率が高い。

     レーザーは様々な分野に応用され、今ではなくてはならないものとなっている。具体的に何でこの二つの内容に興味を持つようになったのか。ここで説明させてもらいます。高速度撮影について私はカメラが好きで写真を撮ることが好きである。TADF遅延蛍光は蛍光とりん光が違って優れたところも多いと考える。

  • 【物理】ラマン散乱と非線形光学効果

    【物理】ラマン散乱と非線形光学効果

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     通常の光散乱では,入射光と散乱光の波長は同じである。ところが,ラマン散乱で観測される光の波長は,入射光とは異なり,波長が長くなったり短くなったりする。これは,光が分子によって散乱される際,その光子のエネルギーの一部が分子の振動エネルギー(回転/電子エネルギーのこともある)に奪われる,または,分子の振動エネルギーが光子のエネルギーに加算されるためである。その意味で,ラマン散乱とは,分子による光の“非弾性散乱”である,とも言えよう。通常の光の散乱にくらべて,ラマン散乱光は一般にひじょうに微弱な光である。

     分子はさまざまな振動モードをもち,それらは異なる振動エネルギーをもつため,ラマン散乱光には多数の波長の異なる成分が含まれる。ラマン散乱光を分光すると,多数の鋭いバンドからなるラマンスペクトルが得られる。このスペクトルは,分子やその構造に特有のパターンを示すため,ラマンスペクトルはしばしば“分子の指紋”とよばれる。

      ラマン散乱https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/keywords/20/01.html

     非線形光学効果とは、高強度の光を誘電体中に注入した際に発生する非線形応答の総称である。 非線形光学効果を応用することによって、全光型のデバイスを実現することが出来るので、今後ますます 高速化する未来のフォトニックネットワークにおいて非常に重要な役割を果たすことが期待されている。具体的に非線形光学効果においては、光電界が分極に対し非線形な応答を示す。光ファイバは、SiO2で構成されているため反転対称性を示し、 x(2)=0となるため、光ファイバ中で発生する非線形光学効果は3次の非線形光学効果であると言える。 これによって屈折率が光りの強度にも依存するようになり、このことを特に光Kerr効果と言う。 この光Kerr効果の中で特に注目されているのが四光波混合(FWM:Four Wave Mixing)と呼ばれる現象である。 四光波混合とは高非線形光ファイバに周波数が異なる3つの光を入射した際に、もう1つの異なる周波数を持つ光が発生する現象である。 以下、図1に四光波混合の概念図を示す。

      四光波混合 http://www.cntp.t.u-tokyo.ac.jp/abstract/nonlinear?lang=jp